特別企画座談会2011
司法試験合格者の声

国際社会と弁護士の未来

世界を舞台に、豊富なキャリアをもって教鞭をとる教授陣と、法曹の第一線で活躍する本学出身の先輩に国際社会における法曹人の役割、使命について語ってもらいました。
田村 本日はお忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。まずは現在のお仕事についてお話しいただけますか。
本間 現在、創価大学の法科大学院で教壇に立ち、民事訴訟法、民事法総合などの民事系を担当しています。弁護士の業務としての中心は渉外相続。主に日本の法律で対処する相続の案件でも、相続人の中に外国籍の方がいらっしゃったり、外国に財産がある場合も少なくないのが最近の傾向です。

幸田 創価大学のロースクールで知的財産法、アメリカ法、知的財産法の中でも特許法と著作権法とアメリカの特許法を教えています。大学で教鞭に立つ一方、アメリカの弁護士事務所の東京オフィスでパートナーとして働いています。仕事はアメリカの裁判で、アメリカの知的財産権をめぐる訴訟、特許や著作権といったものを扱っています。

鈴木 ニューヨークが拠点の外資系法律事務所と提携する事務所でパートナーをしています(座談会開催当時)。業務内容は訴訟、国際仲裁で日本の法的手続きの代理人をしたり、合併や事業譲渡などのM&A、会社事業に関するサポートなどです。

大谷 韓国の弁護士と共同で事業をしていますが、私の場合は国内法での業務が多いですね。渉外系としてはスポーツ関係、エンターテイメント系で、最近はプロ野球選手の契約交渉代理人なども務めました。

国際舞台をめざし、新たな分野への挑戦

田村 みなさんは国際的業務で活躍されていますが、その分野に進もうと思った動機は何でしょう?
大谷 若い研修生や弁護士にこれからは国際的な力を身につけないといけない、留学でも何でもしないといけないと言ってきまして。かくいう自分はドメスティックであまり説得力がなかった(笑)。弁護士を10年経験してからアメリカへ留学しましたが、向こうで実感したのは自分のアイデンティティはアジア人だと。ならばそこで勝負をしてみよう、アジアの専門家になろうと決意し韓国語と中国語を一から学びました。

鈴木 私は弁護士を6年やってそろそろ独立という時期だったので、ラストチャンスという思いでの留学でした。その経験で渉外の分野をはじめましたが、そこは学歴を重んじる分野で…。創価大学出身でみると渉外業務をしている人が少ないし、あらゆる分野で創価大学出身者が活躍することが大事だと思い、自分自身が切り開いたと言えるようがんばってきました。

幸田 大学を卒業して製薬会社で1年働いたのですが、研究室で試験管を振っていて一生こうやって過ごすのかなと思ったら迷いが出てきたんです。23歳の時に通った英語学校で、米国人教師を通しパテントロイヤーという職業に出会い、米国で自分のビジネスを始める目標を立てました。渡米し、ロサンゼルスの法律事務所に入所したのが1972年、29歳の時。移住する覚悟をもって臨んだ事務所でしたが、そこはものすごく厳しい世界で相当鍛えられましたね。

本間 高校時代に交換留学生としてアメリカで生活をした経験があること、英語が得意だったのでそれをいかしたいと思ったことが留学の動機。将来、日米両国にまたがって法務を行える弁護士も必要になるという思いもあって、弁護士を5年やってからアメリカのロースクールに入学しました。当時はアメリカ創価大学の構想が発表され、私もなんらかの形でお役にたてればと考えたことも動機のひとつです。

異なる法制度の中で理解を深める

田村 国際的な業務を行う際に気をつけている点、工夫している点などはいかがでしょうか?
本間 準拠法の確認です。日本法以外については知見が乏しいことを明示し、安易に他国の法律について意見を述べないこと、弁護士の業務の範囲を曖昧にしないこと、そして文化・感覚の違いを考慮して、コミュニケーションを密にとることです。優秀な翻訳者に委託できるものは委託する柔軟性も大事だと思います。

幸田 自国の文化や習慣にとらわれず、他国のそれに敬意を払うことです。他国の文化に溶け込むよう配慮していますが、生まれ育った日本の風習を忘れることはできないので、そこが業務において難しい点でしょうか。

鈴木 異なる法制度、文化圏にいるクライアントが多いので、誤解や理解不足を生じないよう細かく説明したり、理解を得やすいよう配慮しています。適宜、アメリカ人などにサポートしてもらい、円滑なコミュニケーションを図れるようにしています。

大谷 文化的背景が違うので、それを念頭に置いて業務を行うこと。私の場合は、日本、韓国、アメリカ、それぞれの国の法制度に対する基本的信頼を失わせるような事件処理や説明をしないことです。私はアジアが専門なのですが、アジアの法律問題の処理にあたる時、ニューヨーク州の弁護士であることが結構役に立っていますね。

学ぶことの喜びを伝えたい

田村 最後に、創価大学法科大学院をめざす学生にメッセージを。
本間 自分をいかして人の役、世界の役、平和の役に立ちたい、そんな心根のある学生はぜひこのロースクールで学んでもらいたい。国際的な分野で活躍できる仕事がたくさんあることを知ってほしいし、人権をはじめ法律家だから守れる分野がいかに多いかを学んでもらいたいですね。

幸田 アメリカのロースクールで感じたのは、勉強とは楽しいものだということ。楽しいことには限界がないのだから、学ぶことも永く続けられることをロースクールの学生にも身につけてもらいたい。志があればアメリカでもイギリスでも中国でもいい、海外のロースクールや世界のいろんな司法の場に飛び込んでいける道がある。僕はそれを全面的にサポートしていきたいと思っています。

鈴木 創価大学出身と言うのがいい意味で自分を鼓舞するというか、自分がここで負けられないという原動力になっているんです。もし私自身が創価大学に来ていなければ司法試験もうかっていなかったろうし、そもそも留学もしていなかったでしょうし、ここが自分の原点だとつくづく感じます。

大谷 創価大学には「歴史を開く喜び」があることを伝えたいですね。既存のレールの上をいかに進むかということより、自分や後輩が進むべきレールそのものをつくりたい、そんな大きな意志がある方には、是非このロースクールをお薦めしたい。
田村 本日は、大変にありがとうございました。
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ヘンリー幸田

学習院大学理学部化学科卒業
明治大学法学部卒業
ペッパーダイン大学ロースクール特別課程修了
ニューヨーク州弁護士、米国弁理士
創価大学法科大学院教授
クイン・エマニュエル法律事務所東京事務所代表として米国知的財産法に関する訴訟・契約を担当
本間佳子の顔写真
本間佳子

中央大学法学部卒業
ジョージタウン大学ロースクール・LL.M課程卒業
ニューヨーク州弁護士、弁護士
創価大学法科大学院教授
本間佳子法律事務所 所長
渉外家事、相続、英文契約書などの業務に携わるほか一般民事も担当
大谷和彦の顔写真
大谷和彦

創価大学法学部卒業(10期)
ニューヨーク大学ロースクール卒業
ニューヨーク州弁護士、弁護士
虎ノ門法律経済事務所パートナー
エンターテイメント・スポーツ法、韓国に関する業務、国際的相続を担当
鈴木美華の顔写真
鈴木美華

創価大学法学部卒業(12期)
インディアナ大学ブルーミントンロースクール・LL.M課程卒業
ニューヨーク州弁護士、弁護士
創価大学法科大学院教授
ホワイト&ケース法律事務所シニアカウンセル
外国会社や外資系企業の訴訟および日本国内での事業遂行に際して会社法、各業法、独禁法、労働法などの法的助言と実行支援などを担当
田村伸子の顔写真
司会 田村伸子

創価大学法学部卒業(20期)
弁護士、創価大学法科大学院講師