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Vol.032018年04月27日

【Web授業】読書について考える ~ショーペンハウアーを手がかりに~

創大Lab編集部

伊藤 貴雄 文学部教授
19世紀ドイツの哲学者ショーペンハウアーの「読むことと書物について」というエッセイを題材にした授業です。 今回のWeb授業は、学生と一緒に考えながら読書について深掘りしていく形式です。
ショーペンハウアーは、「良いものを読むにはひとつ条件がある。それは悪いものを読まないことだ」と主張しています。しかし、書物を良い本と悪い本に分けることはできるのでしょうか。分けられるとすれば、どのように分けるのでしょうか。分けられないとすれば、なぜ分けられないのでしょうか。
ショーペンバウアー自身は、時代を超えて受け継がれたものが良書なのだと述べています。人生とは何か、善とは何かといった普遍的な問いがあり、それに対して様々な哲学者や文学者たちがそれぞれの回答を出してきました。時代を超えて人類が生き続けているのに必要な知恵を結集し、凝縮させているものが良い本だと解釈することができます。
しかしこうした見方に対しては、そもそも書物を「良いもの」と「悪いもの」に分けることはできないのではないか、と考えることもできます。例えば人類の古典として受け継がれているプラトンの『国家』という本の中には、現在の視点では優生思想と言えるような記述もあり、それがナチスに利用されたという歴史もあります。古典であっても読み方によっては悪影響を与えることはあるのです。

一冊の本を読むときでも、自分で徹底して噛み砕いて考えるだけでなく、意見の異なる仲間とともに考え、多くの人と共有することで、より豊かに自分自身を発見することができるのかもしれません。
※掲載内容は取材当時のものです。

PROFLE :

授業を通して伝えたいこと

この授業ではショーペンハウアーのエッセイを通して、学生と一緒に読書について考えました。ショーペンハウアーは、人間の思考・思想が生きた花だとすれば、書物は化石の花だと言っています。私たちが読んでいる本はすべて、もしかすると化石の花かもしれませんが、その本を読みながら考えることで、その本は我々のなかで生きた花として蘇るのだと思います。われわれが一緒に本を読みながら、ショーペンハウアーの本を生きた花として蘇らせたいなというのが、この授業の主題でした。みなさんと一緒に本を読んでいければと思って、大学で楽しみにお待ちしています。
ページ公開日:2018年04月27日


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