丹木の歳時記2011　霜月　その一

今年も余すところ２ヶ月となり、キャンパスの秋景色も深まっています。

本学に近い滝山街道では秋桜（コスモス）が揺れています。

ここまで熟すと石榴（ザクロ）も食べ頃といったところでしょうか。

切り株からは楢茸（ナラタケ）が発生しています。枯れ木や倒木はこうした菌類（キノコ）によって分解され、森の養分へと還元されていきますが、ナラタケ菌は時に生きている木さえ枯らしてしまう樹病菌でもあります。

何かの実を口にくわえているのはヤマガラ。冬に備えて木の実を蓄えておく習性があります。

黒っぽい皮に覆われた不気味な実を見つけました。見た目からは想像もできないような芳しい香りが漂ってきます。

その正体はカヤの実。合掌造りの茅（カヤ）葺き屋根に使われる茅はスゲやススキの総称。こちらのカヤは樹木の榧（カヤ）です。

榧は雌雄異株なので本学の榧は雌株。榧から作られた将棋盤や碁盤は最高級品として知られ、中には数百万円するものも。一方、実から取った油は最高級の食用油になります。実はあく抜きしないと食べられませんが、縄文時代から食されてきたようです。

これほど味わい深い木がさりげなく生えているのもキャンパスの魅力。榧の根元には、落ちた種から育った苗木が何本も出ています。

前回、「キャンパスにある３０種類の食べられる実はほとんどを口にした」と書きましたが、榧の実は未食。これから１週間かけてあく抜きし、縄文の味を確かめることにしてみましょう。