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「学生第一」の教職員

【研究紹介】音楽には「人」と「人」をつなぐ力がある(2017年2月3日公開)

スティーブン・モーガン

ワールドランゲージセンター/講師

モーガン教授の研究室には、バッハやヘンデル風のあの独特のヘアスタイル「ウィッグ」を被った教授の肖像画が飾ってあった。「大切な友人が描いてくれた絵です」と洒落っ気たっぷりに語る。各種合唱団で音楽監督・指揮者を務め、作曲家の顔を持つ人とは思えないほど気どらず、気さくでフレンドリー。銭湯につかっていてメロディーが浮かび、慌てて自宅に戻ったというエピソードも明かしてくれた。身振り手振りを交え、創価大学の授業開始時と終了時のチャイムのメロディーを口ずさみながら話す、「人間が幸せになる瞬間は音楽とともに訪れる」などの名解説を“お聞きください”。

【経歴】
●University:University of Illinois: BS in Music Education
●Graduate School:
Eastern Illinois University: MA in Music (conducting)
Union Institute & University: PhD in Second Language Education
●Name of PHD
“The Effectiveness of using Vocal Music as the Content Area of English
Immersions Classes for Japanese Children”

現在、創価大学で英語と音楽の教鞭を執る傍ら音楽監督・指揮者として音楽界でも活躍されていますね。

 青山学院大学の教授とコンサートを予定していまして、今後、京都などでも行います。昨年12月6日には、日・シンガポール外交関係樹立50周年記念コンサートをシンガポールの合唱団「The Graduate Singers(TGS)」とサントリーホールで開きました。TGSは、シンガポール国立大学合唱団の卒業生達による、現在シンガポールに拠点を置くセミプロフェッショナルの合唱団で、2010年より活動しています。

音楽の道に入ったきっかけは何ですか?

 小学生の時、音楽好きな学級担任の先生が聴かせてくれたCDやテープでした。私は米国イリノイ州の出身ですが、小学校の近くにイリノイ大学がありまして、そこの合唱団から勧められたものを、私達に聴かせてくれたのです。この“出会い”が大きな刺激となり、私の中で何かが芽生え、音楽の道を志すきっかけとなったと思っています。小学校時代の教師の影響は本当に大きいですね。

指揮台でタクトを振っていて感じることは何でしょう?

 指揮者は、ステージに立っている側と観客席で聴いてくださっている側の二者が音楽によってひとつになっていけると思っていますので、それを全部つなげないといけないのが指揮者の役割です。
 現在、Tokyo Embassy Choir(TEC)という、東京を代表する国際的合唱団の音楽監督・総指揮者を務めています。TECは1980年代に駐日英国大使館内で発足した合唱団で、首都圏在住の外国人や日本人メンバーが参加して大きく発展を遂げ、演奏レパートリーは宗教曲からブロードウェー・ナンバーまで多岐にわたり、その都度さまざまなチャリティー団体を支援するための募金も行っています。
 団員一人一人の個性が違い、文化や言語の違いもありますので、音楽でどう一つに結んでいけるかは、結構難しいことでもあります。指揮者としては皆のいいところを引き出していける力となっていかなければいけないので、皆で共に心一つになって合唱を行っています。
 一人ひとりの幸せ感や心の温かさを聴いてくださる側に伝えていける指揮者になっていかなければと、いつも意識して指揮台に立っています。

アメリカ現代詩界を代表するピューリツァ賞詩人、マーク・ストランド氏(1934~2014)の詩に作曲も行っていますね。

 マーク・ストランド氏がコロンビア大学で教授をしている時でした。氏に連絡を取って「詩を作曲に使っていいですか」と伺ったところ、快くサポートしてくれましたので、とても嬉しかったです。
 作曲を始めたところ、氏がその途中で亡くなったのです。できあがった曲をコロラド州デンバー市で演奏したことがあります。今年6月に東京でも演奏会を開く予定です。マーク・ストランド氏の詩にはいつも「言葉の力」を実感しています。
 マーク・ストランド氏のすごいところは、宗教からの目線ではなくて、彼は何度も言っていますが、キリスト教の目線でもなく仏教の目線でもなく「宗教なしの目線で見る」という考えがあります。その点に共感しまして、そういう音楽を作りたいということを感じていますので、世界的に誰でも聴ける曲を作っていくことが自分では大切だと考えています。
 ギリシャ神話的な生活世界も描いているマーク・ストランド氏の独創的で詩的な作品世界を借りて、本当に誰でも聴ける曲を作曲できるように、これからもがんばっていきたいと思います。

「音」に対する感性は、年齢を重ねるにつれ変わっていくものでしょうか? 

 最初に音楽と触れ合ったのが小学校で歌っている時でした。中学高校ではトロンボーンやピアノも演奏するようになり、常に音に関わっていました。そういう意味で「音」には大変、興味がありました。
 高校はミシガン州の高校に進学しました。自然豊かな美しい環境で、森の中を歩いていると、樹木の葉がこすれ合う音がしたり風のささやきが語りかけてくるのです。さらに音楽までが聴こえてくるような、貴重な経験をしていますので、「音」を聴くと「あっ、音楽が書ける。曲が作れる」っていう意識は小さい頃からありました。自然環境が今日の私の成長要素の一つだったと気づかされます。
 年齢を重ねていくにつれ、確かに自然の「音」がさらに深く感じられますね。今、指揮者の立場になって、また作曲をしていると、言葉の「音」とかも森の「音」同様に「美しいな」と感じます。日本に来て(1995年)からもいろんな言語を聴いていると、トーンとか「音」とかが違いますので、そこからまた音楽を作る力が湧いてきます。
 メロディーと言葉って、本当に合っていなかったら作曲の意欲が湧いてきません。合っているからこそ、もっと自分自身を深めていこうと思うわけです。指揮者としては、もっと美しいハーモニーにしていきたい、そのために皆の力を引き出していこうと考えています。

音楽の授業で、工夫されていることはありますか?

 共通科目の音楽の授業で、授業中に私が作曲をしてその様子を学生に見てもらっています。学生達も、曲がどうやって作られるのかを直に見る体験が出来、皆さん、楽しみにしているようです。
 「音」と自分の思っているビジョンがありますので、そのビジョンに合っていて、なおかつ、その「音」に合わせながら作曲をすることもあります。
 授業の話から脱線してしまいますが、作曲に当たって経験したことと言えば、東京・武蔵野市に住んでいたころのことでした。ある日、銭湯につかっていると急にメロディーが浮かんできて、あわてて風呂から飛び出して家に帰って音楽を作ったこともあります(笑い)。
 夢の中で音楽が流れてきて、朝早く目が覚めてピアノの前に座った経験もあります。私の頭の中はいつも音楽が聴こえるようになっています。これは作曲家としては大事なことだと確信を持って言えます。「音」に対しては本当に敏感で、常に頭の中で流れています。

日常生活と音楽の関わりについて感じていることはありますか?

 創価大学では授業の始まりと終わりに音楽が流れます。♪タラタラターン~というメロディーです。この音楽はどこの国のメロディーかなと調べてみたら、オーストリアかスイスの音楽だと分かりました。
 このように、人間って常に音楽に関わって生きていると思いませんか? 道路を横断中の交差点での音楽とか、電車を乗り降りする際の発着音とか、デパートだったら開店時や閉店時にも曲が流れます。私達は、いつでもどこでも、常に音楽と共に生きているわけで、人間が幸せな気分になる瞬間は音楽とともに訪れるのではないでしょうか。

欧米の年末恒例には、ヘンデルの「メサイア(Messiah)」が演奏されます。日本ではベートーベンの「第九」が全国各地で鳴り響き”年末の風物詩”として定着しています。

 「メサイア」 は、ヘンデルが作曲したオラトリオ(宗教的な音楽劇)で、ベートーベンの交響曲第9番(「第九」)より約80年前の1741年に作曲されました。クリスマスの頃には大半の教会やカーネギーホールなどで連日演奏されます。日本でも「第九」ほどではありませんが、聴く機会があります。この2曲の定着の違いですが、一つの考えとして“受け入れの歴史”というものがあるのではないでしょうか。いつその国に伝わり、広まっていったか。音楽にも大きな役割があって、1年中、聞こえてくる音楽、年末に集中して聞こえてくる音楽などがあります。「メサイア」がアメリカに伝わった時、最初に東海岸のペンシルベニア州あたりで歌われるようになったようです。
 「第九」の日本初演は第一次世界大戦のドイツ人捕虜によって1918年、徳島の捕虜収容所で行われ、日本国内に「第九」がもたらされました。捕虜の身で怒りとか苦しみもあったかも知れませんが、自国の最高傑作「第九」を日本人に伝えていったというのがすごいと思います。
 「歓喜」という高揚した感情が場内を包み、フィナーレを指揮者と団員と観客の全員で迎える一体感の中に、日本人が求める一体感と達成感がそこに見え、そこから「第九」が広まったと考えることが出来ます。ドイツと日本は、文化的にも一体感があるのかも知れません。
 ヘンデルの「メサイア」が日本に伝わって来たのは“受け入れの歴史”という視点から見ると「第九」よりも遅かったようです。ちなみに、2015年6月に「メサイア」モーツァルト編曲版の演奏会をTECメンバーとTECフェスティバルオーケストラと共に埼玉県川口市で行いました。実に楽しかったです。

学生達へメッセージをお願いします

 授業に入る前、「今日は学生たちから何を学べるか」ということを考えて毎回、授業に臨んでいます。
 他大学にも在籍していた経験から言えることは、日本人の学生は、大変恵まれていることを余り分かっていないように思います。いかに自由とか便利さが日本にあるということが分からない。知ってはいるんですが、それが普通、当たり前という感じです。外国に行ったら、それがないということをもっと気付いてほしいと思います。
 自分達の住む国をもっと知ってほしいので、学生にいろんな課題を出します。例えば、自分の国を学んでそれを英語で表現し皆に伝えてもらうという課題です。学生達も気付くことが多いようで、目に見えて効果があります。彼らの笑顔を見ると、「あっ、良いことが学生達の中で起きている」と希望が感じられます。

学生から学ぶことは何でしょうか?

 私は、1995年に日本に来ました。丁度、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が起きたその年です。中央大学では法学部で教えていて、慶応大学では商学部、立教大学では英米文学とキリスト教音楽を教えていました。様々な学生を見て来て、様々な学生達からいろんな事を学んでいるので、逆に私が先生じゃなく生徒だと思っているくらいです。日本人の“先生達”のおかげで、ここまで来れたと思いますので、学生達に感謝しています。 
 また、日本人の学生達は社会をしっかり見ているなと感じます。もっともっと日本のことを、自分自身のことを伝えて主張してほしいですね。
 自分が思っていることを様々な学生や教員に伝えていったら、自分も学ぶことが増えてくるのではないでしょうか。そして、社会に貢献できる学生に成長していって欲しいと願っています。

●Achievements of Papers and/or Research
I am interested in researching the connections between music and language,
especially how experiencing music can transform our inner lives and how we can
express that in words.