創価大学ニュース「SUN」107号 2020 Autumn
15 新型コロナウイルス感染症から多くの命を守り、日常を取り戻す ために、世界中の研究機関が治療薬やワクチンの研究開発を進め ています。しかし、私たちの手元に届くには、もう少し時間がかかり そうです。 将来、こうした薬品開発のスピードと精度を格段にアップさせる であろう世界的なプロジェクトをリードしているのが、理工学部の 木下フローラ聖子教授です。 「生体を構成する要素として、これまで『遺伝子』や『たんぱく質』が 注目されてきましたが、私たちは『糖鎖』という第3の鎖に着目し、研 究を進めています。糖鎖はすべての細胞の表面にあり、ウイルスや微 生物、ホルモンなどが糖鎖を介して、生体にさまざまな影響を与え 生物、化学、環境まで、幅広い研究の未来を拓く 世界初の糖鎖科学ポータル『GlyCosmos』を開発。 ています。たとえば、インフルエンザウイルスは糖鎖を介して私たちの 体に感染することがわかっており、タミフルなどの多くの治療薬はイ ンフルエンザウイルスが感染に活用する糖鎖を模倣することで、ウイ ルスの細胞への侵入や体内での放出をできないようにしています」 生命活動に大きな影響を与える糖鎖がこれまで注目されなかっ たのは、『遺伝子』や『たんぱく質』に比べ、その構造がとても複雑だか ら。ゲノムなら1日でできる分析も、糖鎖では何カ月もかかるそうです。 「ゲノム研究の20年前の状況と同じと言えるでしょう。さらに大き な課題は、まだ研究者が少なく、各大学で糖鎖を学ぶ環境が整っ ていないことです。ウイルス治療の研究には糖鎖が重要だとわかっ ていたのですが、複雑すぎて研究のための情報整備が間に合って いなかったのです」 そうした状況を解決するために木下教授が開発したのが、世界 初の糖鎖科学ポータル「GlyCosmos」です。 「これまでも糖鎖のデータベースはあったのですが、世界各国の 研究機関が独自に開発していたため、利用者が必要な情報を探す ことは困難でした。そこで『GlyCosmos』は、これまで糖鎖科学研 究者により開発されてきた国内外のデータベースを統合。そのうえ でユーザーに使いやすいウェブインターフェースを通して無償で利 用可能にしました。 さらに糖鎖に関連する『遺伝子』『たんぱく質』『疾患』『ウイルス・ 病原体』など、多くの情報が一つのポータルから検索・閲覧できる ようにし、医療をはじめ、農業やエネルギーといった多彩な分野の 研究に貢献できるデータベースを目指しています。糖鎖を活用した 医療を実現するためには、まだまだ研究が足りていません。 『GlyCosmos』を、世界中で糖鎖の研究がさらに活発化するため の礎にしていきたいですね」 木下フローラ聖子 教授 理工学部 共生創造理工学科 細胞A 細胞B 細胞C ◀ 糖鎖は組み合わせの種類が 多く、 立体形であり複雑。 そのため、 文字情報に置き換 えることが難しく、データ ベース化も困難だった ◀ GlyCosmos では、 人体のイ ラストをクリックすると リックした臓器にある糖鎖 表示される。 どういう糖鎖がどの臓器にあ るかがわかることで、 病気の 治療や薬の開発に役立つ 木下教授の研究内容について、本学ホームページで 動画によるわかりやすい解説をご用意しています。 3分ちょっとで分かる!「世界初 糖鎖ポータルサイト開発」 https://www.soka.ac.jp/_tag/2020/07/4969/ Power of Sci パワー・オブ・サイエンス グライ コスモス
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