学 問 探 訪 ロバート・シンクレア教授 【 国際教養学部 】 哲学は世界を理解するために必要な考察力を養う学問 哲学とアメリカのプラグマティズムを専 門とするロバート・シンクレア教授。そも そもプラグマティズムとはどういう学問な のでしょう。 「プラグマティズムとは、19世紀後半の 科学における革新―例えばダーウィンの 進化論などを通して、人間とはどういう生 き物か、自然界とはどういうものか、また、 そういった革新が我々の道徳観や社会、 知識、思考などにどう影響するかを考察す る哲学的な試みです」 シンクレア教授はカナダのサイモンフ レーザー大学で、W.V. クワインをはじめと する哲学者たちについての研究で博士号を 取得。哲学と科学、両方への関心を追求 する中で、クワインに代表されるような、 理論的で抽象的な哲学者のための哲学だ けでなく、より現実に近いところで展開さ れるプラグマティズムにも興味を持つよう になり、卒業後に独学で研究しはじめまし た。アメリカのプラグマティズムを代表す る思想家ジョン・デューイについては現在 も研究を続けています。ただ、アメリカの プラグマティズムというと日本ではあまり 馴染みのない学問。日本での教育活動に おいて困難はないのでしょうか。 「プラグマティズムは、科学、教育、宗教、 政治、情報、道徳などにおけるさまざまな 問題の解決に直結するため、学生たちも 学ぶモチベーションを持ちやすいようで す」とシンクレア教授。理解を深めるには、 できるだけたくさんの例を示すことが必要 だと言います。 「例えば、伝統と最新の科学との対立や、 価値観の変化や相違などの社会における葛 藤です。より具体的な例を挙げると、日本 におけるジェンダーの問題があります。こ れまでの日本の発展は伝統的な価値観の 上に成り立ってきたものですが、これから 先、新しい価値観をどう受け入れていくの かというように、学生たちが生まれ育った 社会に引き寄せて考察させるわけです」 このように、どの時代、どの場所でも、 当てはめて検証できるのがこの学問の特徴 だとシンクレア教授は言います。 「ここで重要なのは、ある特定の理論で、 ある文化の変容を説明しきれるかどうかで はありません。そもそも自分の考えを整理 File 23 創大の すること自体が、哲学的な作業なのです。 私の役割は、現代社会について考察する にあたって、ビジネスや経済学を学ぶので はなく、哲学を学ぶことの意義は何なのか を伝えること。そして、現代の社会に即し た形で哲学の妥当性をよりわかりやすく提 示し、世界が直面する問題を解決する糸 口にたどり着きやすくすることです。そこ から先を考え、行動を起こすのは学生自身。 よりよく行動するには、よりよく考えること が必要です」 シンクレア教授はクワインとデューイに 関する論文執筆をさらに進めるとともに、 宗教や政治哲学などについての考察を深 め、私たちに世界市民に必要な考える力を 与えてくれることでしょう。 13 [ テーマ ] 実 用 主 義 プラグマティズム ROBERT SINCLAIR ◀シンクレア教授の 最近の著書。 1980年代に実施された W.V.クワインによる 講義の内容を初めて 英語で出版した。
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