創価大学ニュース「SUN」95号 2017 Autumn

17 社会学、歴史学、心理学、哲学の観点から演劇作品に込められたメッセージを読み解く 「演劇を通して人間力を高め、社会に役立つ人間になってほしい」 “I want our students to develop their virtues through theater, and contribute to the world we live in.” 演劇作品を多角的に分析することで、 本当の面白さが浮かび上がる  大野教授は、文学部で「演劇論」や「演劇入門」の授 業を担当しています。 「演劇にはいろいろなメッセージが入っていて、私 たちの生き方や生活とも関連があります。例えば、紀 元前に生まれたギリシア悲劇が今も上演され続けて いるのは、人間の本質が描かれているからです。台詞 の分析や、どのように批評的に見るかということを教 えながら、演劇の面白さを伝えたいと思っています」  大野教授の一番の研究テーマは、20世紀のアメリ カの代表的劇作家であるユージン・オニールです。 「演劇作品を理解するには、時代背景を社会学的・ 歴史学的に分析するなど、様々な角度からの分析が 必要です。オニールは、フロイトやユングといった心 理学者や、ニーチェやショーペンハウアーといった哲 学者の影響を受けて心理劇などの作品を書いてい ますので、社会学や歴史学、心理学、哲学をふまえて オニール劇を分析しています」 プロの俳優を招いて行う特別授業は、 毎回学生たちから大好評  理論的に演劇を学ぶだけでは、学生も物足りない のではないか?そう考えた大野教授は理論と実践の 融合を目指し、数年前から舞台俳優や元タカラジェ ンヌを招いて特別授業を行っています。 「俳優さんたちには、台本の読み方やご自身の演劇 論などを話していただき、台詞の朗読や演技をしても らいますが、台詞を朗読するだけで、その場の空気が 一変し、学生たちがたちまち引き込まれていくのが分 かります。最後は、何人かの学生と俳優さんが一緒に 劇の一場面を即興で演じるという、まさにアクティブ ラーニングといえる授業となっています」  演劇の実践という点では、自分で演出したい、脚本 を書きたい、演じたいという学生たちが集まって劇団 も結成されました。劇団名は「劇衆オの組」。 「オの組」は、「大野久美」教授の名前が由 来です。創大生だけでなく、他大学の学生 たちも参加していて、今年3月に旗揚げ公 演、9月にも公演を果たしています。 演劇から学んだことは社会で役立つ。 その信念で学生を鍛える大野ゼミ  大野ゼミでは、オニールの作品をまず 原書で精読し、日本語に訳します。台詞を 心理学的、哲学的なアプローチから深く読 み込み、分析結果を発表します。英語力、 心理学・哲学の知識、分析力、プレゼン能 力などが必要ですが、真剣に取り組むこと でそれらが身に付いていくといいます。 「ゼミで鍛えられたことは、就活や社会に 出てからも役に立ちます。例えば、心理劇 の勉強は顧客の気持ちを読み取るのに役 立つことでしょう。卒業生たちはプレゼン力 やコミュニケーション力を活かし社会で活 躍しています。演劇を学んで人間力を高め た学生を社会の様々な分野に輩出してい きたい。それが私の強い思いです」  大野教授の思いどおり、卒業生たちは 航空会社や証券会社、大手建設会社など の一般企業から国家公務員、教員まで、多 彩な分野で活躍しています。 [ ] FILE 14 文学部 人間学科 大野久美 教授 大阪府出身。1979年帝塚山学院大学文学部英文学科 卒業。1986年大谷女子大学大学院文学研究科英語学 英米文学科博士後期課程満期退学。2007年博士(文 学)。創価大学文学部講師、助教授を経て現職。アメリカを 代表する劇作家ユージン・オニールの研究をはじめ、「20世 紀アメリカ演劇の研究」、「演劇理論」を研究テーマとしてい る。主要著作は『オニール劇の真髄』(大阪教育図書)。 「志を高く、つねに前向きに生きる」がモットーである。 大野 久美 Profile Kumi Ohno ゼミの卒業生たちから贈られた手作りの舞 台装置模型。オニールの代表作であり、日 本でもたびたび上演されている『楡の木陰 の欲望』の舞台装置を再現している。 『楡の木陰の欲望』の原書Eugene O'Neill:          。ゼミで はこれを読み、日本語に訳して台詞を分析 する。下は模型の元となった舞台装置の スケッチ。 左:著作である『オニール劇の真髄』(大阪 教育図書)。20世紀のアメリカ演劇界を リードしたオニールの作品を多角的に分 析。 右:共著『二十一世紀への飛翔』 Desire Under the Elms

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