井田 旬一 教授

「材料の力」で発展途上国の環境問題解決に貢献!

世の中の問題を解決し、生活を変える「材料開発」

私の研究室では、新しい材料の開発に取り組んでいます。材料開発には、世の中のいろいろな問題を解決する力、生活を変える力があります。近年では、青色発光ダイオードが開発されたおかげで、照明の世界が変わりましたね。宇宙に行くにも深海に行くにも、新しい材料が必要です。
 私たちは材料開発の中でも、環境問題を解決するというところを焦点に研究を進めています。いろいろな研究に取り組んでいますが、一部をご紹介しましょう。
 現在のメインの研究テーマはゲルの開発です。身近なところにあるゲルといえば、こんにゃくや豆腐、ゼリーなどがそうですね。また、紙おむつにも吸水ゲルが使われています。しかし最近では、このようなゲルとは全く異なる新しいゲルが続々と開発されてきています。例えば、花の上に乗せられるような超軽量のゲルや、車で上に乗っても壊れない高強度ゲル、環境によって性質の変わるゲルなど、様々なゲルが開発されていて、面白い分野です。

微生物の力を活かすゲルで、水処理の低コスト化をはかる

私たちは、メキシコのグアナファト大学と共同で、水処理に利用できるゲルの研究を行っています。微生物の力で汚水を処理するとき、有機物は分解できてもアンモニアは残ってしまうので、それを無害な窒素にまで変換しなければなりません。硝化細菌という細菌を利用してアンモニアを処理することはできるのですが、その処理には大量の空気(酸素)をポンプで送り込む必要があり、莫大な費用がかかります。汚水処理の問題は発展途上国でも深刻で、この莫大な費用を賄いきれない国が多くあります。
 私たちの共同研究では、硝化細菌とともに、酸素を生みだす微細藻類を利用しようと考えています。微細藻類は光合成をするのに光を必要としますが、硝化細菌は光があると死んでしまいます。そこで、遮光できる物質の入ったゲルをつくり、その中に硝化細菌を閉じ込めて、微細藻類とともに装置に入れることにしました。これなら低コストなので、途上国でも導入しやすいのです。
ゲルの特性を活かして硝化細菌を閉じ込め、汚水を処理するための装置を開発しました

スマート材料で、エネルギーをかけずに重金属をリサイクル

また、現在、材料の分野では、スマート材料とか、インテリジェント材料とかいわれるものが注目されています。これは、環境によって性質が変わる材料のことです。
 私たちの研究室でも、感温性ポリマーといって、温度によって構造の変わる、長い鎖状の材料を開発しています。構造が変わる温度も自分たちで設計し、その構造変化を利用して汚水中の重金属イオンをつかまえたり放したりする性質をポリマーにもたせ、重金属の回収に応用しています。こうした材料を開発することで、あまりエネルギーをかけずに重金属をリサイクルできるようになります。
 このほかにも、光ファイバーを利用した新しいセンサー開発や、二酸化炭素分離のための新規のナノ材料の合成など、複数のテーマで研究を進めています。
 また、創価大学内の他の研究室や、メキシコやマレーシアといった海外の大学との共同研究も、積極的に進めています。環境問題は発展途上国で深刻化していますので、現地の大学と一緒に問題を解決していくのは重要なことだと考えています。現地の若手研究者なども、日本と共同研究をすることでレベルを上げていきたいという熱意がありますから、とてもやりがいがありますね。

創価大学工学部の一期生として入学

環境問題を解決したいと思うようになったのは、高校生のころです。ちょうど大気汚染、水質汚染、土壌汚染などの問題が噴出してきた時期でした。目指していた大学があったのですが、受験はうまくいきませんでした。でも、ちょうど創価大学に工学部ができたばかりで、生物工学科があったので、そこで勉強してみようと思いました。
 不本意入学といえなくもなかったのですが、工学部ができたばかりで、先生方からは「理想の学部、学科をつくろう」という、ものすごい情熱を感じました。学生たちも「一期生だ。自分たちが歴史をつくるんだ!」という意識がありましたから、不本意だなどと感じている暇もなく、楽しかったですね。なにしろ上級生がいないわけですから、先生方も一年生のときから研究に誘ってくださったり、「研究とは学生も教員も対等にやるものだ」とディスカッションをしてくださったりと、本当に力を引き出してもらえたと思っています。
 大学院卒業後には、博士研究員としてアメリカへ渡りました。中学・高校でバスケットボールをやっていて、NBAに憧れていたこともあり、アメリカは憧れの地でした。住んでいた時には夢の中にいるような感じで楽しかったですね。 

実は学校一、勉強ができなかった小学生時代

こうお話すると、小さいころから理科ができて勉強好きで研究者を目指していたと思われるかもしれませんが、実は小学校のころは、学校で一番、勉強ができませんでした。
 通知表に「よい」「ふつう」「努力」という項目があって、全項目、「努力」だったのは私ぐらい(笑)。自分でも出来がよくないと思っていましたが、母親だけはずっと私を信じて、「お前はやる気になれば何でもできる子だ」といい続けてくれ、一度もけなされたことがありませんでした。母親が信じ続けてくれたおかげで、ある時を境に勉強にも挑戦できるようになり、少しずつ勉強が好きになっていきました。また、小さいころからずっと本の読み聞かせを続けてくれたのも大きかったですね。そのお陰で本が大好きになり、小学校高学年時に、様々な面白い理系の本に出会えたことが、今の自分を方向付けたのだと思います。

人を思いやり、人の力を引き出す環境に救われた大学時代

大学時代は楽しかったというお話をしましたが、実は楽しいばかりではなく、引きこもった時期もありました。もともと性格的に、他人と自分を比較して自分を卑下する傾向があったため、いつの頃からか、自分の欠点を隠さないといけないと思ってしまったのです。何がしたいかよりもどうすれば人からよく見えるかということにとらわれ、「いい子」の自分を演じていたのですが、そういう自分に疲れてしまったのです。
 しかし、そんな私を、先生方も友達も、いい意味で放っておいてはくれず、心配してみんなで励まし続けてくれました。でも、当時はそのことに気づけませんでした。
 周囲で励ましてくれた人たちの気持ちが本当に理解できたのは、アメリカに渡ってからです。同じ研究室の友人が悩んでいて、何とか励ましたいといろいろ気遣っていたのですが、そのときに初めて、自分がしてもらってきたことに気づきました。周りの人たちがいかに自分のことを考えてくれていたか、ということを心から実感できたのです。

自分を信じて原石からダイヤを磨きだしてほしい

振り返ってみると、私は、縦や横のつながりとか、人のことを心配したり励ましたり、人を信じて力を引き出したりするやさしさといった創価大学の雰囲気に救われたと思います。こうした良さは、今の学生を見ても伝統として息づいていますね。入った学生が伸びる大学が創価大学だと感じています。
 ですから、「勉強ができないから」と、やりたいことを諦めようと思っている人がいたら、簡単に諦めず、自分を信じて頑張ってほしいと思います。自分を信じることは難しいことですが、信じて磨かないと、原石からダイヤは出てこないのです。

いい結果が出なくても、科学の進歩には貢献できる

創価大学は学生中心ということをモットーにしていて、私の研究室でも、基本的には研究も勉強も学生に任せています。その一方で、任せきりにはせず、こまめにディスカッションしながら研究を進めています。学生は自主的に本当に一生懸命、研究に取り組んでいます。
 その分、思うような結果が得られないときにはこちらもつらいですが、大事なのはいい結果が出ることだけではありません。科学は、共同で大きな「表」を埋めていくような作業で、「この条件でやったらうまくいきませんでした」と、誰かが「×」をつけるのも大事なことなんです。そうすればほかの人は、その作業はやらなくてもいいわけですから。
 ですから「研究でいい結果が出なかったことは残念だけれど、それも科学の進歩には貢献していること。そして何より、自身が研究を通して問題解決能力を身に付けることが重要」と、学生には話しています。
 自主的に研究を進め、途上国の環境問題に貢献したいと思っている人はぜひ、一緒にがんばりましょう!

先生にとって研究とは? 漢字一文字で表すと?

共に、の「共」です。研究というのは一人ではできないんですよね。共同研究も増えていますし、学生をはじめいろいろな人と一緒に進めていくのが研究だと考えていますので、「共」を選びました。
 

▼プロフィール
共生創造理工学科 井田 旬一 教授
1972年 群馬県生まれ
1995年 創価大学工学部生物工学科卒業
2000年 同大学院博士課程修了
    博士 (工学)
2000年 シンシナティ大学化学工学科 博士研究員
2005年 創価大学工学部環境共生工学科 講師
2007年 創価大学工学部環境共生工学科 准教授

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