創価大学ニュース「SUN」110号 2021 Summer

学 問 探 訪 ウルヴ・ハンセン 准教授 【 法学部 】 他国の考えに直に触れる「国際交流」の機会が、 人々が国、人種、言語・文化の壁を越えて手を取り合うための鍵となる。 新型コロナウイルス感染症により、世 界的に海外との往来が大きく規制されて1 年以上となります。まだまだ困難な状況 が続くなかで、世界市民として世界各国の 人たちと手を取り合うためには、新しい心 構えが必要になってきました。そこで今回 は、日本を取り巻く東アジアの国々の国 際関係を研究されているウルヴ・ハンセン 准教授に国際交流の最新事情を解説して いただきます。 ちょうど、このSUN110号の発刊は東 京オリンピック2020の開幕のころ。本来 であれば多くの国から観客が訪れ、日本 にいながら異文化を体験できる大きな チャンスでした。その機会が失われたこと を、ハンセン准教授はとても残念なことだ と語ります。 「今回のパンデミックが明らかにしたの は、世界の不平等だと思います。『ウイル スが与える影響は平等だ』という言葉も当 初は聞かれましたが、徐々に、高所得者よ りも低所得者へのインパクトが大きいこと が明らかになってきました。例えばエッセ ンシャルワーカーとして感染リスクを抱え て働きながらも、景気の悪化により賃金 が減ったという方もいらっしゃいます。そ の一方で、一部の富裕層は投資によって 財を増やすという状況が起こっています。 そうした不平等によって生まれた不満と 怒りは、現在、ポピュリズムの政治体制に 利用されています。ポピュリズムとは、大 衆の意見に迎合し、聞こえのいい発言で 権力を強める政治体制です。一番わかり やすい例として、トランプ前米大統領が 掲げた『アメリカファースト』の政治が挙げ られます。現状を変えようというポピュリ ズムの政治が必ずしも悪いとは限らない のですが、ポピュリズムの持つ大きな問題 は、複雑な問題に対して、特定の人や国を 悪者にし、簡単すぎる解決方法を掲げる 傾向がある点です」 コロナ禍のなか、世界各国で人種差別 や貧富格差に抗議するデモが頻発してい ますが、この根底にあるのが、敵対する ターゲットを安易に明確化するポピュリズ ムの政治の影響です。そうしたなかで私 たちが、国籍を越え、人種や言語・文化の 壁を越え、世界の利益のために手を取り 合う鍵となるのが、他国の考えに直に触れ る「国際交流」の機会にあるとハンセン准 教授は提言します。 「留学を経験した多くの学生は『、自分と 違う考え方の人に接して、こういう考え方 もあるのだと視野が広がった』と言います File 27 創大の が、この理解がとても大事なのです。海外 に行くと、自分の国の政治や政策が他国 の人々の生活にどんな影響を与えている のかが見えてきます。すると自国の政治の よい点や悪い点、世界平和のためにどん な考えが必要かといったことに、思いを巡 らすことができるようになります。 私は、日本と北朝鮮の国際関係を研究 しているのですが、これも同様のことで す。拉致問題や安全保障問題が解決しな い一因には、両国の市民間での交流が少 ないため、普通の北朝鮮人がどう暮らし ているのかをイメージできない点にある と感じています。 東京オリンピックに期待されていた国 際交流の機会を失ったことは、とても残 念です。しかし、本学には『留学』という国 際交流のチャンスがあります。コロナ禍が 収束したら、多くの学生にチャレンジして ほしいと思います。そして、政治や国際関 係に興味を持つ学生が、この日本にもっ と増えることが必要だと感じていま す」 13 [ テーマ ] アフターコロナで高まる、 国際交流の重要性 ULV HANSSEN ◀ 2018年に 北朝鮮を訪れた 際の一枚

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