創大Lab

  • HEADLINES
  • 創大Lab
  • 哲学は世界を理解するために必要な考察力を養う学問

2020年04月02日

哲学は世界を理解するために必要な考察力を養う学問

創大Lab編集部

ロバート シンクレ 教授 国際教養部 国際教養学科
(広報誌「SUN」2020年4月号:「学問探訪」の掲載記事より)

哲学は世界を理解するために必要な考察力を養う学問

 哲学とアメリカのプラグマティズムを専門とするロバート・シンクレア教授。そもそもプラグマティズムとはどういう学問なのでしょう。

「プラグマティズムとは、19世紀後半の科学における革新―例えばダーウィンの進化論などを通して、人間とはどういう生き物か、自然界とはどういうものか、また、そういった革新が我々の道徳観や社会、知識、思考などにどう影響するかを考察する哲学的な試みです」

 シンクレア教授はカナダのサイモンフレーザー大学で、W.V. クワインをはじめとする哲学者たちについての研究で博士号を取得。哲学と科学、両方への関心を追求する中で、クワインに代表されるような、理論的で抽象的な哲学者のための哲学だけでなく、より現実に近いところで展開されるプラグマティズムにも興味を持つようになり、卒業後に独学で研究しはじめました。
 アメリカのプラグマティズムを代表する思想家ジョン・デューイについては現在も研究を続けています。ただ、アメリカのプラグマティズムというと日本ではあまり馴染みのない学問。日本での教育活動において困難はないのでしょうか。

「プラグマティズムは、科学、教育、宗教、政治、情報、道徳などにおけるさまざまな問題の解決に直結するため、学生たちも学ぶモチベーションを持ちやすいようです」とシンクレア教授。理解を深めるには、できるだけたくさんの例を示すことが必要だと言います。
「例えば、伝統と最新の科学との対立や、価値観の変化や相違などの社会における葛藤です。より具体的な例を挙げると、日本におけるジェンダーの問題があります。これまでの日本の発展は伝統的な価値観の上に成り立ってきたものですが、これから先、新しい価値観をどう受け入れていくのかというように、学生たちが生まれ育った社会に引き寄せて考察させるわけです」

 このように、どの時代、どの場所でも、当てはめて検証できるのがこの学問の特徴だとシンクレア教授は言います。

「ここで重要なのは、ある特定の理論で、ある文化の変容を説明しきれるかどうかではありません。そもそも自分の考えを整理すること自体が、哲学的な作業なのです。私の役割は、現代社会について考察するにあたって、ビジネスや経済学を学ぶのではなく、哲学を学ぶことの意義は何なのかを伝えること。そして、現代の社会に即した形で哲学の妥当性をよりわかりやすく提示し、世界が直面する問題を解決する糸口にたどり着きやすくすることです。そこから先を考え、行動を起こすのは学生自身。よりよく行動するには、よりよく考えることが必要です」

 シンクレア教授はクワインとデューイに関する論文執筆をさらに進めるとともに、宗教や政治哲学などについての考察を深め、私たちに世界市民に必要な考える力を与えてくれることでしょう。

教員情報

ページ公開日:2020年04月02日


  • HEADLINES
  • 創大Days
  • 創大Lab.
  • 広報誌「SUN」