窪寺 昌一 教授

レーザーを用いた微細加工で 新たなセンサーを開発!

ノーベル賞もとったほどの発明「レーザー」には 普通の光にはない、さまざまな特徴がある!
 私たちの研究室では、主にレーザーを用いた微細な加工により光ファイバーに機能性を持たせる研究をしています。「レーザー応用工学」と名付けています。構内に関係する研究をしている先生方がいますので、ゆるやかなグループのような形で連携しています。
 レーザー光線が初めて生みだされたのは、1960年です。その4年後の1964年には、レーザーの基本原理を発明した3人の科学者に、ノーベル物理学賞が授与されました。また、2018年のノーベル物理学賞は、レーザーの技術に革新的な進歩をもたらす発明をした3人の科学者が受賞しています。
 レーザー光は、自然光や一般的な電灯の光などと違い、ほとんど広がらずまっすぐに進む性質があります。また、光は波の性質を持っています。自然光などでは波長がそろっておらず、いくつかの色が混ざっていますが、レーザー光では波長が単一で単色です。レンズによってレーザー光を非常に小さな点に集めることができ、エネルギーを集中させることができます。さらに、波の山と谷が規則正しく一定していて、重ねあわせると干渉縞が現れます。
レーザーなくしては 現代の生活は成り立たない!
 このような普通の光にはない特徴により、レーザー光は幅広い分野でさまざまな用途に使われています。
 まず、半導体の製造にはレーザーはなくてはなりません。また、加工や溶接の現場、医療用メス、計測、通信、顕微鏡など、研究や産業の現場で幅広く用いられています。身近なところでは、レーザーポインター、CD、DVD、プリンタ、バーコードスキャナなどにも使われています。
 あまり意識していないかもしれませんが、レーザーなくしては現代の生活は成り立たないと言っても過言ではありません。レーザーは半導体と並んで20世紀の科学を牽引してきた大発明なのです。
花形の電気工学科へ進学 理化学研究所で卒業研究!
 私は中学、高校の頃から理科系の科目が得意で、大学は理工学部に進みました。そこでレーザー工学の分野で著名な先生が大学にいらっしゃるということを聞き、是非その研究室に行きたいと、電気工学科を選びました。当時はまだレーザー光が生みだされてから四半世紀も経たないころです。新しいレーザーの開発は、非常にチャレンジングで夢のある、21世紀の技術という感じでしたし、電気工学科は花形でした。
 大学4年の卒業研究は、大学の研究室ではなく、埼玉の和光市にある理化学研究所の研究室で行いました。テーマは「ウランの同位体分離に用いる赤外線レーザーの開発」です。
最先端の機材がそろった 恵まれた研究環境だった
 当時はあまり意識していませんでしたが、所属した研究室は、国のプロジェクトの一環で、いろんな機関からの研究者や学生が集まる規模の大きな研究室でした。
 大学の指導教官は「何もわからなくてもいいから、一流の環境で経験を積んでこい」という気持ちで送り出してくださったのだと思います。高価な機械がふんだんにあり、他大学から来ている方に実験のコツなどを教わったりして、とても楽しく過ごしました。修士課程は大学に戻って研究したのですが、そこで初めて理研の環境がいかに充実した素晴らしいものだったかを実感しました。
大学院では レーザーで「雷」を誘導する研究に挑戦
 修士課程での研究テーマは、レーザーを用いて人工的に落雷を制御する、レーザー誘雷でした。レーザーでプラズマを発生させ、そこへ雷を誘導しようとするもので、博士課程の先輩と一緒に研究していました。レーザーで避雷針を作るための研究です。雷は夏だけではなく、日本海側などでは冬にも発生しています。雷のエネルギーはすさまじく、変電や送電の設備などに大きな被害が出るため、レーザーで雷を制御しようとしたのです。
 大学には理研のような潤沢な予算はないので、学内で材料を見つけて実験器具を自分で作りました。機械工学科があったので大きな旋盤を借りて回していたら、「電気分野の人が使うなんて、あり得ないんだけどなー」と先生に言われたこともあります(笑)。

 

すさまじいパワーを持つ フェムト秒レーザー
 今の研究室には「フェムト秒レーザー」という、特別なレーザーがあります。先にお話しした、2018年のノーベル物理学賞の対象となった技術が使われています。フェムト秒レーザーは短い間隔で点滅を繰り返すレーザーです。このようなレーザーの1回の照射時間を「パルス幅」といいます。フェムト秒レーザーはパルス幅がフェムト秒のレベルなのです。
 フェムト秒ってどのくらいかわかりますか? 10の15乗分の1秒、つまり1000兆分の1秒です。光は真空中では1秒間に地球の周りを7周半もする速さですが、その光でさえ、1フェムト秒では0.3マイクロメートル、100フェムト秒でも30マイクロメートルしか進めないくらいの短い時間です。
 1パルスあたりのエネルギー量が同じであれば、パルス幅が短くなればなるほど、パルスの山が高くなり(ピークパワーといいます)、その強度が強くなります。パルス幅がフェムト秒レベルになれば、すさまじいピークパワーになるのです。
 レーザー光を小さな焦点に集めると、さらに高いピークパワーを持たせることができます。レーザー光は、例えばそのエネルギーで素材を融かすので、金属などに穴を開けるときに使われています。ただ、融けると小さなゴミが出て、きれいな穴が開きません。しかし、フェムト秒レーザーでは、熱は発生しますが、あまりにも時間が短いので、穴が開いているときには熱はまだ発生していません。そうすると、きれいな穴を開けることができるのです。
髪の毛の太さの光ファイバーに マイクロメートルサイズの加工
 フェムト秒レーザーでは、難しい言葉では「非線形光学現象」を起こすことができるので、透明なガラスやプラスチックの内部のみを加工することもできます。
 私の研究室では、フェムト秒レーザーで、光ファイバーを加工しています。光ファイバーといっても太さは数十~百マイクロメートル、髪の毛の太さくらいですから、加工するサイズもマイクロメートルのレベルです。
 光ファイバーは、コアという中心部の周りをクラッドというコアよりも屈折率の低い層が覆っています。フェムト秒レーザーを使うと、光ファイバーのコアに焦点を絞り、クラッドを傷つけずにコアにだけ穴を開けたり加工したりすることもできます。光ファイバーは光を閉じ込めますが、加工することで光をある程度外に漏らし、その情報から周囲の環境を探るセンサーができると考えています。
 また、コアの部分に規則的に筋を入れると、その部分は温度や外力によって伸び縮みします。そこに光を入射すると、特定の波長の成分が反射されますが、伸び縮みに伴い反射される波長も変化するため、ひずみや温度変化を知ることができるセンサーになります。
教科書を覚える=物理ではない 大学での勉強は高校までとは違う
 研究室ではこのような技術開発だけでなく、学理的な研究にも重点を置いています。
 レーザー工学と聞くと、高校時代に物理を選択しなかったし…、としり込みする人もいるかもしれません。でも、高校までの物理と大学の物理はまるで違います。中には教科書を覚えることが物理だと思っている人もいますが、そうではありません。大学は、高校までとは全然違う勉強をするところなのです。
 1年生に物理を教える教授が、「高校までの物理は全部忘れていいです、大学でまた一からやり直してあげます」とおっしゃっているのですが、私も共感しますね。ちゃんと学びたい気持ちがあれば面倒を見ますし、来てくれたからには一人前にします!
「なぜだろう」の気持ちが大事 視野を広く保って可能性を見いだして
 とはいえ、理工系に来るからには、当たり前に思える現象に疑問を持つ癖をつけてほしいと思います。昔は機械を分解すれば仕組みがわかりましたが、今は、例えばスマートフォンなどもブラックボックスで、たとえ分解しても何もわかりません。でも、なぜ映るんだろう、なぜこうすると動くんだろう、仕組みを知りたい、というような気持ちを持つのは大事なことだと思います。
 また、オープンキャンパスなどに来る高校生の中には、特定の先生、特定の企業の名前を挙げるなど、とても具体的な夢を語る人がいます。それはそれでいいのですが「少し視野が狭いかな」と感じることもあります。私自身、レーザーで有名な先生がいらっしゃると知り、その先生の研究室に行こうと決めたわけですが、振り返ると視野が狭かったな、と思います。もっといろいろな分野に興味を持って、大学に入ってからもぜひ、視野を広げていろいろな可能性を見いだしてほしいですね。
 
研究を漢字一文字で表すと?
 「輝」

光は輝きます。レーザーも輝いています。研究も輝きます。学生諸君も輝かしい将来に向けて本学で研鑽を積んでほしいと願っています。

<経歴>

 1985年慶應義塾大学理工学部電気工学科卒業。1988年慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。1991年、米ライス大学大学院工学研究科博士課程修了。理化学研究所レーザー科学研究グループ基礎科学特別研究員、宮崎大学工学部助教授、教授等を経て、2016年より現職。
 

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