卒業生紹介

結核のない世界へ – WHOでの取り組み
 森下 福史さん | 世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務所勤務

1、大学時代の学び

「将来は国連職員になって国際社会に貢献したい」そんな思いを胸に創価大学に入学。法律を切り口に国際的な問題について学び、考える力を養いたいと思い、国際法を専攻するために法学部を選びました。国内法とは異なる国際法の特性に関心を持ち、その学びを通して法律の果たす重要な役割、そしてその限界も垣間見ることができました。また、複雑な国際社会の構造とそれに内在する様々な問題をマクロ・ミクロの両方の視点でみることができ、自分の視野を広げるとともに、海外の現場で実際に働いてみたいと思うようになりました。
卒業後は国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊として、パプアニューギニアに派遣され2年間ボランティアを経験。感染症対策隊員として結核対策に従事し、非医療従事者でも患者の命を守るために重要な役割を担うことができると実感しました。その後、英国のリバプール大学熱帯医学校にて、国際公衆衛生の修士号を取得し、フィリピンにある世界保健機関(WHO)でボランティアを経験。その後は、WHOのコンサルタントとしてアジア大洋州の国々で結核対策の支援に従事しました。5年間のコンサルタント経験を経て、2017年にWHOの正規職員として採用されました。

2、現在の仕事

カンボジアの国立病院にて、結核病棟で働くスタッフと。(一番左がご本人)
現在は、フィリピンにあるWHO西太平洋地域事務所、感染症対策部、結核・ハンセン病課にて専門官として、域内の37カ国の結核・ハンセン病対策を支援しています。業務内容は、主として域内の結核サーベイランスシステムの強化、各国から報告されるデータの分析、調査研究活動の推進、薬剤管理等の技術的な分野を担当しています。疫学データや研究から得られたエビデンスを並べて、各国の保健省の方々と効果的な対策を検討し、政策形成のプロセスを支援することも重要な仕事です。昨今では、貧困層をはじめ社会的弱者のための結核対策、多国間地域における移民の結核対策、また患者の経済的負担を軽減するための社会保障政策を推し進める取り組みにも力を注いでいます。日々の業務はデータを多く扱うため細かい作業が多いですが、国レベルでの公衆衛生政策の発展、人々の健康の増進に直結する仕事ができるため大きなやりがいを感じています。

3、法学部の学びと仕事の関係

公衆衛生の分野においては、法律は政策を実施するため、行動を規制するための重要なツールです。 WHOとしても、拘束力のある地域枠組みの締結の主導・推進や、国内法の整備を進めるために各国政府に働きかけを行うなど、積極的に法的な分野への支援を拡大しています。私自身、移民法・出入国管理法が規定する結核健診の国別の差異の調査や、ハンセン病患者に対する差別的な法律の調査等、実際に法律を扱う仕事にも携わりました。学部時代に法学を体系的に学ぶことができたことは、今とても役立っています。

森下 福史 Fukushi Morishita

  • 法学部法律学科 2006年卒業
    勤務先:世界保健機関 西太平洋地域事務所 結核・ハンセン病課 専門官