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【vol.65】 ロボット研究 斉藤 康夫

工学部情報システム学研究科 研究員

斉藤 康夫さん  現在、工学部で研究が進められている案内用ロボットのSOBIT。SOBITのSOは創価大学(Soka University)のSO、BITは韓国語で「光」を意味し、研究に携わる教員・学生で名付けたという。その研究を中心になって進めているのが斎藤さん。小さい頃から家にある電化製品を分解しては修復できず、両親に怒られていたという。「中身がどうなっているのか知りたくて、ビデオデッキやテレビを分解してはよく怒られていました」と。高校に入学する頃には、いつか自分でロボットを作りたいと思っていたという。SOBITは案内用ロボットで、過日行われたデモンストレーションでは、工学部棟に来た人をエレベータまで案内し、センサでエレベータを人が待つ階に呼ぶことに成功。「案内用ロボットは用途も多く、可能性も幅広く、その分課題は多いですが、やりがいがあります」と語る斎藤さんに、現在の研究、今後について聞きました。

★SOBITの現在までの研究成果について教えてください。

…現在、私たちの研究室では、平成18年度から文部科学省・私立大学学術研究高度化推進事業の「社会連携研究推進事業」に採択された本学の研究プロジェクト「測位/光神経複合センサノードによるユビキタス・モニタリング・ネットワークの開発とその産業応用への展開」の一環として、SOBITを用いて研究を行っています。
 従来までのような、個々のセンサが個々の場所で独立して動作していたことで、限定的で単調なサービスしか提供できなかったシステムに対して、このプロジェクトでは、環境自体が1つの知的空間を形成し、その分散ネットワーク全体で人やロボットにサービスを提供するユビキタスサービス空間の創出を目指して研究を行っています。
 もう少し分かりやすく説明すると、私たちの身の回りには様々なセンサが存在します。一般家庭を考えても、インターホンのカメラやマイク・スピーカもそうですし、エアコンやテレビのリモコンもそうです。最近ではお風呂の温度も温度センサを利用して自動調節できるようになっていますね。今は,これらのセンサが個々に機能することで、私たちは生活の中で様々な便利さを実感することができています。しかし、これらのセンサが環境を介してお互いに情報をやり取りできるようになったらどうでしょうか?例えば、私が部屋の前に立つと、インターホンのカメラとマイクで私が誰だかを識別します。家に入っても良ければドアが開きますし、ダメならドアは開きません。環境は私が誰だかわかっていますから、部屋に入ると私が快適と感じる室温が設定されていて、ソファに座ると自動的に私の好きな音楽やテレビ番組が流れるようになる。このような人に気を使わせない知的空間を提供することができるようになると考えています。
 また、こういった環境を構築する上で、これまでにない特長的なセンサ群を用いることで、得られる情報の質を向上させることができるようになります。具体的には、超音波を用いた高精度な屋内測位システム(LPS : Local Positioning System)や、通信とセンシングを同時に行えるヘテロコア型光ファイバセンサの様に、創価大学オリジナルのセンシング技術を用いて、さらにそれらを統合化した知的複合センサノード(SPAN : Smart Passive/Active Node)を環境内に設置することで様々なサービスを提供できることが本プロジェクトの特徴です。
 このような知的空間はロボットにとっても利用しやすい空間になります。ロボット自体もセンサとコンピュータの集合体ですから、知的空間との相性は抜群ですし、ロボット・環境相互に情報を補い合いながら動作することで、人に対しても、さらにはロボット自体に対してもやさしい空間とサービスを提供できると考えています。
 ロボットが、ロボット自体に備わっている機能だけで動作するのではなく、環境と連動しながら、今までロボット単体では得ることができなかった情報を活用して多彩なサービスを実現していく。そういうシステムを目指して研究を進めています。現在は、1つのモデルケースとして、工学部棟内に設置したSPANを利用して、ロボットが自分の位置情報を把握しながら、廊下で来客者を案内・誘導するといったサービスの研究開発を行っています。

★SOBITはどのようなロボットなのですか?

…愛嬌のあるとても可愛らしいロボットです。身長110cm、体重60kgですので、ちょっと太った小学生ぐらいの体型ですね。SOBITは車輪を使って移動するいわゆる2輪駆動型のロボットで、2本の腕を持っており、この腕で色々なジェスチャーを行う事ができます。頭部にはロボットの目の役割をする2つのカメラと、耳と口の役割をする音声入出力機能が搭載されています。また、胴体の周囲にはPSD(Position Sensitive Detector)という距離測定センサも備えており、これを用いて周囲の環境や障害物の認識が行えます。
 もともとSOBITは、人とのコミュニケーションを目的として開発されたロボットなので、腕を使ったジェスチャーは得意でも、車輪を制御してまっすぐ直進したり、正確な位置に移動したりする事ができませんでした。案内役のロボットが自分の位置をわからないというのは致命的です。そこで私たちは、先ほども述べたような超音波測位システムや光ファイバセンサを用いて、SOBITが環境からの情報をもとに正確に自分の位置を認識しつつ、長い廊下でも壁や物にぶつからずに直進できるようなアルゴリズムを開発しています。その他にも、案内に必要なジェスチャーや音声を作成したり、SOBITからエレベータを制御したりといった機能の開発も行っています。
 人間にとっては簡単な作業でもロボットがそれを実現することはとても大変で、SOBITもまだまだ小学生にもなれない幼いロボットですが、今後さらに色々な機能を搭載して賢くなっていきますので楽しみにしていてください。
SOBITと

SOBITと

★韓国でデモンストレーションを行ったとききましたが。

・・・昨年10月、韓国にてSOBITと研究室で開発しているもう1台のロボットMORISを用いてデモンストレーションを行いました。それまでも国内でのデモンストレーションは何度か経験した事があるのですが、ロボットを海外に運び出すのは初めてだったのでとても緊張しました。飛行機で運ぶのか、それとも船で運ぶのかから始まって、万が一トラブルが起こっても対処できるように実験機材もほとんど持っていきました。ちなみに、僕たちの飛行機代よりもSOBITの飛行機代の方が高いんですよね。会場で梱包を解くと、ボルトが落ちていたり、部品が曲がっていたりと多少トラブルもありましたが、事前の準備のお陰で何とか現場で解決することができました。会場では前日の夜遅くまで、設定調整や動作実験をして、本番よりも準備に気を使いましたが、その結果、本番では参加された子供達や大人の方々にも大好評のデモンストレーションを行う事が出来ました。
 最近ではTVや映画などいろいろな場面でロボットを見る機会も多く、画面の中のロボットは自由自在に動いていますから、見学に来るお客さん、特に子供達にとっては、ロボットは動いて当たり前という存在なんでしょうね。それだけに私たちも緊張しましたし、ロボットに期待通りの動作をさせるために苦労もしましたが、とても貴重な体験をさせて頂きました。
韓国でのデモンストレーション

韓国でのデモンストレーション

★SOBITを案内用ロボットにしたのはどうしてですか?

…私が大学院に入学した時、先輩方はお掃除用ロボットや案内用ロボットなどの研究をしていました。当時は工学部もできたばかりで研究室にはロボットが1台しかありませんでした。まだ研究テーマが定まっていなかった私は、先輩方の話を伺って、先輩が行っていた案内用ロボットの研究の一部分を担当させてもらうことにしたんです。案内用ロボットは、自分のところにロボットが寄ってきて案内してくれるんですよ。”おもしろい!”と思いましたね。それ以降、私の研究テーマは案内用ロボットの開発をメインに進めてきましたので、SOBITを導入した時にも今までのノウハウを活かして案内用ロボットを作りたいと思いました。特に少子高齢化が進行するわが国においては、その用途は広く、可能性は多岐に渡ると思います。 研究室の仲間と

研究室の仲間と

★SOBITの将来構想は?

…3年以内に実現したいと考えているのは、大学構内の本部棟や、隣接する富士美術館で来館者や海外から来られた方々の案内ができるようしたいと思っています。SOBITは何ヶ国語でも話すことができますし、展示などの紹介をする事もできます。ロボットの記憶能力を活かしたサービスが提供できると考えています。その他にも、福祉や介護の現場、また3K(きつい、汚い、危険)といった作業の現場などでの単純作業はロボットのパワーや正確な繰り返し能力が活かせる場面ですので様々な活躍が期待できると思います。研究室でも、人とコミュニケーションを取りながら、病院内を案内するロボットや患者のケアそして介護の補助など人を助けられるロボット、一般家庭やオフィスで日常生活のサポートをするロボットなどを作れたら良いと話し合われています。 オープンキャンパスにて

オープンキャンパスにて

★ロボット作りの面白さは何でしょうか?

…何と言っても動いた時ですね。プログラムを作っている時は、こういう風にプログラムすれば、自分の想像通りの動きをすると思って作っていますから、予想外の動きをされた時はエラーを探すのが本当に大変なんです。そういった失敗を重ねながらも実験を繰り返し、ロボットが期待通りの動きをした時の嬉しさはたまりません。その他、毎年、サイエンスサマーセミナーやオープンキャンパス、夏季大学講座などで、様々な方にロボットに触れてもらうのですが、子供も大人も嬉しそうに目をキラキラさせているのを見たりすると頑張ってきて良かったと喜びをかみ締めます。 サイエンスサマーセミナーにて

サイエンスサマーセミナーにて

★研究を続けられる原動力は何でしょうか?

…結局のところ、好きだから大変でも続けられるんだと思いますが、学部時代にテニス部の仲間たちと切磋琢磨し合ってきたことが今の自分の支えになっているのだと思います。テニス部のモットーは“技術だけでなく人間性で勝とう“というものでした。クラブはやっていたけど、何も残らなかったではいけない。自分の将来を掴むために、人間性や忍耐力、持続力をクラブを通して鍛えようと。私も毎年、大学院に進学して、ロボット研究をやっていくと皆に宣言してきました。その中で忘れられない思い出があります。大学3年生の4月に創大のビクトリーコート(テニスコート)でリーグ戦が行われていました。試合の休憩時間に、同期の仲間と一緒に坂を下ってコートに戻る途中で、新世紀橋の方からお車で降りてこられた創立者の池田大作先生とお会いしました。創立者に「現在、テニス部は勝っています」とご報告すると、「どこに住んでいるの?」「名前は?」と事細かに居合わせた私たちのことを聞いて下さいました。その後、「学兄」との揮毫を創立者から戴きました。当時、毎年「大学院に行く」と誓ってはいたものの、クラブしかやっていない自分に、”学問の兄”との揮毫を頂き、申し訳ないのと同時に、「学兄」に恥じない挑戦をしていこうと決意しました。その後、大学院に進学後も何度も励まして頂き、2004年には、「将来、博士号を取って頂けるように」との御伝言を頂きました。そして、今年、博士号の審査に必要な2本の論文を書き上げることができ、少しでも早く博士号を取得し、創立者に報告したいと思っています。 テニス部の仲間と

テニス部の仲間と

★今後について

・・・現在でも産業用から人間支援用まで幅広くロボットの研究は行われており、競合する研究もたくさんあります。しかし、今後さらに福祉・介護・レスキュー・その他多くの分野でロボットの需要は高まってくるでしょうし、その可能性は無限に広がっています。近い将来のSOBITの実現目標は先ほど述べたとおりですが、さらに将来的には創価大学ならではと言われるようなロボットシステムを構築できればと考えています。そのためにも、自分自身も一人前の研究者を目指してさらに研究を重ね、この分野では創価大学のロボット研究が日本一だと言われるような実績を上げていきたいと思います。

サイトウ ヤスオ  サイトウ ヤスオ/ 
(好きな言葉) 真剣が不可能を可能にする 勇気が試練を宝に変える
(性格) おおらかで細かいことを気にしない
(趣味) テニス・スキー 音楽や映画鑑賞
(専門分野) ロボット研究(特に案内用ロボットシステムの開発)

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