創価大学ニュース「SUN」106号 2020 Summer

学 問 探 訪 栗山 直樹 教授 【 経営学部・学部長 】 働き方は、「拘束」から「解放」の時代へ。 しかし自由は、楽しいと同時に辛いことでもある。  新型コロナウイルスの影響で大きく変 わったものの一つが、「働き方」です。テ レワークやオンライン会議が当たり前にな り、仕事への関わり方や求められる能力も 変わってくることが予測されます。そこで、 ポストコロナ時代の働き方から求められる 人材像について、「人的資源管理」をテー マに研究をされている経営学部の栗山直 樹教授に教えていただきます。 「コロナウイルス感染予防として『3密』 を避けることにより、リモートワーク、時 差出勤、多様な休暇の拡大、ICTを使っ た業務や会議など、大きく働き方が変わ りました。実は、こうした流れは、コロナ ウイルスで加速しましたが、世界では徐々 にトレンドになっていたのです。  働き方が変わることにより、一人ひとり の仕事の質が変わってきます。そして、 上司がすべてを指示・監督することは困 難になります。最近行われた調査では、 管理職はテレワークにより “意思疎通不 足でマネジメントしにくい” ことが最大の 問題であるなどネガティブな反応が多 かった。一方、一般社員は “気楽” がもっ とも多い感想で、生産性を高めることに 集中できると総じて好評です。このこと から、伝統的に続いてきた『人を拘束し て働いてもらうマネジメント』を脱して、 『従業員を解放し、質の高いコミュニケー ションを使ったマネジメント』によって、 むしろ以前より大きな成果を生むことが 期待されつつあります」 「働き方」の自由度が広がることで、私 たち一人ひとりに求められる能力・スキ ル、さらには心の在り方も大きな変化を 求められるのでしょうか。 「朝9時から夕方5時まで週5日働くフル タイム労働が典型でなくなることで、これ まで以上に人生の時間の使い方が自分で 決定できるようになっていきます。解放さ れるということは、誰かの指示ではなく、 自分の判断で行動することが必要になり ます。それは楽しいと同時に辛いことでも あります。たとえばStay Home期間には 資格取得や積極的な家事参加、新たな趣 味挑戦といった、今までにない自分時間 の使い方が話題になりましたが、これか らは自分の人生にとっていかに有益な時 間が使えるかが問われるようになったとい うこと。もちろん、効率的に仕事をする 働き方が評価される時代になると、その スキルも磨かなければなりません。その File 24 創大の ためには『適切な自己中心性』(Proper Selfishness)が必要になると考えられま す。わがままではなく、しっかりとした自 己を確立し、同時にまわりや社会のニーズ に応じて自制することができる心構えを 持つことが重要です。  また、組織のマネジメントは、この状況 において集団を一方的に管理することか ら、個々に対応してゆく方向に改革してい かなければなりません。1対1の対話を通 じて働き方の質を高めていく方向は、日 本でもOne on One ミーティングが企 業で広がっていることからも認められま す。創価大学では学生の皆さんが常に「対 話しよう」を合言葉に、あらゆる活動を 通じて『対話力』を養成しています。そう した対話力こそ、ポストコロナ時代のリー ダーの資質です。創大のキャンパスでの 対話の機会をこれまで以上に意識的に活 用してほしいと思います」 [ テーマ ] ポストコロナの 働き方 KURIYAMA NAOKI ◀ Responsible Management (責任ある経営)をテーマに、 各国の経営学者が世界の動向、 現状と課題についてまとめた一冊。 栗山教授は日本における ボトムアップ型モデルを考察した (2020年5月英国Edward Elgar社刊) 11

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