藤原 和夫 准教授

タンパク質の不思議に魅せられて、相互作用の謎の解明に挑む!

10万種類の中から間違えずに相手を選ぶ

タンパク質は、20種類のアミノ酸が連なり、それぞれが独自の立体構造を持っています。また、例えばヘモグロビンは同じタンパク質が4つ、結合した状態なのですが、ヘモグロビンを構成する各タンパク質は、細胞内で合成されるとすぐに、4つが結合します。このように、タンパク質どうしが結合した状態のタンパク質もあります。
 タンパク質どうしが相互作用するときは、鍵と鍵穴のように、お互いの形がぴたりと合う相手とだけ作用し、相手を間違えることはありません。タンパク質の形については研究が進んできていて、数万種類のタンパク質の構造のデータが、研究者の利用できる形で公開されています。標的のタンパク質の形を見て薬を設計したり、タンパク質をデザインしたりすることもできるようになってきています。しかし、相互作用のメカニズムはよくわかっていない部分が多いのです。10万種類もある中で、なぜ適切な相手を認識できるのか、本当に凄いことなのです。

結合部分に着目、誰でも利用できるデータベースを構築

研究室では現在、タンパク質が相互作用する際に、タンパク質どうしが接触する結合部分について主に研究をしています。公開されているタンパク質の立体構造のデータを解析していくと、タンパク質の立体構造は全然違うのに、結合部分の構造はよく似ているものがあります。このような結合部分の構造に着目して、大量のタンパク質のデータを、プログラムを作成してコンピュータで解析し、分類して、誰でも利用できるようなデータベースを構築しています(http://protein.t.soka.ac.jp/oligami/)。
 データベースには「oligami(おりがみ)」という名前をつけました。タンパク質は折りたたまれて立体構造をとっているということと、重合体を意味する「oligomer(オリゴマー)」からつけた名前です。

本に載っていないなら自分で調べるしかない

 それは大変だ、そんなうまい話があるのかと(笑)、非常に驚きました。それも、でたらめにアミノ酸をつなげてはだめで、決まったアミノ酸配列になると立体構造をとるというのです。生命が長い時間をかけてつくりあげてきたそのメカニズムを知りたいと、2年生からタンパク質の研究室に出入りするようになりました。ただただ不思議で、何でだろう、と調べてもどの本にも載っていない。それなら自分で研究するしかない、と思いました。
 タンパク質の解析をするにはプログラムも書けないといけないと知り、自分でプログラミングの勉強もしました。3年生のときには土曜日にタンパク質のゼミを開いてもらったりし、4年生になったときにはプログラムを書いてタンパク質の研究をさせてもらっていました。そのまま大学院へ進学し、修士課程2年間、博士課程3年間は、タンパク質の構造を薬品で壊し、元に戻っていく過程を調べることで立体構造ができるメカニズムを探る研究をしていました。

企業戦士から研究の現場へ

博士課程修了後は就職し、4年間、サラリーマンをしていました。研究職ではなかったのですが、就職氷河期でしたし、博士号が取れるとわかってからの就職活動で2カ月しか就活できなかったこともあり、もう雇ってくれるならどこでもありがたい、と(笑)。仕事では研究用のソフトの営業・企画をしていました。研究はやりきったという思いもあり、未練もなく、すっかり企業戦士になっていました。
 しばらくして生物系のソフトを担当することになり、生命情報分野と出会い、再度勉強したり、研究者と話をする機会を持ったりしていたころ、創価大学に生命情報工学科ができるにあたり、応募して再び大学に戻ってきました。以来、タンパク質の不思議さにひかれて研究を続けています。

想像もできないものを想像できるものにしたい

タンパク質の構造をつくる上で働いている力というのは、実はプラスとマイナスが引き合う静電相互作用だけなのです。このシンプルな力が複雑に相互作用することで構造をつくり、複雑な中に対称性があったり、精密さがあったりする。本当にうまくできていて、美しいと思います。そして、どのようにしてこうなったのかが全くイメージできません。本当に凄い世界です。宇宙そのもの、宇宙の原理がここに凝縮しているのではないかとさえ思います。
 タンパク質がなければ生物はできませんから、タンパク質は生物の出発点ともいえるのですが、タンパク質ができるには遺伝子が必要で、タンパク質をつくるために必要なリボソームはタンパク質とRNAの共同体のようなものです。それらがいったい、どのようにできたのか、どれが先にできたのか、といったこともわかりません。それでもこの20年ぐらいに研究が進歩して、立体構造はなんとなく想像できるものになりつつあります。研究を通してこの想像もできないものを、想像、そして創造できるものにしたいですね。

知的欲求に逆らわず、深く考えて

 理科に興味があって、理工系に進もうと思うなら、考えたい時にはとことん、考えてほしいと思います。解けない問題があるときには、その問題にとことん取り組む。知りたいことは放置しないで、調べる。知りたいという知的欲求に逆らわないで、深く考えてほしいですね。
 知的欲求って誰にでもあると思うのです。子どもってよく、「なんで、なんで」って言いますよね。その大人版です。大人ならより深く、「なんで」を追求できるはずなので、その力を養うためにも深く考える経験は大事だと思います。
 高校までの勉強は、好きじゃないこともたくさん、やらないといけないですよね。でも大学になると、少なくとも2年生以降は、ほとんど好きなことを中心に勉強ができます。また、大学にはいろいろな専門の先生がいて、疑問を一緒に考えてくれます。そこが高校までの勉強と大学の勉強の大きく違うところです。
 共生創造理工学科では、理科のどの分野でも勉強ができます。情報分野までありますから、理数に興味はあるけど好きな分野がよくわからない、という人でも好きなことが見つけられるのではないかと思います。私自身、環境問題の勉強をしようと思って進学しましたが、タンパク質という不思議に出会い、今も研究を続けています。1年半、考える時間がありますから、その間に一緒に考えていきましょう。そして、タンパク質の不思議に興味を持った人はぜひ、一緒にタンパク質の謎の解明に挑んでいきましょう!
 また、研究とは関係ありませんが、中学・高校の理科の先生を目指す学生の支援も行っています。理科の先生を目指す人も大歓迎です!

先生にとって研究とは? 漢字一文字で表すと?

未来の「未」、未解決の「未」です。未だ明らかにされていないことを、未来に向けて明らかにしていきたい。人間の体にだけで10万種類もあるタンパク質の中にあるルールを見いだすことで、どんなタンパク質のこともわかるようにしたいと考えています。

▼プロフィール
生命情報工学科 藤原 和夫 准教授
1974年 富山県生まれ
2001年 創価大学大学院博士課程修了 博士(工学)
2001年 株式会社ヒューリンクス
2005年 創価大学工学部生命情報工学科 講師
2013年 創価大学工学部生命情報工学科 准教授

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