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「学生第一」の教職員

「ビジネスを用いて社会課題の解決を目指す!経営学部・安田ゼミの挑戦」(2017年6月12日)

安田 賢憲

経営学部/准教授

桜が散り始めた4月上旬、社会課題をビジネスで解決するべく学生と共に考え、寄り添い、彼らの背中を押して、学生自身の未来をも開いてほしいと願ってやまない安田准教授にインタビュー。研究室内に、模造紙に大書した安田ゼミの”経営理念”と共に、昨年、ゼミ生が「日本学生経済ゼミナール関東部会」で優秀賞に輝いた際のトロフィーなどが飾ってある。「ゼミ生達の高い志が評価され、教員として嬉しい」と目を輝かす。

<経歴>
1994年 創価大学経営学部卒業
1996年 創価大学大学院経済学研究科前期課程卒業
2000年 創価大学大学院経済学研究科後期課程単位取得
2002年 東京富士大学短期大学専任講師
2011年 創価大学経営学部准教授

研究室内に、模造紙に書いた学生達の達成目標が貼ってあります。

ゼミ生の達成目標が書かれた模造紙

ゼミ生の達成目標が書かれた模造紙
 これは昨年度に3年生だったゼミ生が作成したもので、「Being」と呼んでいます。ゼミというチームの組織目標と一人ひとりの個人目標の両方を達成するために必要な約束事を決めようと話し合い、まとめたものです。真ん中にゼミとして目指している理念を掲げ、周囲に書いてある言葉は皆で話し合い、選択していました。
 「一瞬一瞬のリーダーシップ」「タイムマネジメント」「結果にこだわる」…とゼミ生一人ひとりの目標を書いて貼っています。一年間、皆で一緒に活動をしていく上で、より仲良くなりパフォーマンスを上げるためにはどういう約束事が必要かという決意と共に、各人の学ぶ姿勢も表れていると思います。

昨年末、一般社団法人学生サポートセンター主催の「学生ビジネスプランコンテスト」で、安田ゼミの「チームSUN」がアイディア賞(2位相当)を受賞しました。ゼミ生達の奮闘ぶりは?

アイディア賞を受賞した「チームSUN」

アイディア賞を受賞した「チームSUN」
 安田ゼミでは、サブゼミ活動の一環で、身近な社会課題に着目し、それを解決するビジネスモデルを考案し、検証するということを実践しています。
 「チームSUN」はどんな社会課題をビジネスの手法を使って改善していけるかということをさまざま考えていく中でNPOに着目。というのも、多くのNPOでは活動メンバーをなかなか集められずに苦労をしているからです。一方で、学生は就職前に、ボランティアをして自身の見識を広めてみたいといったニーズを持っている学生が多いわりに、なかなかそういう所にアクセスできていない現状があることにも注目。

レシートの裏面を活用したアイデア

レシートの裏面を活用したアイデア
 そこで彼らは困っているNPOと社会貢献活動に意欲のある若者の両者をつなげることができれば、双方に喜んでもらえるはずと考えました。
 とはいえ、既にそういったマッチングサービスを提供するサイトなどは少なくありません。にもかかわらず、依然としてNPOと学生のミスマッチが改善されていない。その原因を突き止めるべく、彼らは文献サーベイだけではなく、双方にインタビュー調査を繰り返しました。そして、学生の利用頻度の高いメディアで情報が発信されていないこと、加えて、学生目線で情報が発信されていないことに気づきました。このことを改善するためにはどうすればいいのかを考える中、両者をつなげる媒体として、学生がいつも利用している大学内店舗で利用されているレシートの裏面を活用できないか。そしてそこに単にNPO情報を載せるのではなく、学生が興味を引くような四コマ漫画や広告などを載せるというアイディアを考えついたようです。

なかなかのアイディアですね。

裏面には4コマ漫画や広告

裏面には4コマ漫画や広告
 レシートの裏面には4コマ漫画や広告のほか、QRコードも印刷されており、QRコードにアクセスすると「チームSUN」が運営しているサイトに飛び、そこからNPOを紹介するという仕組みになっています。
 NPOの活動に少しでも興味を持ってもらうために、さまざまなNPOの活動の他、NPO新聞というウェブサイトとコラボをして、NPOに関するさまざまな情報も提供しているようです。
 各NPOに参加を募ると50社・団体ぐらいから協力依頼があったそうです。また、八王子市内のいくつかの大学の生協にも営業活動を行った所、「そのレシートを使ってみたい」という賛同の声をいただいたそうです。
この一連の活動を、「NPOと若者をレシートでつなぐ~Sunshineプロジェクト~」と題し、ビジネスプランコンテストに出したところ、アイディア賞を受賞しました。

一方、安田ゼミの「SKYSTACK」チームも、昨年11月、約140チームが出場した関東最大の学生学術発表会である第56回「日本学生経済ゼミナールの関東部会」で優秀賞(2位相当)を受賞しました。

優秀賞に輝いた「SKYSTACK」のメンバー

優秀賞に輝いた「SKYSTACK」のメンバー
 私はビジネスモデルの考案・検証にあたり、社会性と事業性の両方をバランスさせることを意識するように指導しています。といっても、これは本当に難しい。一般に、社会性の高いビジネスモデルはどうしても事業性が低くなってしまいがちです。
 「SKYSTACK」のメンバーは、この難題に果敢に挑戦しました。プロジェクト当初、彼らは秋葉原へフィールドサーベイに出掛けました。そこで、外国人が大きな荷物を持ち歩いて不便そうにしていることに注目し、「荷物をホテルに届けてあげるなどのサービスがやれたらいいね」と、荷物に関する何らかのソリューションができないかを模索し始めました。
 考えてみると、荷物の受け渡しに困っている人といえば、一人暮らしの学生もそう。宅配便を受け取れず再配達をしてもらった経験を持つ人はかなり多いはずです。そこで「一人暮らしの学生を何かサポートできないか」と考えていく中で、大学内の既存のロッカーを改修して受け取ることはできないか、あるいは学生ホールで預かってもらえないか、とさまざまなアイディアを考えては調査をし、さまざまな理由から挫折ないし断念するということを繰り返していました。
 彼らは、並行して、宅配事業者にもインタビューを重ねました。すると、不在宅への再配達の増加に対策を講じているにも関わらず、それがうまくいっていないことに頭を悩ませていることがわかってきました。具体的に、通販ビジネスが急拡大する中、その対策として宅配ロッカーの駅前設置やコンビニでの受け取り、会員制で時間調整して宅配を行うサービスなどの提供など、さまざまな施策を講じていたのですが、それらがなかなか浸透していないことに苦慮していました。
 また、国交省にも調査に行った所、再配達問題は単なる宅配事業者の問題ではなく、社会経済損失が大きい深刻な問題であると認識していることも見えてきました。
 そこで、事業者のサービスの認知度を学生にアンケート調査で確認してみると、2016年7月現在で8割以上の人が知りませんでした。また、再配達問題が社会問題であることを知っていた学生はほとんどいませんでした。

社会経済損失について詳しくお聞かせください。

 再配達によるトラックの二酸化炭素(CO2)の排出量増加や運転手の過重労働の問題がそうですね。2015年の国交省の調査によると、再配達個数は年間7.2億個にのぼり、これにより9万人の労働力と42万トンものCO2が無駄に発生しているそうです。その経済損失は2666億円に達するそうです。宅配事業者のサービスが学生に浸透していないことだけではなく、これらが企業の課題だけではなく社会的課題だということを、殆どの学生が認識していない。このことは、逆に言えば、これらのことを世の中に周知することには価値があるということを意味します。再配達という問題は社会問題であることを、学生を含む利用者に啓蒙していく。その上で宅配事業者のサービスを利用者の目線から周知していくことが大事だと考え、サイトを立ち上げたのです。
彼らはサイトを立ち上げた後、多くの人にサイトの情報を閲覧してもらおうとさまざまな工夫を行いました。
 すると、物流のコンサルタントをやっている方の目に止まり、「ぜひうちとコラボして再配達削減への取り組みを一緒にやりましょう」と声を掛けていただきました。また、宅配事業者の中には、「再配達利用者へのリサーチをしてくれたら情報提供料を出してもいい」と言ってくれる業者もあったほどです。
 単なるサイトの運営だけじゃなくて、その周知に努め、少しでも多くの人に情報を届け、共感してもらうことができれば、今まで述べてきた社会課題の是正に貢献することになります。さらに、サイトの運営をすることで得た情報を企業に提供することができれば、より直接的な貢献につながります。こうした活動が今回の評価につながったというわけです。正直、ここまで話題になるとはアイディアの時点では全く思っていませんでした。

「SKYSTACK」の取り組みへの反響などをお聞かせください。

ゼミ合宿での様子

ゼミ合宿での様子
 今回、関東最大のビジネスプレゼンテーション大会(インナー大会)で評価されたのは、高い社会課題に対してビジネスを通じて何とかできないかというアイディアそのものと、学生が実際いろんな企業を訪問して話を聞いて実際にアクションを起こしている。その行動力も併せて評価していただいたのではないでしょうか。
 また、「SKYSTACK」の宅配再配達削減への取り組みを大会の審査員の方が非常に気に入ってくださいました。その方曰く、「普通なら『再配達って問題だね』『企業の問題だから別に気にしなくていい』と終わってしまうところを、自分の問題ととらえ、高い志を持ってその改善のために果敢に挑戦した点が素晴らしい」と趣旨のご感想をご自分のブログのコラムで紹介してくださり、メンバーの励みになりました。
 また、5月18日に一般財団法人日本物流団体連合会が主催する第18回物流環境大賞において、物流連会長特別賞を受賞致しました。これも彼らの積極的な取り組みが評価されてのことだと思います。

昨年1月、軽井沢町の国道でスキーツアーバスの転落事故がありました。営業や採算を優先し乗客の命が危険にさらされる格安ツアーバスという「ビジネスモデル」を根本から問い直す声も聞かれます。

 経営とは、組織を運営するための技法であり、技術といえますが、こうした技法や技術は、毒にもなるし薬にもなるものです。例えば、缶詰という技術は戦争の際、食料を長期保存するために生み出されたものです。また、同じ経営の技法を利用し、社会から賞賛される企業もあれば、ブラック企業だったということも少なくない。つまり、技法や技術は、使う側の意図と使い方によって人を不幸へと誘う手段となる場合もあれば、人の生活を豊かにする、幸福を生み出す手段にもなる。つまり、問われるべきは技法や技術ではなく、使う側の意図や使い方だと思います。
 格安ツアーバスのように費用を徹底的に削減することで低価格な製品やサービスを提供することは多くの業界で利用されています。しかし、経営者が利益を優先するあまり、本来削っていけない安心安全を確保するために必要な費用を削減したことでこうした悲劇が生み出されてしまった。その意味で、質問に対する答えとしては、格安ツアーというビジネスにおいて用いられているビジネスの手法そのものというよりも、このバス会社の経営者の意図や使い方に問題があったと指摘したいと思います。その上で、思うことは、現在の世相の一つである利益至上主義や拝金主義という風潮がこうした悲劇を生み出しているとも思います。
 昨今、安全に関する法規制が強化され、行き過ぎた格安ツアーバスを運行することが難しくなりました。それに伴い、バス会社は新たな市場ニーズを掘り起こすべく、高価格バスツアーを企画するなど創意工夫をするようになっています。こうした企業の知恵と行動に期待したいと思います。
 ともあれ、本来、ビジネスの目的は「事業による社会貢献」「事業による他者の幸福追求」であるべきであり、「利益極大化」のみを追ってはならないと思います。しかし、現実はなかなか厳しくて理想通りにはいきません。でもだからこそ、教育の現場では、理想と現実の両方を理解しながらも、現実を理想に近づけていく努力をする人材を育成することに挑戦しなくてはならないと思っています。

最近読まれたという、米国の文明評論家ジェレミー・リフキン著、柴田裕之訳『限界費用ゼロ社会』(NHK出版、2015年)についての感想をお願いします。

 CMに「モノより思い出」というキャッチコピーを使ったものがありますが、これはモノを所有することに価値があるのではなく、モノを利用して得られる体験にこそ価値があるとのメッセージが込められています。これからの時代は商品の価値の中心はモノからサービスや情報に移行していきます。そのため、モノを単体で売るのではなく、モノ+サービス、モノ+情報、サービス+情報、さらにはモノ+サービス+情報といったさまざまな組み合わせで売っていくことを検討するが不可欠といえます。また、今やさまざまな商品がネットに接続して利用することが当たり前になっており、このことも考慮する必要があります。
 ところで、モノ、サービス、情報はそれぞれ財としての特質が異なります。 モノ、いわゆる物財は生産するタイミングと消費するタイミングが異なりますが、サービス財は生産するタイミングと消費するタイミングが同じです。例えば、電車でA地点からB地点に移動するというサービスは生産と消費が同時に行われます。散髪というサービスも生産と消費が同じタイミングです。つまり、純粋なサービス財というのは、生産と消費が一緒に進行します。
 一方、情報財はサービス財と同じように目に見えないのですが、情報財は生産するタイミングと消費するタイミングが異なります。しかも、消費しても手元に残る。この点から見ると、むしろ物財に近いといえます。ただし、物財は所有権の移転が起こりますが、情報財は所有権の移転はなく、利用許諾権が付与されるだけです。利用許諾権が移動するだけなので、コピーをして友達に渡すなどは原則、駄目。ましてやそれを販売するということはご法度ということになります。
 また、物財の再生産は一つ一つ生産のたびに原材料が必要になりますが、情報財というのは原盤が完成すると、その再生産はほぼ原価がゼロです。そのため、情報財はネットを介して無料で配布し、ヘビーユーザーからのみ課金収入をもらう、といったビジネスモデルが成立することになります。この点は、物財と大きく異なる点と言えます。こうした財の違いを十分に理解する必要があります。
 また、モノづくりの在り方も変わってきます。最近、インダストリー4.0という言葉をよく耳にすると思いますが、モノづくりを高度にデジタル化することで個々の顧客ニーズに合わせて柔軟にかつ低コストでモノを生産することが可能になると言われています。筆者はそのコストがいずれほぼゼロになると予測しています。そして、そうなった時、情報はもちろん、モノやサービスですら無料になり、企業の利益は消失して、資本主義は衰退する、そしてシェアリング・エコノミーが台頭する、と予言しています。
 私はただちに彼の予言する未来が訪れるとは思っていませんが、情報財の分野では既に彼の指摘する事象が起こっていることも事実です。その意味で、こうした未来が訪れることは否定できません。これからの未来がどうなるのかについて私自身、明確な答えをもっていませんが、デジタル革命が未来をどう変えるのか、さまざま思索し、多くの人と議論したいと思っています。興味を持った人がいたら、ぜひ書籍を読んでもらいたいと思います。

いろんな「縁」に触発されながら自身の未来を開いていくのは「今、学生の時こそ!」と言えますね?

ゼミ生たちと

ゼミ生たちと
 ええ、僕自身、大学の教員になりたいと思ったのは、もちろん研究が面白いなと思ったところが大きな要因ではあるんですが、それ以上に、自分が大学時代に縁した教員の人間的魅力や、そういう教員に触れることで未来が変わっていく学生を沢山見る中で、教員としてのやりがい、面白さみたいな部分にあこがれをもち、教員を目指しました。もっとも、目指してからが大変でしたが(笑)。
 ともあれ、大学時代のさまざまな縁や触発はその後の人生を大きく左右します。その意味で、どんな縁に触れ、どんな触発を得るのかはとても大切です。創価大学の教員として、自身ができるだけいい縁となり、学生を触発していきたいと思っています。と同時に、学生からも触発を受け、共々に成長していきたいと思っています。
<主な活動>
JasPar学術会員
多国籍企業学会本部事務局長(2014年から現在)
創価女子短期大学現代ビジネス学科元非常勤講師
東海大学経営学部 元非常勤講師
立命館大学社会システム研究所元客員研究員

<主な著書>
梶浦雅己編著『改訂新版 はじめて学ぶ人のためのグローバル・ビジネス』文眞堂 2014年。
田中信弘・木村有里編著『ストーリーで学ぶマネジメント』文眞堂 2012年。
徳田昭雄編『自動車のエレクトロニクス化と標準化 転換期に立つ電子制御システム市場』2008年。
五味紀男・安田賢憲編著『国際経営論の基礎』文眞堂 2008年
佐久間信夫・芦澤成光編著『経営戦略論』創成社 2004年。