松田 健児(教授)

マツダ ケンジ

専門分野 英米法
担当科目 英米法、EU法
研究テーマ 英米法における人の権利と自然の権利の再調整

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研究者情報詳細

略歴

  • 創価大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得

主要な論文・著作

  1. 英国における純粋な経済的損失とネグリジェンス責任
  2. イギリス法における公職者の個人責任
  3. 英国における団体による致死罪の判定について
  4. イギリス法におけるInterest概念とRight概念を巡る問題の一側面

所属学会

比較法学会

メッセージ

ともに、英米における‘地球(アース)法学’の探求に学びませんか。

人類は、今日まで、個人や団体が自然界のもろもろの資源や動植物に対する支配権を有することを根拠づける法の制度や観念を構築してきました。その結果、法は、人類が様々な種の動植物を絶滅に追い込み、生態系の永続可能性さえも危うくさせる事態を招いても、そうした事態を諸個人や団体の利益のために正当化する傾向にあります。

法は、人類の存続を脅かす程度までに達しつつある地球生態系の危機とそれを回避する諸困難に直面している現時点においても、依然としてそうした傾向を辿り、人の自然に対する支配権を正当化する人間中心主義の権利制度を維持するだけでよいのでしょうか。

私たちは、人を含むすべての生き物の生存基盤としての地球生態系が永続的に存続することを可能にする法制度を確立するという課題に直面しています。今、英米法において、今日までの人間中心主義の法学を反省し、生態系を構成する生き物や自然に対して人の利益との関連における価値だけではなく、それらの存在それ自体に固有の価値を認めて、人と自然との新たな関係を創造するために、人の権利と自然の権利の再調整を試みる‘地球(アース)法学’と呼ばれる法学が探求されつつあります。

英米法研究を通して、ともに、将来世代のために地球や地域の生態系の永続可能性の確保を希求し、生態系を構成する動植物や自然に対する人間の責務を考慮する法と法学を探求してみませんか。

ゼミ紹介

演習テーマ

「生態系への微量汚染問題と英米法」

研究内容

各種の有害物質による工場跡地の微量汚染、工場廃水に含まれる各種有害物質による豊かな漁場の低濃度汚染、あるいは放射能核種による低濃度の土壌・水や海洋の汚染等々。これらの汚染に共通の問題は、各種の有害物質による生態系の汚染が急性毒性を直ちに発揮して人の健康被害をもたらす程度までに達していないことにあります。

しかしながら、生態系の微量汚染は慢性毒性を発揮し、長期間にわたって人の健康を蝕み、人体に様々な遅発性の症状を引き起こし、人としての生活の全体を破壊するものに達する場合があることは、有機水銀による不知火海全体の微量汚染がもたらしている水俣病に典型的に知ることが出来ます。水俣病事件において不幸にも実証されてしまいましたが、生態系の微量汚染は 人の健康被害のみならず、人としての生活全体を破壊し、市民生活を破壊して、地域社会の永続性を奪ってしまう可能性を有しています。

諸国の現行法は、こうした生態系の微量汚染が引き起こす社会の永続可能性の破壊や生態系の永続可能性の破壊を認識し、何らかの救済手段を提供することに様々な困難を抱えています。こうした困難を乗り越えて、英米の法律家も生態系の劣化そのものを法律上の救済対象とする生態系損害として把握し、生態系の劣化を防止し、生態系の永続可能性を確保することが出来るように伝統的な法制度や観念の新たな展開を探求し始めています。

本演習では、諸々の有害物質による生態系の劣化に関連する英米法及び欧州法に素材を求めて、生態系損害に関する法の対応の諸側面を観察したいと考えています。

文系大学院 法律学専攻

  • 専門分野 英米不法行為法・EU法
    研究テーマ 英米法不法行為法の研究:特に、不法行為法を費用対便益分析アプローチに基づく偶発的事故法から環境や生態系の健全化を確保することが出来る環境不法行為(environmentaltorts) 法や有害物質不法行為(toxic torts)法への変容とその変容を達するための財産概念、損害概念および因果関係概念の展開に関する研究
    研究紹介 イギリス不正行為法研究(ネグリジェンス法における注意義務存否の判断基準、人身侵害事件における連続的損害に関する有責性の判断基準、公職者の個人責任等)、イギリス法における権利論研究(イギリス不法行為法における利益観念の役割と意義、イギリス法における制度的救済手段論における権利論等)、英米における胎児の法的地位(Wrongful life 訴訟の研究)。生態系汚染と法の研究(水俣病問題特別措置法(平成21年7月15日法律第81号)の研究)
    研究、教育方針 今後の研究:生態系の劣化と持続可能な社会の発展の困難性の現実化が指摘される時代における英米不法行為法の展開について研究を進めていく。具体的には、①環境や生態系の劣化を防止するための環境不法行為法における土地所有者の責任論の展開と権利・義務の変容、②子どもの生体内に存在し毒性と健康影響が不明な合成化学物質の適正な規制を目指す有害物質不法行為法の展開、および③生態系保全や環境保護のための規制を行う際の判断基準を供与している費用対便益分析アプローチの限界と再構成。
    教育方針:上述の英米不法行為法の問題点に関して豊富な諸資料をなしている1次資料(判例等)と2次資料(論文等)の英語文献を読解します。
    メッセージ 英米法は、先例を用いて法原理を探求する判例法主義のために現状保持の傾向が強いという印象を持つ人が多いことでしょう。しかし、実際には、諸訴訟や諸立法を通じて、時代の要求と社会的必要に良く応えて、諸課題の適正な解決を実現する継続的な法発展を達成する成長力を持っています。英米法史は、意図的侵害への対応を中核とする古典的不法行為法が、産業革命時代の要求に応え、その時代と社会の必要に基づいて、18世紀後半~19世紀にかけて、非意図的な侵害・損害の金銭的補償を核とする現代の偶発的事故法へと成長してきたことを教えてくれます。現在は、人を含む全ての生命体の基盤としての生態系の健全さの確保が必要であることが認識されている時代です。この時代の必要に応答するために、英米法は、例えば、その不法行為法を、偶発的事故による諸損害の補償法から、生態系の劣化との関連性が指摘される、あるいは、関連性を否定することが困難な様々な慢性的な疾病(例えば、癌、アレルギー、自己免疫疾患、発達障害等々)に適切に対応することによって、生態系の非偶発的な累積的劣化を予防できる不法行為法へと成長させる力強い努力を行っています。その発展の動態を共に学んでみませんか。
    その他 特論演習では、履修者の発言と議論を重視して進めていきます。参加者は毎回の演習において必ず発言するよう心掛けて下さい。

ページ公開日:2017年08月06日
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