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2021年07月21日

アフターコロナで高まる、国際交流の重要性

創大Lab編集部

ウルヴ・ハンセン 准教授 法学部法律学科
(広報誌「SUN」2021年7月号:「学問探訪」の掲載記事より)

他国の考えに直に触れる「国際交流」の機会が、 人々が国、人種、言語・文化の壁を越えて手を取り合うための鍵となる。

ー 新型コロナウイルス感染症により、世界的に海外との往来が大きく規制されて1年以上となります。まだまだ困難な状況が続くなかで、世界市民として世界各国の人たちと手を取り合うためには、新しい心構えが必要になってきました。そこで今回は、日本を取り巻く東アジアの国々の国際関係を研究されているウルヴ・ハンセン准教授に国際交流の最新事情を解説していただきます。

ちょうど、このSUN110号の発刊は東京オリンピック2020の開幕のころ。本来であれば多くの国から観客が訪れ、日本にいながら異文化を体験できる大きなチャンスでした。その機会が失われたことを、ハンセン准教授はとても残念なことだと語ります。

「今回のパンデミックが明らかにしたのは、世界の不平等だと思います。『ウイルスが与える影響は平等だ』という言葉も当初は聞かれましたが、徐々に、高所得者よりも低所得者へのインパクトが大きいことが明らかになってきました。例えばエッセンシャルワーカーとして感染リスクを抱えて働きながらも、景気の悪化により賃金が減ったという方もいらっしゃいます。その一方で、一部の富裕層は投資によって財を増やすという状況が起こっています。
そうした不平等によって生まれた不満と怒りは、現在、ポピュリズムの政治体制に利用されています。ポピュリズムとは、大衆の意見に迎合し、聞こえのいい発言で権力を強める政治体制です。一番わかりやすい例として、トランプ前米大統領が掲げた『アメリカファースト』の政治が挙げられます。現状を変えようというポピュリズムの政治が必ずしも悪いとは限らないのですが、ポピュリズムの持つ大きな問題は、複雑な問題に対して、特定の人や国を悪者にし、簡単すぎる解決方法を掲げる傾向がある点です」

コロナ禍のなか、世界各国で人種差別や貧富格差に抗議するデモが頻発していますが、この根底にあるのが、敵対するターゲットを安易に明確化するポピュリズムの政治の影響です。そうしたなかで私たちが、国籍を越え、人種や言語・文化の壁を越え、世界の利益のために手を取り合う鍵となるのが、他国の考えに直に触れる「国際交流」の機会にあるとハンセン准教授は提言します。

「留学を経験した多くの学生は、『自分と違う考え方の人に接して、こういう考え方もあるのだと視野が広がった』と言いますが、この理解がとても大事なのです。海外に行くと、自分の国の政治や政策が他国の人々の生活にどんな影響を与えているのかが見えてきます。すると自国の政治のよい点や悪い点、世界平和のためにどんな考えが必要かといったことに、思いを巡らすことができるようになります。私は、日本と北朝鮮の国際関係を研究しているのですが、これも同様のことです。拉致問題や安全保障問題が解決しない一因には、両国の市民間での交流が少ないため、普通の北朝鮮人がどう暮らしているのかをイメージできない点にあると感じています。
東京オリンピックに期待されていた国際交流の機会を失ったことは、とても残念です。しかし、本学には『留学』という国際交流のチャンスがあります。コロナ禍が収束したら、多くの学生にチャレンジしてほしいと思います。そして、政治や国際関係に興味を持つ学生が、この日本にもっと増えることが必要だと感じています」

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ページ公開日:2021年07月21日


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