西山 道子 准教授

光ファイバーを使ったセンサーで 「こんなことを測りたい」を幅広く実現

“光ファイバーセンサー”って何?

 私は「ヘテロコア光ファイバーセンサー」の研究をしています。まずは用語の解説をしておきましょう。ご存知のように、光ファイバーはインターネット回線に使われています。

光によるデジタル信号を細い繊維の内部(コア)に閉じ込め、遠くまで高速で送っています。光ファイバーの素材は硬いイメージのあるガラスですが、髪の毛くらいの細さにすると、とても柔軟になります。

 

同時に、光ファイバーのコアを通る光は、温度や曲げ伸ばしなど外部の物理的な影響を受けて、位相や波長、光の強さなどが変化します。その光の変化を観察できるようにすれば、センサーとして使えるのです。

「ヘテロコア光ファイバー」とは、従来の光ファイバーをさらにセンサー向けに工夫したものです。自然環境の中で使えてコストも抑えられるので、応用範囲がとても広い技術です。

工夫次第で、ガスから人体の機能まで測れる!

 私がヘテロコア光ファイバーセンサーに出会ったのは、大学院に進学した時でした。

そこで先生に出されたお題が「知的構造体」です。光ファイバーを柔らかい構造物に埋め込んで、ちょうど人間の皮膚(構造物)と神経(光ファイバーセンサー)の役割をするスマートマテリアルを作ろうというのです。

 

そこで私は、皮膚が引っ張られたり押されたり、あるいは皮膚がついている手足が動けば、神経はその情報を即座に脳に送ります。それと似たような仕組みを作り、自動車の表面に貼り付けて車体変形をとらえるセンサーや、衣服に埋め込んで身体の動きを可視化するモーションキャプチャに活用する研究などをしました。

 

大学院の博士課程修了後も、光ファイバーセンサーの研究を発展させていきました。たとえば飛行機の翼やヘリコプターのブレードの表面に光ファイバーを貼り付ければ、そこにかかる力の変化やひずみかたをリアルタイムで測ることができます。

また、ガスや液体を検知するセンサーもできます。将来水素燃料が普及することを見越して、航空機の燃料漏れを検知する水素センサーを実際に開発中です。光ファイバーセンサーは電気を使わずスパークを起こしませんから、安全で新しいセンサーとして活用が期待されています。

 

  現在の 研究の軸のひとつは、ヘテロコア光ファイバーセンサーを環境中に埋め込んで、生活空間の情報を得ることです。

たとえば看護の現場ではどのようなセンサーが必要なのか、学内の看護学部の先生と意見交換し生体情報センサーの共同研究をしています。今手がけているのは光ファイバーで嚥下機能の低下を測ろうという研究です。

 

  もう一つは高温度領域でも機能するセンサーや水素のセンサーなど、センサー部分そのものの開発です。光ファイバーのまわりにフィルターとなる膜をつくってセンサー自体の感度を高める「多層膜」の研究もしています。

 

研究室には直径が125μm(マイクロメートル)の光ファイバーに、数十ナノメートルの金属の膜を均一に巻くことのできる装置があります。均一な膜ができるときれいなデータが取れる高感度のセンサーができます。その装置をうまく使って多様なセンサーを作ろうとしています。

「センサーはこうでなければならない」と型にはめる必要はありません。学生から「こういうセンサーはどうですか?」と予想していなかった意見が出て、柔軟な発想で取り組むと面白い結果が生まれます。学生にとっても身近な体験をもとに開発のヒントを得られたり、必要性を実感しやすい研究分野だと思います。

 

じつは私にはもともと「この分野、この研究でなければ」というこだわりは特にありませんでした。このテーマにたどり着くまで、自分の適性を探りながら長い模索を重ねてきたのです。

数学は好きで得意だけれど 「将来やりたいこと」は見えてこなかった

 

 幼いころから算数が好きで、小学校の算数から中高の数学も得意でした。父親が教育熱心で、小さい頃から勉強を教えてくれたおかげもあります。

 しかし、中学生の時に自営業をしていた父が倒れて、経済的にも苦しくなりました。高校進学後はひたすらアルバイトをして、家にお金を入れ、学費を貯めました。

 

姉と人姉妹ですが、父が「女性であっても学問を身につけるべき」という教育方針だったので大学には進学するつもりでした。でも、将来の夢を描くよりも「自分が親を支えていかなければ」という気持ちのほうが大きかったです。

 

そのため、高3で理系クラスから文系クラスに転じました。「安定した公務員になるには経済学部かな。数学も活かせるし」と思ったのです。でも文系クラスに入ってみると自分には合わないと感じ、「理系の学部を受験します」と数学の先生に言ったら「やっぱりね」と言われました。

 

独力で理系受験用に数学の勉強をし、自分のアルバイト料で予備校にも通いましたが、現役では不合格に。浪人期間は自分のペースを崩さないよう、一年間予備校と図書館とアルバイトの3点を往復して勉強しました。自分で時間を管理するのは楽しかったです。

大学は物理学科に進み 「鳥人間コンテスト」にも挑戦

 1年間の努力が実り、大学の物理学科に入学することができました。物理学科に進学したのは、予備校の授業のおかげです。世の中のさまざまな物理現象を数学と組み合わせて解く楽しさを教わって、高校物理と数学が私の中で初めて結びつきました。「物理ってこんなに面白いんだ!」ともっと深く勉強したくなったのです。

 

「物理を学ぶぞ!」と意気揚々と進学しますが、1、2年生の時は人力飛行機を作る「鳥人間コンテスト」のサークル活動にのめり込んでしまいました(笑)。みんなで力を合わせて飛行機を飛ばせることができた時の感動は大きく、ここで「ものづくりの面白さ」に目覚めました。

 

私はプロペラの作製担当だったのですが、最後の工程で表面を固める接着剤の分量をうっかり間違えてしまいました。プロペラは重くなるし、表面はボコボコになるしで、ものすごく落ち込みました。しかし、一からやり直す時間の余裕はなく、毎日朝早く登校してはプロペラにやすりをかけて修正しました。

 

ある日先輩から「すごくきれいなプロペラになったね」とねぎらわれ、改めて全体を見直したら、とてもよくなっていました。それまでは目の前の凹凸だけ見て、ひたすらやすりをかけていたのでわからなかったのです。あの時の達成感は忘れられませんし、失敗した時のリカバリーの仕方も学べました。

 

「光」を使ったプロジェクトが縁で 就職して光学設計の世界に触れる

 4年生の時には所属する研究室を選ばないといけないのですが、素粒子物理の授業が面白かったので、その先生の研究室に入りました。そこは「重力波検出プロジェクト」に携わっている研究室の一つでした。

アインシュタインが一般相対性理論でその存在を予言した重力波は、超新星爆発などの大きな天体現象によって発生し、光速で時空を伝わって地球にも届きます。

 

重力波は光の干渉計(マイケルソン干渉計)でとらえるのが基本です。鏡で反射させて戻ってきた光を重ねて、その干渉を測ることで、わずかな空間のゆがみを感知するのです。私は研究室の先生に「国立天文台に光干渉計実験のお手伝いに行き、実験の一部を学んで卒業研究にしたらどうか」と言われました。

 

光の干渉を正確に測るためには鏡の振動を極力抑えなければなりません。そこで私は鏡のある特定の振動を遮断するダンピング技術を研究しました。素粒子学というより構造力学の研究になります。もちろんそれと一緒に光の干渉計の勉強もしました。

 

4年生になると、卒業研究を進める傍ら、進学か、就職かも決めなくてはいけません。実は2年の時に父が亡くなり、経済的に大学院への進学は難しかったのと、ものづくりが面白くなっていたので、大学推薦枠でニコンに入社しました。ニコンでは光学設計の部署に配属されました。4年生の時の光干渉計の経験を認めていただいたのかもしれません。

 

ニコンでは、「レンズ設計の神様」に弟子入りする研修も受けられるというとても恵まれた環境で、光学設計についていろいろ学ぶことができました。

 

3年間会社に勤め、 念願だった大学院に再挑戦

 それでもやはり、大学院に進学して研究したいという気持ちが抑えられませんでした。大学院のホームページを見て比較検討した結果、オランダの工科大学での研究経験もありレーザーや光ファイバーセンサーの研究をしている創価大の渡辺一弘先生の研究室に志望を決めました。

 

 今振り返ってみると、大学院に進みたいという気持ちの中には、ノーベル賞をとれるような優れた研究者になりたいという気持ちと、教員になって世界の平和と豊かさに貢献する人材を育てたいという夢があったのだと思います。

 

   ですから、学生と一緒に研究し、学生とともに私自身も成長するのが楽しみです。研究を通じて学生たちが成長することは、研究そのものと同じくらい価値があると考えています。

 

研究も進路の選択も 大事なのは実際にやってみること

    高校生のみなさんは、進学に関して悩まれることが多いと思います。私もそうでしたが、今とくにやりたいことがなくてかまいません。何に対しても「とにかくやってみよう!」という気持ちを持っている人なら、ぜひ私の研究室に来てほしいです。

 

研究には周辺研究の調査や、理論に基づいた数値計算などさまざまな段階がありますが、私がいちばん楽しいのは実験です。私の研究室では実験のやり方を一から教えます。実際に何かを始めてみると、その選択肢がだんだん具体性を帯びて自信を持てるようになります。

 

センサーを作って測定してみて、その結果から「こういうことが起こっているのでは?」と学生たちと議論するのはとても面白いです。

「何でこうなったんだろう…」と苦しい思いをすることも多いですが、予想よりもずっとすごい結果が出ることもあります。どちらになるかは実験してみてのお楽しみです。

 もし不足している部分に気づいたら、あとから補っていけばいいのです。そもそも研究や実験とはそういうものなのですから。一緒にやってみて、手と想像力を働かせながら修正していきましょう。

先生にとって研究とは? 漢字一文字で表すと?

「柔」
先入観を持って決めつけたりせず、多角的に物事を見ることを大事にしています。もちろん研究もですが、まわりの人たちに対しても先入観を持たず柔軟に、可能性を信じていきたいです。

(プロフィール)

西山 道子准教授

 

20003月 お茶の水女子大学 理学部物理学科 卒業
20004月〜20032月 株式会社ニコン 光学設計業務に従事 
20053月 創価大学大学院工学研究科情報システム学専攻博士後期課程修了
20083月 創価大学大学院工学研究科情報システム学専攻博士後期課程修了
20084月〜20113月 創価大学工学部 助教
20114月〜20143月 宇宙航空研究開発機構 宇宙航空プロジェクト研究員
20144月〜 創価大学工学部情報システム工学科 講師
20154月〜 創価大学理工学部共生想像理工学科 講師
20194月〜 創価大学理工学部共生想像理工学科 准教授

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