丹木の歳時記2009卯月 その七

青空を気持ちよさそうに飛ぶツバメの姿を見かけました。 この時期のキャンパスでは、多くの花々が美しさを競い合っています。 ひっそりと佇んでいる花、色鮮やかな花、香りのよい花と、それぞれが自分らしく咲いています。

ある時、にわか雨に遭った道灌が簑を借りようと農家に立ち寄ったところ、出てきたその家の娘は一輪の山吹を差し出します。簑を借りるつもりが、花しか出てこなかったことに内心腹を立てた道灌は、この話を家臣にしたところ、 「七重八重 花は咲けども 山吹の 実の一つだに なきぞ悲しき」 という古(いにしえ)の歌に掛けて(「実の」と「簑」を掛けて)、簑一つない貧しさを奥ゆかしく伝えたのだと教えられます。 歌道に暗いことを恥じた道灌は、以後、歌の道に励み、立派な歌人になったと伝えられています。 玄宗皇帝や楊貴妃、鎌倉武士や室町の武将に思いを馳せながら花々を眺めるひとときは、ゆっくりと流れる時間を感じることができます。