新津 隆士 准教授

化学の力で、天然物から人の役に立つものをつくる!

二酸化炭素を糖にできれば……。 複雑な機構の解明に取り組む

私の研究室では、「自然環境中の有用物質の探索と利用」をテーマに、いろいろな研究をしています。
 私自身が長年取り組んでいるのは、空気中の二酸化炭素を食べられる糖に変える研究です。いわば植物が光合成で行っていることを、人工的にしようとする研究です。
 なかでも、ホルモース反応といって、ホルムアルデヒドから糖を形成する反応のメカニズムの解析を行っています。ホルモース反応は機構が複雑で制御するのが難しいため、炭素の同位体を用い、反応の過程を追うことで、新たな知見を得ることができました。二酸化炭素をホルムアルデヒドやメタノールとして固定している研究者もいらっしゃるので、つなげることができれば、二酸化炭素から糖を得ることも夢ではありません。さらに研究を進め、二酸化炭素を有効利用することで地球温暖化問題の改善に貢献したいと、息長く取り組んでいます。

利用されない桑の枝や柑橘の皮を使って悩みを解決!

そのほか、現在、主に3つの研究に取り組んでいます。
 一つは、桑の木の皮に含まれる成分の分析と育毛・発毛効果の検証です。創価大学で育成した「創輝」という品種の桑があります。別の研究室で、この葉の有効成分に着目してお茶として飲む研究をしているのですが、その研究室では桑の木の枝は不要です。一方、桑白皮といって、桑の根の皮は、昔から育毛効果があるとして利用されてきました。しかし、桑白皮を採ると桑の木は枯れてしまいます。そこで、私たちは「創輝」の枝の樹皮の成分を抽出して用いた育毛剤・養毛剤を開発しようとしています。ネズミを用いた実験では、育毛効果は期待できそうなので、発毛効果の方も検証しているところです。
 育毛・発毛は主に男性の方に多い悩みですが、女性に多い悩みのダイエットに関する研究もしています。
 ベトナムでは、出産後の女性がもとの体型に戻す際に、ブオイという柑橘の皮を煮出して飲まれているという話を聞き、さまざまな柑橘の果皮の成分を分析しました。体重抑制に効果があるとされる成分には、代謝を高めるもの、食欲を減退させるものなどいろいろな種類がありますし、水溶性か脂溶性かといった特徴や味に与える影響も異なります。そこで、有効な成分を効率よく抽出し、成分が分解しない形で利用する方法を探っています。

特定外来生物の被害からソメイヨシノを守りたい

もう一つは、クビアカツヤカミキリという外来昆虫に関する研究です。2018年、環境省の「特定外来生物」にも指定されたカミキリムシで、サクラやアンズ、ウメ、モモなどを食害し、被害が各地で出ています。繁殖力が強く、ソメイヨシノの被害が大きいので、日本のサクラに壊滅的な被害を与えるのではないかとの危惧もあります。
 東京都でも確認されていますが、大学の近くではまだ見かけないので、かわりにいろいろな種類のカミキリムシを捕まえ、どんな植物から抽出した成分を嫌うのか、忌避実験しています。夜行性のカミキリムシもいますので、春の終わりから夏にかけて、夜な夜な懐中電灯と捕虫網を持って電灯に集まってくるカミキリムシを片っ端から捕まえたりしています。
 今のところ、青葉のイチョウの葉から抽出した成分が一番、効果が高いです。イチョウはギンナン拾いで手がかぶれることもあることから試してみました。
 どの研究も世の中に役に立つ形にしたいと考えていますし、有望なテーマが見つかれば積極的に取り組んでいます。

子ども時代の不思議が解明されるのが楽しくて 化学が好きに

 振り返ってみると、子どものころから、溶液や結晶の色が変わったり、花火の色が変わったりするのが不思議で、興味をもっていました。大人になって勉強するにつれてそのメカニズムがわかってくるのがとても楽しくて、大学は理学部の化学科に進みたいと思うようになりました。兄が理学部化学科に進学していたので、その影響もあったかもしれません。
 ただ、大学受験はうまくいかず、2浪してしまいました。本当に心が折れそうになったこともあったのですが、家族やいろいろな人に支えてもらい、化学科に進学することができました。入学するのに苦労した分、好きな勉強ができる喜びが大きくて、積極的に授業をとって勉強をしました。それは今でも非常に役立っています。

高校の教員志望から研究の道へ

大学3年生までは、高校の教員になろうと考えていました。兄が高校教員になり、兄の上にいる姉は小学校教員をしていて、教員という職業が身近だったのです。それに、姉が授業で使う教材をつくっているときに挿絵を書いたり、教材作りのアイディアをだしたりして手伝うのが面白く、教育に魅力を感じて自然と教員を目指していました。
 一方、大学2年生のころから、化学の先生にわからないことを質問に行くうちに、ほかの同級生が研究室に入るより早くその先生の研究室に出入りし、先輩が研究で使う化合物の原料合成などをさせてもらうようになりました。4年生で本格的に研究を始めると、研究も面白くて、大学院進学を視野に入れて勉強をし、博士課程まで進みました。今は教育と研究の両方ができる大学教員になることができ、本当に幸いだと思っています。

問題解決の役に立つような研究がしたい

 大学や大学院のときには、非常にホットな研究室にいて面白い研究をしていたのですが、世の中にどのように役に立つのか、すぐにはイメージできないような理学的な研究でした。そうした研究も非常に重要で意味があるのですが、私はだんだん、「世の中のこういう問題の解決に役に立つ」とはっきり言えるような研究がしたいと思うようになりました。そこで、創価大学に職を得てからはそのような観点で研究テーマを探しています。自分の研究が人の役に立ってくれたら非常にありがたいし、それを目指して頑張ることが、研究の大きなモチベーションになっています。
 また、大学では、「身の回りの化学」をテーマに、理工学部だけでなく全学生がとれる授業も担当しています。授業では、お茶や味、香り、健康食品、毒、お酒などを化学的な視点から扱っています。授業で得た知識を使って、学生が卒業後も安全で健康に生きていってほしいと願っています。 

理科をバランスよく勉強しておけば、大学の勉強の助けになる

創価大学の理工学部の面白いところは、「ケーススタディ」という授業があるところです。グループでテーマを決め、協力して調べて学期の終わりに発表するという内容で、答えのない問題を探っていきますので、卒業研究をする上でも大きな糧になると思います。
 今、進路を考えていて、理系に進みたいと思っている人は、物理、化学、生物は密接に関係しているので、どれも勉強しておいた方がいいですよ。受験に必要ないのであれば、受験が終わった後に自分のとらなかった科目を、友達に本を借りるなどして勉強しておくと、大学に入ってからの勉強の理解の助けになると思います。
 また、論文や科学に関する記事を英語で読む可能性もありますから、英語に対する苦手意識や嫌悪感は持たない方がいいですね。といっても、受験英語のような複雑な文法や構文は必要ありません。科学に関する単語さえ調べれば読めるような文体で書かれているので、とりあえず英語を嫌いにならず、できれば音楽や映画を通してでもいいので、英語に親しむ体験をしておけばいいと思います。

自分の疑問を追究できるような進路を選択してほしい

進路を決めるときには、自分が不思議だとか、なぜだろうと思ったことを追究できるような方面に進んでほしいと思います。せっかく興味を持ち、不思議に思ったのなら、それを大事に持ち続けて、明らかにしてほしいですね。
 また、自分が受験で苦労した経験から言うのですが、簡単にあきらめず、可能性を信じてほしい。あきらめれば、その時点で可能性はゼロになるのですから。粘り強くあきらめずにいれば、アドバイスをくれたり後押ししたりしてくれる人も出てきますから、やりたいことには決意を強く持って臨んでもらいたいと思います。

先生にとって研究とは? 漢字一文字で表すと?

自然環境にあるものから有用なものを探すのが研究室のテーマですから、「探」を選びました。探索、探検の「探」でもあります。これからも人の役に立つことは何かを探しながら、研究を深めたいと考えています。

▼プロフィール
共生創造理工学科 新津 隆士 准教授
1960年08月22日生まれ
1985 年 埼玉大学 (理学部) 卒業
1990 年 理学博士 東京大学

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