創大Lab

  • HEADLINES
  • 創大Lab
  • 社会学、歴史学、心理学、哲学の観点から演劇作品に込められたメッセージを読み解く

2017年10月06日

社会学、歴史学、心理学、哲学の観点から演劇作品に込められたメッセージを読み解く

創大Lab編集部

大野 久美 教授 文学部 人間学科
(広報誌「SUN」2017年10月号:「学問探訪」に掲載記事より)

演劇作品を多角的に分析することで、本当の面白さが浮かび上がる

大野教授は、文学部で「演劇論」や「演劇入門」の授業を担当しています。
「演劇にはいろいろなメッセージが入っていて、私たちの生き方や生活とも関連があります。例えば、紀元前に生まれたギリシア悲劇が今も上演され続けているのは、人間の本質が描かれているからです。台詞の分析や、どのように批評的に見るかということを教えながら、演劇の面白さを伝えたいと思っています」

大野教授の一番の研究テーマは、20世紀のアメリカの代表的劇作家であるユージン・オニールです。
「演劇作品を理解するには、時代背景を社会学的・歴史学的に分析するなど、様々な角度からの分析が必要です。オニールは、フロイトやユングといった心理学者や、ニーチェやショーペンハウアーといった哲学者の影響を受けて心理劇などの作品を書いていますので、社会学や歴史学、心理学、哲学をふまえてオニール劇を分析しています」

プロの俳優を招いて行う特別授業は、毎回学生たちから大好評

理論的に演劇を学ぶだけでは、学生も物足りないのではないか?そう考えた大野教授は理論と実践の融合を目指し、数年前から舞台俳優や元タカラジェンヌを招いて特別授業を行っています。
「俳優さんたちには、台本の読み方やご自身の演劇論などを話していただき、台詞の朗読や演技をしてもらいますが、台詞を朗読するだけで、その場の空気が一変し、学生たちがたちまち引き込まれていくのが分かります。最後は、何人かの学生と俳優さんが一緒に劇の一場面を即興で演じるという、まさにアクティブラーニングといえる授業となっています」

演劇の実践という点では、自分で演出したい、脚本を書きたい、演じたいという学生たちが集まって劇団も結成されました。劇団名は「劇衆オの組」。「オの組」は、「大野久美」教授の名前が由来です。創大生だけでなく、他大学の学生たちも参加していて、今年3月に旗揚げ公演、9月にも公演を果たしています。

演劇から学んだことは社会で役立つ。その信念で学生を鍛える大野ゼミ

大野ゼミでは、オニールの作品をまず原書で精読し、日本語に訳します。台詞を心理学的、哲学的なアプローチから深く読み込み、分析結果を発表します。英語力 、心理学・哲学の知識、分析力、プレゼン能力などが必要ですが、真剣に取り組むことでそれらが身に付いていくといいます。

「ゼミで鍛えられたことは、就活や社会に出てからも役に立ちます。例えば、心理劇の勉強は顧客の気持ちを読み取るのに役立つことでしょう。卒業生たちはプレゼン力やコミュニケーション力を活かし社会で活躍しています。演劇を学んで人間力を高めた学生を社会の様々な分野に輩出していきたい。それが私の強い思いです」

大野教授の思いどおり、卒業生たちは航空会社や証券会社、大手建設会社などの一般企業から国家公務員、教員まで、多彩な分野で活躍しています。

PROFILE :

  • 大野 久美 Koichi Wada

    1976年駒澤大学大学院 人文科学研究科 社会学専攻修了。東京都職員として児童施設・障害者施設の指導員、補装具研究所・福祉機器総合センター・高齢者研究・福祉振興財団などの主任研究員を務めたのち、つくば国際大学へ。2002年より本学に勤務。研究テーマは「ノーマライゼーションと地域社会」。介護保険の制定にかかわったり、府中市福祉のまちづくり推進審議会会長、東京都福祉保健財団福祉用具選定委員会委員長なども務める。

ページ公開日:2017年10月06日


  • HEADLINES
  • 創大Days
  • 創大Lab.
  • 広報誌「SUN」