自立学習入門講座63
―要約の技法―
次にノートを取ることを考えてみましょう。少しでも余計な部分をそぎ落としたくなるはずです。原文では「者」を使って説明していますが、明らかに「教師/生徒」のことです。「揺らぐことのない地位」などの表現は説明のための枝葉であると見てよいでしょう。このように分析していくと、文章の骨組みが明確になってきます。場合によっては、簡略化した図にまとめるだけでも理解の助けになるはずです。この図を参考にしながら、要約文を書いてみてください。先ほどとどう違ってくるでしょうか。【例題B】
一番難しいのが引用のために要約する場合です。なぜなら、そのまま引用できることはほとんどないからです。自分が書こうとしている論旨に合うように書き換えなければなりません。
たとえば、フレイレとはどのような説を唱えた学者なのかということを述べる場合を考えてみましょう。「ブラジルの教育学者フレイレは」で始まる文であれば、どのように続けますか。
例)ブラジルの教育学者フレイレは、教師が生徒に知識を伝えることを中心とする従来の指導法を銀行型教育と呼び、知る者と知らない者の関係を固定し、探求のプロセスとしての教育を否定するものだと批判した。
「銀行型教育」の内容の説明であれば、どうなるでしょうか。次の文に続ける文を考えてみてください。
【例題C-1】フレイレが「銀行型教育」と呼んだものは、どのような教育を指すのであろうか。・・・
「教育はどうあるべきか」という内容について述べるときは、どのような形で引用しますか。
【例題C-2】創価教育学の創始者である牧口常三郎は、教師が生徒に一方的に知識伝授する教育法を厳しく批判したことで知られるが、「解放の教育学」を提唱したフレイレも・・・
ここまで文章の一部を要約する技法について見てきましたが、場合によってはさらに長い範囲をまとめなければならないこともあります。それはこれまでとはやや目的が異なってきます。文章の一部を要約するのは、ある事柄の理解が中心になります。しかし、節や章の要約となると、それは文章の設計図、アウトラインを把握すること、すなわち筆者が執筆するときに用いた論理構造を知ることを意味します。言い換えれば、文章構造を把握しない限り、節や章の要約はできないということです。
一つの文は一本の糸のようなものです。文章は文を組み合わせて模様を描き出したものと言えます。要約はその模様を浮かび上がらせる作業です。その時、模様が別のものになってしまっては意味がありません。元の模様をできるだけそのまま写し取らなければなりません。そのためには俯瞰(ふかん)的な読み方、トップダウン的な読み方が欠かせません。高所から見下ろすようなつもりで文章を読み解いていくことです。そのときに最も役立つのは見出しとその配置です。見出しは道路標識のようなものです。話がどの方向に展開するのかを示しています。もうひとつは接続語句であり、それぞれの文やパラグラフの位置関係がわかります。
文章を構成する基本となるのがパラグラフです。それぞれのパラグラフにはトピック・センテンス(話題文)とサポート・センテンス(補足文)があります。文章は複数のパラグラフを組み合わせて作り上げていきます。トピック・センテンスがどうつながっているのかを考えましょう。
接続の型はいろいろありますが、日本では結論を最後に書くのが一般的ですが、冒頭で結論を示して、その後で理由を説明する人もいます。前者を尾括型、後者を頭括型と呼びます。最初に大まかな結論を示し、最後にそれを補強しながら再確認する文章は双括型になります。また、それぞれのパラグラフには役割があります。例示や換言などの部分は文章構造に大きな影響を与えることはありません。気をつけたいのは、根拠、付加・対比、転換、帰結などです。主張するときには根拠を示します。「なぜなら」「というのは」などの言葉が使われます。付加や対比のときには、「しかも」「一方」「それに対して」などの語が出てきます。帰結は「したがって」「ゆえに」などで示します。
詳細をここで示すことはできませんが、節や章の論理構造に注意して読むことで、適切な要約ができるようになります。
【A】「銀行型教育」の概念では、知識はもっている者から、もっていない者へ与えられるものであり、抑圧のイデオロギーを広める基盤になっている。他人のうちに無知を見出し、疎外することで教師は揺らぐことのない地位を維持する。このような教師と生徒の役割の固定は教育が「探求するプロセス」であることを否定する。
【B】「銀行型教育」は知識をもっている教師と、もっていない生徒が固定されることを意味し、それは「探求するプロセス」としての教育を否定するものである。
【C-1】それは、知識をもっている教師が持っていない生徒に与える教育のことであり、それ自体が常に他人のうちに無知を見出し、疎外する抑圧のイデオロギーの基盤となっている。
【C-2】従来の教育を「銀行型教育」と呼び、抑圧のイデオロギーの基盤となっていることを明らかにし、探求するプロセスを重視するものでなければならないと主張している。
+.――゜+.――゜+.――゜
新しく学光ポータル「学修支援だより」が
開設されました!
皆様の感想をお寄せください。
Email:tk-gakkou@soka.ac.jp
+.――゜+.――゜+.――゜