丹木の歳時記2011　長月　その四

最近の東京の日の入りは午後５時半頃。日が短くなってきました。「秋の日は釣瓶落とし」と言っても、最近の学生にはあまりピンとこないかもしれません。そもそも釣瓶（つるべ）自体を見たことがないという人も多いでしょう。

【蔓穂】釣瓶（つるべ）と似た名前の蔓穂（ツルボ）の地下茎は有毒。食糧難の時代には、毒抜きして非常食として食べた時代もあったようです。

【釣鐘人参】釣瓶（つるべ）ならぬ釣鐘（ツリガネ）人参はキキョウ科。釣鐘状の花と朝鮮人参に似た根を持つことからついた名前です。ちなみに若芽は山菜のトトキとして知られています。

【現の証拠】現の証拠（ゲンノショウコ）はドクダミなどと並ぶ有名な薬草。茎や葉を煎じて飲むと不老長寿の妙薬に、とまでは言えませんが、広辞苑には「下痢止め・健胃に有効」とあります。

【葛】秋の七草の一つの葛（クズ）はマメ科。根は生薬の葛根（かつこん）として解熱作用があり、根から出来る葛粉は葛餅の原料にもなります。

【白萩】本学の女子寮の名前（白萩寮）にもなっている白萩は、葛と同様にマメ科。秋風に揺れる様は、清楚な女子学生のようです。

【薬師草】薬師草（ヤクシソウ）、黄花秋桜（キバナコスモス）はどちらもキク科。鮮やかな黄色が目を引きます。

【黄花秋桜】薬師草（ヤクシソウ）、黄花秋桜（キバナコスモス）はどちらもキク科。鮮やかな黄色が目を引きます。

【山路杜鵑草】美しい形をした山路杜鵑草（ヤマジノホトトギス）は、何とも風情のある名前です。

【水引】水引（ミズヒキ）は、進物用の包み紙を結ぶ糸に似ていることからついた名前です。

秋の草花の中には薬草や食用に用いられるなど、人々の生活のなかに溶け込んでいるものが多いことに気づかされます。