今村 弘樹 教授

「人間並みに賢い、AIロボットを作りたい!」 強い気持ちが切りひらく未来

AI(人工知能)を使って 現実をさまざまに「加工」する!
 ぼくが研究しているのはAI(人工知能)です。画像や動画に「何が映っているのか」をコンピュータに識別させる「コンピュータビジョン」という技術を使い、VR(仮想現実:virtual reality)やAR(拡張現実:Augmented Reality)のシステムを作っています。

 VR(仮想現実)とは、コンピュータの中で作られた架空の世界を、あたかも現実であるかのように人間に体験させる技術のことです。もうひとつのAR(拡張現実)は、実際の風景にバーチャルな情報を付け加える技術で、よく知られた例に「ポケモンGO」などがあります。
 どちらも、コンピュータの技術によって現実世界に情報を付加することができます。
ロボットやプログラミングが好き。 でも「研究者」は夢にすぎなかった
 高校では新聞委員長を務めるかたわら、音楽も好きだったのでコーラス部に所属していました。得意だった科目は数学やと物理。親に安価なコンピュータを買ってもらって、自分でプログラミングも楽しんでいました。

 そんな当時のぼくの夢は、AIを使って友人のように対話ができるロボットを作ることでした。友人ロボットたちと共同で新しいものを作り出すことができたら素敵だなと思っていました。その一方で、「将来は大学に行って、普通のサラリーマンになるんだろうな」とも、漠然と考えていたのです。

 

 特に志望の学部もないままに過ごしていた高校時代でしたが、高校2年生のときに創価大学に理工学部が新設されることを知りました。そこで、遅まきながら志望校を決定。でも理系の受験勉強の仕方がよくわからず、現役では不合格に。予備校の授業で初めて勉強の仕方を知り、2度目の挑戦ですべりこみました。

 

卒業研究で研究の面白さに目覚め 大学院で新たな出会いに恵まれる
 念願叶ってAIやロボット制御につながる情報システム学科に進学しますが、情報工学の基礎を幅広く学ぶ3年目まではそれほど授業に面白みを感じることができませんでした。ようやく学問の楽しさに気づいたのは、テーマを絞って自分で考えなければならない卒業研究のときです。それまで授業で学んだことと自分の研究テーマがつながって「研究って楽しい!」と実感しました。

 

 大学院に進みたいと思いましたが、当時の創価大学の大学院入学は3年次までの成績が重視され、ぼくには厳しい条件であることがわかりました。そんなとき、たまたま目にしたのが「北陸先端科学技術大学院大学」の募集ポスターです。大学院だけの大学で、「入りやすいけれど卒業するのが難しい」と評判でした。目的が決まってからのがんばりには自信があったので、そちらに進学することにしました。

 

 大学院の授業は午前中だけでしたが、アパートに帰ってからも10時間くらい勉強しました。研究室を選ぶ段階でロボット研究を希望しましたが、なんと第6希望まですべてハズレという事態に。そこで当時よく質問に通っていた研究室に希望を出しました。

 

 そこには信号処理や画像処理を専門にしている先生がいらっしゃいました。コンピュータで画像を情報として取り扱い、分析したり加工しりする画像処理の研究内容に触れるうちに「これは自分に合っている、好きな分野だ」と気がつきました。

 画像処理の中でも、画像の中で物体がどう動いているかを分析する「動画像処理」という分野があります。今思えば、この研究に魅了された時点で、研究者としての自分の基礎が固まっていきました。

 

「この人に学びたい!」 画像処理の権威に直談判して、アメリカに留学!
 博士課程に進むと、ますます研究が楽しくなり、論文もたくさん読みました。論文が抜群に面白かったのがアメリカのロボット工学の権威の先生です。「この先生のもとで勉強したい!」と、ダメもとで先生の研究室にメールを送りました。意外にもトントン拍子で先生にお会いする機会が得られ、AIを含むロボット工学を多面的に研究するロボティクス研究所の客員研究員として、1年間アメリカに留学することになったのです。

 

 アメリカの大学はとても平等で、開かれた研究環境でした。画像処理とコンピュータビジョン研究で世界のトップを走る先生が、留学生の自分ともディスカッションしてくださるという、本当に贅沢な経験をすることができました。

 

「目で見て認識する」ことさえ コンピュータは完璧にできない!
 ぼくが最終的にめざしているのは、人間と同じレベルの知的処理ができるAIを作ることです。

 その基礎固めとして、研究室では主にAIの画像認識を研究しています。AIの画像認識のレベルをあげるには、まず人間が目で見て「これは◯◯である」と認識しているのと同じようなことをコンピュータにも認識させる必要があります。

 

 カメラなどのセンサーが捉えた対象を「これは△△だ」とAIに覚えさせ、さまざまな処理をすることが、少しずつできるようになってきました。しかし物体の一部が何かに隠れていたり、最初に学習させたときと向きや角度、部屋の明るさなどの条件が違ったりすると、AIはその対象が前に覚えたものと同じものだ、と判断することができません。まずはここを認識させるようにしたい、というのが大きなテーマの一つです。

 

遠くの人が同じ部屋にいる!? ARが提供する新しい「空間」
 ぼくたちの研究室では、各自が自分の部屋に居ながらにして誰もがそこにいるように感じられるAR「3次元ビデオ通信システム」を作っています。将来的には、同じ空間でお互いが隣に座り、CGなどで一緒に作業ができるようなシステムをめざしています。

 

 まず光の三原色(Red Green Blue)に距離(Distance)センサーを加えたRGBDカメラを使ってデータを取り、「同期AR空間」と呼ばれる架空の空間をサーバ上に作ります。それをゴーグルで各ユーザーが共有すれば、同じ空間にいるように感じられます。

 このシステムがうまくいくと、遠く離れた人とも同じ部屋にいるかのようにコミュニケーションできます。

 

 ARをリアルに感じるためには、現実世界と付け加えられた部分がなめらかに接続している必要があります。このシステムでも、自分の部屋の状況と遠隔地の人の動きをどれだけ精度よく解析して再現できるかが問われます。さらに各空間の状況を全部同期させなければなりません。たいへんですが、その分やりがいもあります。

 

 さらに、付け加えられた3次元画像を触れるようにする試みもしています。触覚を再現するグローブをはめたり、ちょうど物体があるあたりにドローンが来るように操作したりして、触覚も感じてもらうのです。五感とリンクさせることで、応用の幅も広がります。
プログラミング技術は後からでも身につく まずは「やりたい」という気持ちが大事
 私の研究室ではプログラミングは避けて通れません。ですが、苦手意識があっても、優しくて優秀な先輩たちが教えてくれるので一年くらいでなんとかなります。

 

 ここでプログラミングの楽しさにハマった学生は大学院に行くことが多いです。就職を希望する学生には、今ある技術をスマホのアプリにするなど、社会で役立てるシステムを作ってもらいます。

 

 研究室の動画には男子ばかり映っていますが、ちゃんと女子もいます。今年も新たに女子が2人加わりました。文系の学部からAIに興味を持って入ってくる学生もいます。他の研究分野から新しい発想を持って入ってきてくれるのは大歓迎です。

 

 研究で一番楽しいのは、今まで実現できなかったこと、夢でしかなかったことがだんだん形になっていくときです。できることが点でしかなかったのが、線になり面になっていく。うちの研究室のテーマはそういうつながりが生まれやすくて面白いです。

 

 ぼく自身、勉強が得意な方ではありませんでした。でも、やりたいことをあきらめなかった結果、夢見ていたAIの研究者になれたのです。その経験からも、高校生の段階で知識があるよりも、「やりたい!」という気持ちの方が大事だと思います。

 

 勉強にはあまり自信がないけれど、とにかくやってみたいという人がこの学科や研究室にきてくれると嬉しいです。一緒に新しくて楽しい研究をやっていきましょう。

 

研究を漢字一文字で表すと?
 一文字なら「楽」ですね。「最先端の技術を使って、ユーザーにとって楽しいものを自分たちも楽しみながら創造していきたい」といつも考えています。
<経歴>
1973年 長野県生まれ
1997年 創価大学 工学部 情報システム学科 卒業
1999年 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士前期課程 修了
2002年 米国カーネギーメロン大学 ロボティクス研究所 訪問研究員
2003年 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士後期課程 修了(博士(情報科学))
2003年 長崎大学工学部情報システム工学科 助手
2007年 長崎大学工学部情報システム工学科 助教
2009年 創価大学工学部情報システム工学科 准教授
2015年 創価大学理工学部情報システム工学科 准教授

2020年 創価大学理工学部情報システム工学科 教授

 

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