創価大学ニュース「SUN」113号 2022 Spring

113 創価大学ニュース 2022 Spring 【 Focus創大 】 学生の個性を育む、創価大学&短大キャンパスツアー Discover SOKA [ スペシャルオンライン対談 ] 「国際社会で生きる力」を養う教育、とは。 鈴木 将史 木村 泰子さん 学長

Special Interview スペシャル オンライン対談 01 「国際社会で生きる力」を養う教育、とは。 変化のスピードが加速する世界情勢に応じて、教育 現場に求められるものも変わっています。今回のゲスト である木村泰子さんは、大阪市立大空小学校の初代校 長として、「すべての子どもの学習権を保障する学校を つくる」という理念のもと、「不登校児ゼロ」「特別支援 学級をつくらない」という類を見ない学校づくりを展開。 その活動は、ドキュメンタリー映画『みんなの学校』と して公開され、教育者をはじめ多くの人々に影響を与え ています。2022年4月新たに就任した鈴木将史学長 は、教育学部教授として教育者の育成に取り組んでき ました。お2人にこれからの教育に必要なものは何か を語り合っていただきました。

02 創価大学ニュース 2 0 2 2 S p r i n g No.113 【表紙写真】 正門から池田記念講堂前まで続く、 哲学の道。春になると桜のトンネルに なることから、桜花の道とも呼ばれる。 今年も桜は卒業生を見送り、新入生 たちの訪れを待っている。 今号の取材・撮影は、感染防止対策を徹底した うえで行っています。 INDEX [ スペシャルオンライン対談 ] [ Focus創大 ] P.01 P.07 「国際社会で生きる力」を養う教育、とは。 ありがとう P.18 子から親へ、親から子へ 文学部 橋野 明夫さん 創価女子短期大学 国際ビジネス学科 芦原 朋香さん キャンパスニュース P.19 卒業生の進路紹介 P.13 創価大学・創価女子短期大学 学長ヴィジョン P.05 Over the border 【ケニア】中村 勝司さん P.15 学問探訪 【 日本の独自文化と国際感覚 】 アネメッテ・フィスカーネルセン准教授 P.17 木村 泰子さん×鈴木 将史 鈴木:私は『みんなの学校』を拝見す るだけでなく、大空小学校を訪問した ことがあります。学生が出向く教育実 習先をきちんと知ろうと、本学の教育 学部では教員が全国の学校を訪問し ており、私の担当校の一つが偶然にも 大空小学校でした。本学の学生の授 業を見学したとき、子どもたちが思い 思いの方法で “自由” に学習をしてい る様子に「こんな授業があるのか」と 驚きました。先生が問題を出して、児 童が何らかの方法で解決するという典 型的なスタイルからは外れていたから です。 木村:たしかに、典型的なスタイルと は異なります。大空小学校では「その 子が、その子らしく育つこと」という 目的を全教員が共有し、すべての児童 が「自分らしく学べる」環境を整えて います。その一つとして、従来の「担 任制」ではなく、児童の6年間の成長 を全教職員で見守る「担当」という制 度に変えました。担任制のときのよう に1人の教員が、児童の1年の成長の 全責任を持つという概念をなくしたの です。すると、「授業についていけない」 と感じた児童が、自分の意思で教室を 出て職員室に来て、「1人でもう1回、 前の学年の勉強をやる」と言いなが ら、教材を出して勉強するといったこ とができるようになりました。 鈴木:私が見学した授業でも、授業 中に児童が席を立って自由に行動して 学校に行くのは、何のため? 答えは「先生に勉強を教わるため」ではない。 Special Interview スペシャルオンライン対談 【 創価大学 学長 】 【 大阪市立大空小学校 初代校長 】 鈴木 将史 木村 泰子さん 教授 学長 SUN113 2022 Spring Discover SOKA 学生の個性を育む、創価大学&短大キャンパスツアー

03 可能性を開花させるために、子どもたちが自身の成長を実感できる教育を。 いるのを見て驚いたのですが、背景に そうしたシステムがあったのですね。 木村:子どもは何のために学校に来る のか。それは、なりたい自分になるた めであり、10年後の社会をつくる1人 の大人になるためだと私は考えていま す。決して、先生に勉強を教えてもらう ためではないという答えを、当時の大 空の教職員全員で導き出しました。 さらに、児童たちが小学校を卒業し て10年たったとき、必要な力は何かを 考え、「多様性社会」「共生社会」「想 定外」という3つのキーワードから、学 校が子どもに何を教えられるか見つめ 直し、学力を「見える学力」と「見えな い学力」に分けました。数値や点数で 表す学力は「見える学力」であり、「見 えない学力」とは、子どもたちが10年 後の国際社会で生きて働く力です。 鈴木:15年以上前に、今の社会を言 い当てたようなキーワードを既に見つ けていたのですか? 木村:そこには、私が阪神淡路大震災 を体験し、世の中は何が起こるかわか らないという考えを持っていたことが 影響しています。「見えない学力」を育 むために、私たち教師は「正解のない 問いかけ」を続けることにしました。 国語、算数、理科、社会といった教科 は、その単なる手段であると。そうし た教育が根付いた大空で育った子ども たちは、いつでも、どこでも自分の 考えを瞬時に発言できるようになりま した。 鈴木:教育現場では「アクティブ・ラー ニング」が行われていますが、型には まったものが多い。先生のお手本をも とに、児童がグループ学習をして、そ の結果を発表し、先生が結論を示して 終わりというような。これが、主体的、 対話的な深い学びかというと、少し違 うのではないかと感じています。一方 で、大空のように、異なる考えを持っ た多様な子どもたちが共生し、自由に 意見を言い合う環境は社会そのものの 縮図です。そうした、自分をさらけ出し ながら切磋琢磨する環境こそ、国際社 会で働くための力を育むのでしょうね。 木村:すべての児童に自分らしくあって もらうために、大空には校則がありませ ん。その代わりに、児童が目標とする「四 つの力」と「たった一つの約束」があり ます。「四つの力」とは、「人を大切にす る力」「自分の考えを持つ力」「自分を表 現する力」「チャレンジする力」。この四 つの力をどれだけ獲得したかが、授業 の評価になります。しかし、この力は「見 えない」ので他者が評価できません。 ですから算数の時間であれば、割合 という学習を通して四つの力をどれだけ 獲得したかを児童自身が評価します。 そうした自己評価を1年生から6年生ま でが行っているのです。 鈴木:それは、すごい。自分の成長を日々 実感しているのですね。 木村:面白いことに、「四つの力」とい う「見えない学力」の獲得を学びの最 上位目標に置いていると、「見える学力」 もついてくるという結果が出ました。大 空では当初、全国学力調査の平均正答 率が大阪市の平均よりも低かったので すが、3年後には全国平均を上回り、9 年後には全国1位の県より8ポイント上 まで大空の平均正答率が向上しました。 鈴木:私は数学教育に携わっているの で、算数は自分で判断する力を身につけ るための教科であると、よく学生に話し ます。理想の算数の授業とは、児童の 学習レベルにかかわらず、自身で新しい ことを発見し、「私は、これができるよ うになった」という喜びを感じる時間な

差異を恐れ、排除するのではなく、そ れを受け入れて、成長の糧とすることだ と。大空の教育は、「勇気」を育む教育 だと感じました。分断が進む今の世の 中では、受け入れる「勇気」は社会でこ れまで以上に求められる力です。 木村:私も同意見なので、とても嬉し いです。大空の卒業生も創価大学に進 学しているのですが、そうした「勇気」 を育む教育をなされている大学がある ことに、とても安心しています。 鈴木:教育は、世の中を効率よく回す ための手段ではなく、一人ひとりの人間 が自分自身の可能性を開花させる場で なければいけないと、先生とお話をさ せていただき、改めて強く感じました。 創価大学は「Discover your potential 自分力の発見」というステートメントを 掲げています。学生のための教育を実 践し、学生一人ひとりの可能性を開花さ せる大学でありたいと思います。 04 のです。大空では、そういう学びを実践 されているのですね。 木村:自分の成長を実感することは、 子どもにとって欠かせません。ですので、 児童の失敗が成功体験に変わるように しています。また大空では、「自分がさ れて嫌なことは、人にしない。言わない」 という「たった一つの約束」があります。 当たり前のことですが、この約束を人は 破ってしまうのです。子どもだけでなく、 大人でも。この約束を破ったとき、大空 では罰も、説教もありません。ただ、自 分のために「やり直し」をします。その 方法は、「やり直し」場所になっている 校長室に児童1人で「やり直しをしに来 ました」と言いながらやってきて、その 場にいる人に、自分のしてしまったこと を話すことで、失敗をやり直すのです。 この「やり直し」をすると、児童にとっ てその失敗は成功体験に変わります。そ うした経験を繰り返すことで、自然と他 人を思いやる人に成長し、6年生になる ころには後輩に憧れられる存在になり、 自分と違う児童にレッテルを貼って差別 をすることもなくなります。 鈴木:本学の教育が目指す「世界市民」 の条件として、創立者である池田先生 は「知恵」「勇気」「慈悲」の三つに分析 しています。そのうちの「勇気」とは、 ▲子ども自らやり直しに校長室に 来たとき笑顔で迎える木村さん ◀ オンラインで木村さんと 語り合う鈴木学長。 ついつい熱が入った 口調になる by 鈴木 将史/Masashi Suzuki 木村 泰子/Yasuko Kimura 大阪府大阪市生まれ。「すべての子どもの学習権を保障する」という理念のもと、教職 員や地域の人たちの協力で設立された大阪市立大空小学校の初代校長として2006 年に就任。2015年に 45年間の教職歴をもって退職。現在は、映画「みんなの学校」の 上映会とともに、全国各地で講演活動を行う。著書に、『「みんなの学校」が教えてくれ たこと』がある。 東京大学理学部数学科卒業、同大学院博士課程単位取得満了退学。愛知教 育大学数学教育講座助手・助教授を歴任。2007年より創価大学教育学部児 童教育学科教授。国際協力機構(JICA)数学教育専門家としてカンボジアへ 渡航多数。2022年4月、創価大学学長に就任。専門:確率論、算数・数学教育、 発展途上国の数学教育。 SUN113 2022 Spring 「すべての子どもが自分らしく 育つことができる社会を、つくっていきましょう」 木村泰子さん

このたび馬場善久前学長のあとを受け、学長に就任することと なった。創価大学ほど教職員や学生が一体となって真剣に大学建 設に取り組んでいる大学はない。本学の新たな歴史を開拓するた め、教職員、卒業生、また支援者の方々、そして何よりも学生の 皆さんと力を合 わせて、「Soka University Grand Design 2021-2030」が掲げる目標の実現に全力を尽くす決意である。 本学が直面する一つひとつの課題に対し、解決への取り組みを果 敢に実行することを目指し、新任の抱負として本年度の学長ヴィ ジョンを発表する。 本学は昨年度に創立50周年を迎え、次の50年へ向けてスター トを切った。2020年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の 影響を受けた1年であったが、学生、教職員の協力のもと、教育 研究をたゆまず継続し、大きな成果を挙げることができた。 教育においてはコロナ対策を取りながらオンラインも交えて 十分な教育を提供し、その取り組みを通して通信教育部がe ラーニングアワードの「オンライン授業支援特別部門賞」を受 賞した。研究面では、エチオピアの大学との国際共同研究 「SATREPS-EARTHプロジェクト」がスタート。また糖鎖生命シ ステム融合研究所が参画する「ヒューマングライコームプロジェク ト」に関する覚書が締結された。さらに、アフリカ・ケニアのナイ ロビ大学の教育棟内に「創価大学ナイロビ事務所」を開設、本 学の国際化にさらなる拠点を加えることができた。 一方、学生の活躍にも目覚ましいものがあった。令和3年司法 試験に12名が合格し、10名以上合格した私立大学のなかで合 格率5位を記録。またキャンパスベンチャーグランプリ東京大会 で大賞を受賞、さらに「RoboCup Asia-Pacific 2021 Aichi Japan」で優勝するなど、数々のコンテストで優秀な成績を収めた。 クラブ活動では、駅伝部が第98回東京箱根間往復大学駅伝競 走で7位に入賞、3 年連続でシード権を獲得した。またパイオニ ア吹奏楽団が3大会連続で全国大会に出場し、銀賞を獲得した。 さらに地域貢献活動でも文学部インターゼミ桑都プロジェクトが 「シュリーマンでまちおこし」事業を展開し話題となった。本年度 も多彩な分野で学生の活躍を期待したい。 「創立50周年記念事業」も予定通り盛大に行われた。昨年4月 には『創価大学50年の歴史』を出版、その寄稿文で創立者は、「継 承すべき本学の宝」として、1.「『人間教育』の尽きることなき慈 愛の水脈」、2.「いかなる苦難も勝ち越えゆく『創造的生命』の 太陽」、3.「人類を結ぶ『地球民族主義』のネットワーク」の3 項目を挙げてくださった。10月には本部棟エントランスホールに て創立50周年記念展「創価大学の歴史」がオープン、本学の人 間教育の歴史を伝える展示となっている。 昨年6月5日から14日まで「世界市民教育」をテーマに「価 値創造×SDGs」シリアルイベントを開催、また10月23日、24 日には「第11回池田大作思想国際学術シンポジウム」が各国を オンラインで繋ぎ盛大に開催された。 国際的評価としては、2020年度にランクインしたQSアジア大 学ランキングにおいて、特に本学の国際性が高く評価され、総合 351 ~ 400位(国内58位タイ)に上昇することができた。 国内では本学は昨年度、大学基準協会による3回目の認証評 価を受審し、高い評価を得ることができた。本学の内部質保証 体制には、いまだ改善すべき面もあるが、「学位授与方針」「教 育課程編成・実施方針」「入学者受け入れ方針」の3つのポリシー を基本に不断の改革を進め、IR室を中心にデジタル情報を収集・ 活用しながら、教育・研究活動を改善するサイクルを着実に確 立したい。 さて、本学は2030年に向けた次の10年を目指す新たな中長 期計画「Soka University Grand Design 2021-2030」の取り 組みを開始した。本学が人間教育の世界的拠点としてさらに飛躍 的な発展を遂げられるよう、各項目を着実に遂行してまいりたい。 同計画では「価値創造を実践する『世界市民』を育む大学」の テーマのもと、教育・研究・SDGs・ダイバーシティという四つ の分野で多くの目標を掲げているが、なかでも「世界市民教育」 は大変重要な意味を持っている。国家間・民族間の分断が進む 現在の世界にあって、創価教育は、青少年の可能性を開き平和 な未来を実現する教育として、世界各地で注目され待望されてい る。牧口常三郎先生を源流とする創価教育の「創価」を冠する本 学には、世界市民教育において世界をリードしていく使命がある。 教育 1: 2: 3: 4: 5: 世界市民を育むカリキュラムの充実 SDGsを推進する教育の展開 データサイエンス教育の体系化 教育力向上と学生の成長を目指した 取り組み ディプロマ・ポリシーと アセスメント指標の見直し 1: 2: 3: 4: 5: 6: 重点研究の推進 国際競争力の強化 外部資金獲得の強化 研究基盤の強化 適正な研究活動の推進 創立者の思想・実践および 創価教育に関する研究を推進 SDGs 1: 2: 3: 4: 全学SDGsプロジェクトの推進 “SDGs目標達成に貢献する 人材”の育成と、“SDGs学生・専門家・ 実務家ネットワーク”の構築と拡大 国連諸機関との連携強化 キャンパスのSDGs化・ エネルギー計画の策定 ダイバーシティ 研究 1: 2: 3: 4: グローバル化の推進 スーパーグローバル 大学創成支援事業の 継続・発展 男女共同参画の取り組み 社会人等の受け入れ推進 Soka University 創価大学・創価女子短期大学 学長ヴィジョン 2022 鈴木 将史 1959年東京都生まれ。東京大学理学部 数学科卒業、同大学院博士課程単位取 得満了退学。愛知教育大学数学教育講 座助手・助教授を歴任。2007年より創 価大学教育学部児童教育学科教授。国 際協力機構(JICA)数学教育専門家とし てカンボジアへ渡航多数。2022年4月、 創価大学学長に就任。専門:確率論、算 数・数学教育、発展途上国の数学教育 Masashi Suzuki 05 創価大学 学長

そのために、池田大作記念創価教育研究所や新たに開設された 大学院教育学研究科を中心に国際共同研究を積極的に推進し、 創価教育の学問的価値を確立するとともに、人間教育の世界的拠 点として、有為な世界市民を数多く輩出してまいりたい。 文部科学省の大学入試改革に合わせて導入した総合型選抜 「PASCAL入試」は、アクティブラーニングの手法を取り入れ、大 学での学びの資質を測定する新しい入試として注目を集めている。 本年度は「PASCAL入試」の枠を150名へと拡大するとともに、 創造的世界市民としての高い資質を持った受験生をより多く入学 させるため、早い段階から高校生たちに本学の教育理念を理解さ せる育成型の「チャレンジプログラム」を導入し、志願者の増加 をはかりたい。 本学は創立以来「学生第一」「学生のための大学」を標榜して きた。全学協議会に代表される学生参加の大学運営は、現在も 本学の誇るべき特徴であり、認証評価においても高く評価された。 本学に集い合った学生たちは、人間教育の慈愛のなかで、1人も 漏れることなく持てる力を最大限に発揮し、「創造的生命」を開 花させてもらいたい。そうした世界市民を陸続と世に送り出すこ とにより、創立者が示された三つの宝を大きく発展させる飛躍の 1年としてまいりたい。 学生支援 1: 2: 3: SLS(スチューデント・ライフ・サポート)セミナーの充実 寮生活支援 障害学生の支援体制の整備とサポート 入試・広報 本学は、一般財団法人大学・短期大学基準協会による令和 3年度短期大学認証評価の結果、適格と認定された。そのなか でも「特に優れた取り組み」として9点にわたり認定されたことは、 これまでの本学の「教育の質保証」と主体的な「改革・改善」 への高い評価ということができる。さらなる自己点検・評価活 動を実施し、さらに質の高い教育を目指していきたい。 本年度は、開学40周年に向けて掲げた「短大中期計画」の2 年目に入る。さらなる飛躍の年として教職学一体で取り組んでい く。この中期計画では「女性(あなた)が輝く未来を拓く」とのテー マを掲げ、2年間の学びを通して、一人ひとりが自分らしく輝く土 台をつくり、自身の未来を拓くことができる教育に取り組んでい く。そして、女性が輝く社会を拓く人材を輩出していく。 昨年度より「輝く女性育成」と「SDGs」の推進という二つの柱 を軸として取り組みを開始した。「輝く女性育成」の推進では、女 性の生き方をテーマとした企画セミナーやワークショップ・勉強会 などを開催した。また、「SDGs」の推進では、授業やゼミナールで の学びをもとにさまざまな学生提案が生まれた。特に「生理の貧 困」については、関東の女子大でははじめて生理用品の無料ディス ペンサーを設置し、学生主体の挑戦の一歩を記すことができた。 英語能力の向上を目指すE-Swans(英語特別プログラム)で は目標のTOEIC730を突破する学生も増加し、実績を残すこと ができた。資格取得においてもビジネス特設クラスを中心に上級 資格も数多く取得し、協会より団体・個人でも優秀賞を受賞す るなど、確実に教育成果を上げることができている。 また、学生の活躍という点でも、大学コンソーシアム八王子主 催の「学生発表会」に向けて、ポスターデザインで最優秀賞に 選ばれ、八王子市内各所に掲示された。学生発表会では、7チー ムが賞を受賞するなど地域貢献へ活躍。「八王子学生CMコン テスト」では、審査員賞に輝き、学生の感性が高く評価された。 そのほか、各種コンテストに挑戦し、「社会人基礎力育成グラン プリ」では、地区予選大会で最優秀賞を獲得し、全国決勝大会 では「基礎力大賞」を受賞。2年連続3度目の日本一の栄冠に 輝くことができた。 コロナ禍にあってもたくましく挑戦する本学学生の成長の姿を 強く感じることができた。 本年4月からたしかな実力を身につけ社会で輝く女性を育成す るための新たなカリキュラムがスタートする。昨年度の実績のう えに、さらなる飛躍を遂げるために、中期計画で掲げた「教育・ 研究」、「学生支援」、「入試・広報」、「進路・就職」の四つの柱と、 それらを支える「経営基盤」の構築をもとに、取り組みを進めて いきたい。 コロナ禍という未曽有の状況が続いているが、今後も最大の注 意を払い、創立者池田大作先生の示された建学の指針に適う「創 価の女性教育の城」を目指して、どこまでも学生第一で、教職員 一同、力を合わせて取り組む決意である。 進路・就職 教育・研究 1: 2: 3: 4: カリキュラム改革 海外語学研修と資格取得教育の充実 教育制度の改革 教員の研究力の向上 06 SUN113 2022 Spring Soka Women’s College Soka University President's Vision & Soka Women’s College President's Vision 水元 昇 1956年熊本県生まれ。創価高校、創価大学の 4期生。経済学部を卒業後、創価大学大学院・ 博士後期課程を満期退学。経済学修士。専門 は経営学。短大開学より教鞭を執り、講師、准 教授を経て教授。入試部長、学生部長などを 歴任し、現代ビジネス学科長、副学長を経て、 2019年より学長に就任。研究テーマは「人間 主義とマネジメント」。業績として「多国籍企業 と人間主義-社会貢献と平和『」創価女子短 期大学紀要(』中国語、英語で翻訳)など多数。 Noboru Mizumoto 創価女子短期大学 学長

07 白樺図書館 看護学部棟 本部棟 GS 中央教育棟グローバルスクエア 滝山国際寮 中央図書館 香峯図書館 フレイザー 図書館 文学の庭 文学の池 学生センター World Language Center ディスカバリーホール ラーニング・コモンズSPACe グランカフェ@GS 4F ラウンジプラット@GS B1F ニュープリンス食堂 ブラウジング ルーム 個人スペース@GS 2F 学生ホール 3F 栄光の道 50周年記念展 「創価大学の歴史」 1 7 14 5 15 8 12 17 16 13 11 9 4 2 18 創春寮 20 3 6 10 19 Focus創大 キャンパスには、夢の実現に向けて、 学生たちが個性を育む場所がいたるところにあります。 新学期が始まり、活気あるキャンパスの魅力を 『集う』『学ぶ』『憩う』『磨く』という四つの テーマでご紹介します。 Discover SOKA 大学のステートメントは「Discover your Potential」。本企画のタイトルで は、「Soka=価値創造」として、「自分ら しいSokaを探して」という思いを込め ています。広大なキャンパスで自分らし い(Discover)Soka を探しましょう。 学生の個性を育む、創価大学&短大キャンパスツアー 創価女子短期大学 理工学部棟 公式Instagramにおいて、 「#Discover SOKA」 のハッシュタグで大学の 「今」を発信しています!

08 SUN113 2022 Spring 集う キャンパス内の広場は、 学生たちの力強い志が集う場所。 学生センター 多くの部活動や留学生会などの学生団体 が、ここを拠点に活動。練習やミーティン グの場だけでなく、体育・学術・文芸と いったジャンルや団体の枠を超えた交流 によって、刺激し合える環境です。 WLCには、多くの語学学習の場があります。チットチャットクラブ、イン グリッシュ・フォーラム、英語ライティング・センターや、英語スピーキン グ・センター、英語学習相談室もあります。英語以外にも、グローバル・ ビレッジがあり、世界各地から集う心やさしい留学生スタッフが、学生 の語学上達をサポートします。 中央教育棟にある1,000人収容のホール。学生の「集い」 の場所として、数々の大学行事や大学祭などの学生主体イ ベント、演奏会や著名人をゲストに迎えた講演会などで利 用されます。ドラマのロケ現場にも選ばれるほど、美しく洗 練された空間です。学内のほかの場所にはない、ホールな らではの厳かな空気を味わってください。 World Language Center 文学の庭 春は桜や雪柳、レンギョウが美しい「文学の庭」は、 短大生が原点に返ることのできる場所。切磋琢磨 する短大生を見守る「マリー・キュリー像」や「建 学の指針」、短大歌「誉れの青春」の歌碑の前で、 同級生や先輩と、短大生活のことやこれからの進 路などをゆっくり語り合える空間です。 ディスカバリーホール 有識者の知見に触れる機会に 創大の特長である 活発な学生活動の拠点 語学学習のプロによる 心強いサポート 1 2 3 4 WLCには、ネイティブに 英語のエッセイを添削し てもらえるサポートもあり ます。また、日常的にネイ ティブスピーカーの英語 に触れることで、英語力 を磨けるスポットです。 同じ志を持った 仲間と出会える 教育学部2年 中玉利美紀さん なかたまり みき

09 学生の知的好奇心に応える! 四つの「図書館」と「ラーニングコモンズ」。 100万冊を超える蔵書には、創立者が若 き日から収集された約7万冊の「池田文庫」 も。そのほかにも貴重な資料が多数。閲覧 室の図書だけでなく書庫の本も手に取って みてください。 中央図書館 創立者の奥様のお名前「香峯子」から命 名。SDGsやジェンダーについての最新本、 資格や語学の本から小説、雑誌までさまざ まな図書が揃っています。「自分の図書館」 として使ってください。※短大生のみ入館可 香峯図書館 白樺図書館 学生や教職員が自身の考えや経験を共有 し、互いの学びをサポートし合う場所。個 人学習はもちろん、少人数のアクティブラー ニングから、大勢に向けたプレゼンまで対 応し、利用者をアクティブな学びに導きます。 ラーニング・コモンズSPACe 自然科学系を中心にした資料を約7万冊 所蔵。理工学部棟にありますが、理数系 教科書だけでなく各種試験図書、文庫な ども充実しています。他学部生もぜひ利 用してください。 フレイザー図書館 図書はもとより、DVDや専門雑誌からも 看護の専門知識が得られます。実習の準 備や、患者さんと接するなかで起こりうる 問題の解決などに役立つ知識・資料が充 実しています。 創立50周年記念展示「創価大学の歴史」 「創価大学の歴史」をテーマに、本部棟5階のエントラン スホールを中心に常設展示。制作にあたっては多くの卒 業生の皆さまから貴重な資料をご提供していただき、充 実の内容に。草創の時代から今に至るまで創価大学に引 き継がれる理念を改めて知る機会となります。 5 6 8 7 9 10 学ぶ さまざまなジャンルの本 が揃う中央図書館は、集中し て勉強できる「知の拠点」です 。貴重な文献で調べも のをしたいとは書庫にも 出入りできます。 洋画DVDを借りて、期末テスト終わりなどに、 自 分へのご褒美と して観るといっ た使い方もきま すよ。 国際教養学部3年 山部蓮華さん やま べ はな

10 憩う 友人と、恩師と、1 人でも。 ホッとした笑顔の咲く場所がいたるところに。 グランカフェ@GS 4F ラウンジプラット@GS B1F ニュープリンス食堂 文学の池 ブラウジングルーム 個人スペース@GS 2F 学生ホール 3F 栄光の道 みんなですごせる場所 しっとりできる場所 自分の世界 SUN113 2022 Spring 11 13 12 14 15 16 17 18 中央教育棟にあるラウンジプラット は、授業の合間にホッと一息つける 場所です。ここにいると、特に待ち 合わせをしなくても「お疲れさま!」 と仲間が集まってきます。 創大生の青春がもっともみなぎって いる場所と言えるかもしれません。 文学部2年 シーラチャンオンレーさん 文学部3年 安秀英さん あん すよん 図書館で集中して勉強する ときは、 ブラウジングルー ムで休憩を挟みます。 留学生の私にとって、 置かれている雑誌か ら教科書では学べない言葉や流行語など の日本語を学ぶ機会にもな っています。

11 磨く 国際寮での集団生活で、 高い目標意識と国際感覚が磨かれる。 滝山国際寮 創春寮 創立45周年記念事業として2017年に オープンした国際学生寮です。国内外か ら多くの学生が集まり、共同生活を通し て価値観や意見を交わし合い多様性を 育む寮です。寮生活を経験した卒業生 にはグローバル企業で活躍する方も多 く、寮にいながらも留学中のような体験 ができる場所です。 2019年に国際寮として新たにスタート した「創春寮」。一人ひとりが自分の花を 咲かせて世界に春をもたらすとのヴィ ジョンを掲げ、大学行事の実行委員、海 外留学、ボランティアに積極的に挑む寮 生が多いです。文化や言語の違いを乗り 越えるなかで、さまざまな考え方を学ぶ ことができます。また、卒寮後も寮で結 ばれた友情を大切にし、励まし合えるこ とも魅力です。 19 20 「RA(Resident Assistant)」として2年生以上の学生が複数人一緒 に暮らし、新入生の寮生活をサポートしています。RAには留学や就職活 動を経験した先輩も多く、滝山国際寮に入れば大学生活の疑問はすべて 解決できます! 創春寮の行事には「感謝を伝えるコーナー」が設けられています。その なかで大学に入学できたこと、寮に入れたことなど、何事にも感謝をし、 言葉と行動で表す力を身につけることができました。 教育学部3年 タンユージンさん 理工学部2年 篠原学斗さん しのはら まなと

12 ▶ 全授業で SDGs との関連性をシラバスに反映! 開発と貧困の経済学 創価大学と創価女子短期大学の「〇〇 & SDGs」をテーマに、 「Soka University Grand Design 2021-2030」の一つの柱でもあるSDGsの取り組みをピックアップ! 今号では、「授業&SDGs」の取り組みを紹介します! 今年度より学生が授業を選ぶときに、ポータ ルサイトの履修登録画面で「SDGsとの関連性」 がチェックできるようになりました。SDGsに関 するアクションは教育現場やビジネスシーンに おいて活発になっており、本学でも授業や研究 などさまざまな形で積極的に取り組んでいます。 SDGsを学び、日常生活で実践するきっかけ として、SDGs関連授業の検索機能を活用して ください。 「開発」というと経済開発を連想されるでしょう。 しかし国連開発計画(UNDP)が「人間開発」を 提唱したように、経済開発は最終的には人間の 幸福に結びつかなければなりません。「開発」とは、 人間らしい生き方(Human Well-Being)の実 新企画が 始まります! 現を意味します。「貧困」とは人間開発の失敗を 意味します。国連が掲げる「持続可能な開発目標」 (SDGs)は地球を守りながら貧困を解決し、人 間らしい生活を実現するという人類の普遍的目標 なのです。 1. 貧困をなくそう ○ → 関連している ◎ → 非常に関連している SUN113 2022 Spring 高木 功学部 経済学部 長・教授 Isao Takagi 本学経済学部経済学専攻卒業、本学経済学研究科経 済学専攻修了したのち、タイ国立チュラロンコン大学大 学院への派遣留学を経て、本学経済学研究科経済学専攻 (世界経済研究)単位取得満期退学。国際部副部長、 学部長補佐などを経て、2019年より経済学部長。

卒業生の進路紹介 大学ではGlobal Citizenship Program(GCP)の なかで、今苦しい思いをしている人のために自分にできる ことはないのかを追求。また、ブルネイへの交換留学と 旅を通じて、移動の自由が人の可能性を拓く重要な役割 を果たしていることに気づきました。将来は、メーカーの 総合職として、人が自由に移動できる社会の実現に貢献 したいと思います。 海外留学や旅の経験を軸に自由に 移動できる社会を目指したい 家田 智美さん 法学部 法律学科 Career Paths for Graduates 株式会社デンソー 2021 年度 積水ハウス株式会社 創価女子短期大学に進学して、一人暮らしを始めたこ とがきっかけで、「住」に関心を持つようになりました。1 年からキャリアプランニングの授業などを通じて、自分 の足りない部分や強みに気づき、就職活動に役立ちまし た。将来は短大生活で培ったビジネススキルを活かし ながら、お客さまが満足できるものをつくり上げ、幸 せを提供していけるようになりたいです。 後悔のない住まい探しを助け、 幸せな人を増やしたい 合田 海夕さん 創価女子短期大学 国際ビジネス学科 福岡検疫所 大学で出会った先輩の、親身に相談に乗り、人のため に尽くす生き方が強く印象に残っています。その人に出 会ったおかげで、より多くの人に貢献する仕事がしたい と思うようになり、公務員の道を目指すように。春からは 今まで学んできた語学や異文化の知識を活かし、感染症 などの侵入を阻止する検疫所の一員として、国民の安全 を確保するために力を尽くします。 感染症などの侵入を防いで 国民の安全確保に貢献する 上野 託実さん 国際教養学部 国際教養学科 さん 入学当時、私は自分に自信が持てず、前向きな気持ち で物事に取り組むことが苦手でした。しかし、部活で人の ために尽くす先輩や努力する仲間から刺激を受け、自ら の心が変わりました。社会人になったら、大学で学んだ 「自分に自信を持つ大切さ」を忘れずに、一人ひとりの 能力開花を目的とした個別教育を通して、夢を自分で切 り拓けるような人材を育成したいです。 部活で出会った先輩や仲間が 自分を信じる大切さを教えてくれた 添田 恵美さん 経営学部 経営学科 株式会社 公文教育研究会 大学では課外講座であるGlobal Leader College (GLC)を受講し、3年生のときにエジプトに交換留学。 留学先で医療環境が十分に整っていない現実を知り、 人々にとって一番大切である命や健康を守りたいと強く 思うようになりました。将来は、日本が誇れる医療機器 を世界に届けることで、健康で幸せな人生をより多くの 人に歩んでもらえるように頑張りたいです。 命や健康を守り、幸せな人生を 歩んでもらえるように尽くしたい 馬場 良美 文学部 人間学科 キヤノンメディカル システムズ株式会社 三重県 小学校教員 教員になることを決意したのは、寮生活で他人の成 長を心から喜べるようになったことがきっかけです。信 じてくれる人の存在が挑戦の原動力となり、人を成長さ せるのだと実感しました。春からは、子どもたちの小さ な変化に気づき、子どもの可能性をその子自身にも気 づかせられるよう、教師としての役割を果たしていきた いです。 自分で考え、判断し、行動できる 子どもを育みたい 高橋 直子さん 教育学部 児童教育学科 13

本年3月に創価大学・創価女子短期大学から世界や地域へ羽ばたいた皆さん。 「大学で育んだチカラ」と「これからの目標」を語っていただきました。 高校のラグビー部、大学のアメフト部で、きついときも チームメイトと支え合い苦楽を分かち合う素晴らしさを 経験しました。その学びを活かし、患者さんに寄り添う 看護師でありたいです。東日本大震災の際に救護員と して活動された先生のお話から災害救護を知り、その道 にも進みたいと考えています。これからも多くを学び、 多くの人を助けていきます。 2年次に受講したプログラミングの授業で、自分で 書いたコードが動いたことに心が躍動しました。この 出会いをきっかけに情報技術にのめり込み、大学院への 進学を決めました。情報システム工学科の充実した数学 科目で磨き上げた「抽象的に考え、物事の本質をつかむ 力」を武器に、多くの人が活用するITサービスの裏側を 支えるエンジニアを目指します。 国際教養学部 国際教養学科 看護の道でも、多くの人と 苦楽を分かち合う経験を 沼野 隼作 さん さん さん さん 看護学部 看護学科 情報技術をより深く追究し 社会を支える技術者に 畠中 希 理工学部 情報システム工学科 大阪赤十字病院 お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 入学当初はドメスティックな考え方を持っていまし たが、国際教養学部で培った国際感覚と英語力を活か せる環境で働きたいと考えるようになり、外資系ITコン サル業界のリーディングカンパニーへ。留学中に見つけ た「メイド・イン・ジャパン製品の国際競争力の低下を解 消する」という私自身の目標を、当事者視点のコンサル ティングで実現することが目標です。 世界基準のITコンサルで 日本製品の競争力を向上したい 大庭 正明 日本IBM株式会社 1年次のフィリピン研修で貧困層の暮らしを目の当たり にしました。電気・照明がないため、太陽のある時間しか 勉強できない子どもたちがいると知り、人々を取り巻く 環境を整えることで潜在的な可能性を引き出したいと 家電メーカーに就職を決めました。照明器具など人々の 暮らしを支える商品やサービスの提供を通じて、貧困や 格差の解消に寄与したいです。 さん 櫻井 陸 経済学部 経済学科 貧困に苦しむ人々の可能性を 電化製品で引き出すために パナソニック株式会社 アサヒ飲料株式会社 飲料を通じて人々に最高の笑顔を届けるには、お客さ まの潜在的ニーズに応えなければいけません。そのため に必要な「論理的思考」は理工学部の実験で「、多角的思考 力」はGlobal Citizenship Program(GCP)のプレゼン テーションの場で磨き上げてきました。創大で吸収したス キルを発揮し、すでに商品が飽和している現代社会で、生 活者の健やかな人生を支える価値創造を目指します。 人を笑顔にする飲料で 新しい価値創造に挑戦する 瀬木 大希 理工学部 共生創造理工学科 EY新日本 有限責任監査法人 3年次に公認会計士試験に合格。難関試験を乗り越え る力となったのは、現役会計士の先輩方の励ましでした。 先輩の姿に「どこまでも後輩のために動く」という創大 生の精神を改めて学び、自分も後輩を合格に導こうと、 会計士課程で講師を始めました。春から社会人生活と両 立することになりますが、どの場所も使命の場所ととら え、周囲の人のために行動していきます。 公認会計士として、企業の未来と 後輩の人生を、理想の道へ導く 中沢 航平さん 法学部 法律学科 14 SUN113 2022 Spring

15 中村 勝司さん 文学部1995年卒業(20期) United States International Univ-Africa 日本語教員 日本語教育を通じて、ケニアと日本を繋ぐ 人と文化の懸け橋になる。 「我が使命の地はケニア」。文学部日本語日本文学 科の1期生である中村さんは、創価大学で育んだ強 い志のもと、ケニアの人々のために人生を捧げてい る。大学卒業後に進学したナイロビ大学院時代を含 めると、ケニア在住歴は27年。永きにわたり、ナイロ ビにある私立大学「United States International Univ-Africa(アメリカ国際大学)」の教壇に立ち、日 本語教育を通じて、日本とケニアの懸け橋になって いる。 「ケニア日本語教師会にも創設当初から関わってお り、日本語弁論大会、東アフリカ日本語教育会議、 日本語能力試験などを運営してきました。そうした働 きを評価いただき、日本とケニアの友好50周年を機 に日本大使館公館長の表彰も受けました。今も師で ある創立者への誓いを果たす日々です」 中村さんがアフリカに関心を持ったのは高校生の ころ。「大変な思いをしている人たちのところへ行こ う」と、日本語教師として日本とアフリカとの懸け橋 になる夢を持って創価大学へ。入学した1990年は、 創立者とアフリカからの要人の会談が一気に増加し た1年。牢獄生活を勝ち抜いたネルソン・マンデラ元 大統領をはじめ、ケニアのモイ元大統領などアフリカ 言語、文化、留学……日本とケニアの交流を深める 活動の原点はアフリカの未来のために捧げた青春時代。 の要人を中村さんはパン・アフリカン友好会の一員 として歌声で歓迎する役割を担った。 「アフリカの平和と幸福のために全力で行動されて いる創立者とともに我々もと、ときに涙を流し、生命 の底から歌いました」と話す中村さんたちパン・アフ リカン友好会のメンバーの姿に、創立者は「魂が伝 わってくるような歌でした。今後、いかなる形であれ、 あなたたちのなかでアフリカへ留学する人があれば、 必ず私に報告しなさい。全力をあげて応援します」と メッセージを送ってくれたという。 その言葉に決意を固め、中村さん自身は4年次に ケニア留学。卒業後はナイロビ大学の大学院に進み、 その後もケニアで教壇に立ちながら創立者が拓いた アフリカ留学の道をさらに大きく拓くために精力的に 活動を続けた。今では、創価大学の夏期短期ボラン ティア研修をアメリカ国際大学で受け入れるなど、両 大学で交換留学生を送り合う関係を築いている。 「アフリカからの要人を歓迎する毎回の式典が、創 立者への誓いの場でした。今の自分があるのも、こう した誓い場をつくっていただいたお陰です。そして、 アフリカの未来のために青春を捧げられたことは、私 の人生の原点です」 日本とアフリカの懸け橋となる日本語教師になるために、 1990年文学部日本語日本文学科の1期生として入学。パン・ アフリカン友好会での活動で思いを強くし、4年次にケニアへ 留学、卒業後はナイロビ大学の大学院に進学し、以来27年 間、ケニアで日本とアフリカの交流に貢献している。 中村 勝司さん Over the border ◀アメリカ国際大学 での創大夏期ボラン ティア研修の様子

16 ケニアは、かつての日本のような著しい経済成長を遂げ ている。その象徴といえるのが、首都ナイロビを中心に運 行されている高速鉄道「ナイロビSGR」(全長470km: 東京-京都間に匹敵)。ケニアはサブ・サハラアフリカにお ける日本のODAの最大供与国でもあり、経済、インフラ、 教育、農業など幅広い分野で支援活動が行われている。 [ナイロビ] ケニア共和国 SUN113 2022 Spring

学 問 探 訪 アネメッテ・ フィスカーネルセン准教授 【 文学部 】 日本の「当たり前」が世界の標準ではない。 それが理解できると世の中の見方も変わる。 新型コロナウイルス感染症という脅威 に立ち向かう経験をし、SDGsという目 標が定められたことにより、人々の心の 距離が縮まり、世界は一つになれるかも しれない。そんな淡い期待を抱くものの、 世界各地の紛争がなくならない現状を見 ると、実現は難しいのかもしれません。 今回、社会人類学の観点から日本の政 治、宗教、社会、ジェンダーについて研究 するフィスカーネルセン准教授に、日本人 と世界の価値観の違い、その違いがグ ローバルで日本人が活躍する際に障壁と なる可能性の有無について、教えていた だきました。 “空気を読む”ことで社会秩序を保とうと する日本人の価値観は、肯定的に語られ るケースが多くあります。例えば、「サッ カーの国際試合後に日本人ファンが行っ たスタジアムのゴミ拾いを、海外メディア が賞賛した」というニュースを目にした記 憶があるのではないでしょうか。実はそう した美談を生み出す価値観が、日本が男 女平等の世界ランキングで120位(「ジェ ンダー・ギャップ指数2021」)という残念 な評価を受ける原因にもなっているとフィ スカーネルセン准教授は指摘します。 「日本では先生や学生、先輩や後輩と いった上下関係を考慮しながら、“空気を 読んだ”発言や行動をする『建前』を自然と 若いころから学びます。この暗黙のルール は、日本人の礼儀正しさや責任感の 強さのようなよい面として表れる一方、 平等を奨励し、人々が自由に自分の考え を話せる社会を目指す世界の潮流に対 立する考え方でもあります。ちなみに日 本における女性の社会進出が世界水準 と比べて遅れている理由の一つに、自ら を主張しない“従順な”女性像が好まれて きたことがあげられます。このように『建 前』によってつくられた社会秩序は、 SDGs実現の大きな弊害にもなりうるの です」 では、日本人が国際社会で活躍するた めには、「建前」を捨て、国際標準の価値 観を学ばなければならないのでしょうか。 「そもそも明確な『日本基準』さらには 『国際標準』は存在しません。社会人類 学ではこのような現実の複雑さについて 研究しています。例えば、『ジェンダー』 が自然なものと捉えられていることに対 し、実際にはイデオロギーであること等 が挙げられます。世界は多様で、同じ場 所や環境、例えば、職場や教室内でも多 くの異なる基準や考え方があります。そ うした多様性を理解するために、学生が 学ぶのが『批判的思考』です。単に批判 するのではなく、自分の置かれている状 況を理解し、情報収集を行い、深化させ、 調査・分析する力を養うことです。そし て、一見まったく違うように見える状況 File 30 創大の でも、そのなかにある矛盾や類似点を見 抜く能力を身につけていただきたいので す。地政学的緊張が高まり、世界各地で 民族紛争が起こり、自国第一主義に走る 活動により、そして男性による女性や子 ども、ほかの男性に対する暴力が増加す るという深刻な状況に直面している今、 とても重要な力です」 異文化に触れるチャンスが多い創価大 学では、「批判的思考」を育む経験をする チャンスにあふれています。フィスカーネ ルセン准教授が担当する「EMP(English Medium Program)」もその一つです。 「EMPは、留学生・日本人学生のいずれ も、英語の授業のみで卒業できるコース の総称です。5学部、4研究科に用意され ており、世界各地から集まった学生たち がともに机を並べ学ぶなかで、自然と異 文化に触れられます。普通だと思って育っ た自分の考えが、他人の普通ではないと 理解し、異文化間の力学を学ぶと、政治 や商業の仕組みを考え、具体的に平和を つくる方法を学ぼうという意欲が生まれ ます。EMPや留学といった異文化を知る 機会を活用し、多くの学生に『批判的思 考』に基づいた方法で自分の考えを発表 する術を学んでいただく。そうすることで 新たな時代ですべての人の人権と尊厳を 重んずる学生を育成し、SDGs達成に向 けて歩んでまいりたいと思います」 [ テーマ ] 日本の独自文化と 国際感覚 ANNE METTE FISKER-NIELSEN 17

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