丹木の歳時記2013弥生　その一

5日は二十四節気の啓蟄（けいちつ）。冬ごもりしていた虫や蛙が這い出てくる頃です。

地面からは蕗の薹（ふきのとう）も顔を出しています。カラリと揚げて天ぷらにすると、独特の苦みと香りが口一杯に広がります。

本学へと続く小道の両側で梅が見頃を迎えています。

その道の脇で、タンポポを見つけました。

大犬のフグリを星のまたたきに例えた高浜虚子は、「犬ふぐり　星のまたたく　如くなり」と詠みました。星のまたたきといえば、かつて見たゴッホの絵「ローヌ川の星月夜」を思い出します。

「平安の庭」では、蝋梅（ロウバイ）が開花。下向きに咲く花からは上品な香りが漂います。

木の幹で何やら引っ張っているのは、精巧な巣を作る柄長（えなが）です。春は子育ての季節。そろそろ巣の材料集めをしているのでしょう。

しきりに鳴いていたのは、尉鶲（じょうびたき）の雌。暖かくなると高地へ戻ります。まもなく旅立ちを迎えることを知らせてくれていたのかもしれません。

ところで最近、高校生から本欄に嬉しい声が寄せられました。

写真部に所属する彼は、本欄の写真を手本にしてくれているとのこと。それほどの写真かどうかは別にして、作者冥利につきます。

本学を志す彼は、本欄を見ると “やる気スイッチ”が入るとも。冬の寒さに耐えた木蓮（モクレン）の蕾がやがて美しい花となるように、受験の苦闘を乗り越え、晴れの栄冠を手にされる日を待っています。