丹木の歳時記2011　如月　その一

立春を過ぎ、キャンパスを吹き渡る風も心なしか緩んできたようです。三寒四温と言う通り、寒さと暖かさが行きつ戻りつしながら一歩ずつ春が歩みを進めてくる頃です。

「平安の庭」では、ロウバイがほのかな香りを漂わせています。この上品な香りを味わえるのは、この季節だけの贅沢です。

雑木林の枯れ葉の中で点々と黄色い灯りが点るように、咲き始めた花を見つけました。

花の少ない時期に咲き、縁起の良い名前からも珍重される福寿草です。見ているだけで暖かな気持ちになります。

東洋哲学研究所の側では、満作（マンサク）がほころんでいます。枝には昨年の枯葉がついたまま。春にまず咲くので「マンサク」と呼ばれるようになったそうです。

ロウバイに福寿草、満作やタンポポなど早春に咲く花に黄色系のものが多いのは、目立つ色で虫たちを引き寄せるためなのでしょうか。生物が進化する過程で、植物と昆虫との共生関係によって生み出された戦略の一つなのかもしれません。

様々な野鳥が羽を休めにやってくる「文学の池」。地面を掘って餌を探したり、水浴びをした後に毛繕いをしたりしていたのはツグミです。

美しい羽が特徴のジョウビタキ（雄）です。黒い翼の中に白斑があるのが「紋付き」のように見えるので、紋付き鳥（モンツキドリ）ともいいます。あまり人を恐れないためバカビタキという不名誉な名前で呼ばれることもあります。

池田記念講堂の側では水仙が咲き始め、これで「雪中四友」と称される梅、ロウバイ、山茶花、水仙の四種が咲きそろいました。

辺り一面に漂う香りによって、遠くからでもその存在が分かる梅の花。古今和歌集には、「春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる」と詠まれています。春の夜の闇にも隠れることのない香を胸一杯に吸い込むと、体中に早春の息吹がみなぎります。