学 問 探 訪 川井 秀樹教授 【 理工学部 共生創造理工学科 】 脳治療の新しい可能性発見の原動力は、 研究を通して人類に貢献しようとする志。 コロナ禍に苦しんだこの2年は、ワクチ ンや治療薬についての話題が盛んに報じ られ、生命科学の発展が社会の礎になっ ているという事実を、改めて実感した期 間でした。それは同時に、多くの若者の 胸に「生命科学を究めて社会を支えた い」という志を育む時間にもなった可能 性があるのではないでしょうか。 創価大学の理工学部では、そうした志 に応える最先端の生命科学が研究され ています。なかでも機能神経生物学研究 室が発見した「大脳皮質のオリゴデンド ロサイト前駆細胞の盲目による変化」は、 世界中の研究者が閲覧する権威ある研 究誌『PLOS ONE』に論文が掲載され、 注目を集める研究です。 今回の学問探訪では、機能神経生物 学研究室を指導する理工学部の川井秀 樹教授に、その研究内容を解説していた だくとともに、“創価大学の研究力”につい てお話を聞きました。 「大脳皮質は視覚や聴覚などの感覚情 報を処理し、知覚や認知を担う脳部位で す。感覚情報がある期間で変化すると、 それに応じて大脳も変化します。例えば、 ある時期に片目を遮蔽すると、開いてい るほうの目の情報を処理する神経細胞が 増え、遮蔽したほうの目に応答する神経 細胞が減少することがわかっています。 こうした大脳皮質の特性に関する基礎 研究は、脳のさまざまな病気の理解と治 療法の開発にも寄与すると考えています。 我々が注目しているオリゴデンドロサイ ト前駆細胞(OPC)の神経活動の解明 は、神経細胞死をもたらす脳卒中や神経 変性疾患であるアルツハイマー病などの 再生医療の可能性を秘めているのです」 生命科学以外にも、環境、機械工学、 情報システムといった多岐にわたる分野 で世界をリードする研究が理工学部で行 われています。なぜ、こういった先進的な 研究が盛んなのでしょうか。川井教授は、 研究費などの大学からのサポートが手厚 いこととともに、理由の一つとして「人類 に貢献したいと思うモチベーション」をあ げます。 「研究とは、それが病気のことにせよ、根 本的な原理にせよ、人類共通の原理を発 見し、発表することです。言ってみれば、 File 29 創大の 科学の研究に取り組むことそのものが『世 界市民教育』になります。どんな研究者も 根本的には人類に貢献したいという思い を持っています。本学ではそうしたモチ ベーションが一層高いことが、研究力の高 さにつながっているのではないでしょう か。私は、科学をもっと開かれた学問にし ていかなければならないと思っています。 私たちの発見は、研究者のみならず、可能 であれば一般の方々にも理解できるメッ セージとして広めていくことが必要です」 今回、機能神経生物学研究室が論文を 発表した『PLOS ONE』誌は、研究誌のオ ンライン化の先駆け的な役割を担ってい ます。こうしたオンライン環境を活用し、 最先端の研究成果に誰もが自由にアクセ スできるようにすることが、川井教授の考 える「科学者の人類への貢献」の一つです。 「学生には、興味を深掘りしてほしいと思 います。自分の興味に真摯に向き合って 取り組む勉強は、試験のための勉強では なく、自分、そして人類の未来につながる 学びになります。私の場合、それが脳でし た。研究を通して、教科書を書き換えるよ うな、脳の働きに関する新たな発見をし て、人類の知見や教育に貢献するととも に、脳の病で困っている人々に、一日も早 く治療法を提供したいと考えています」 [ テーマ ] 脳科学と 世界市民教育 Hideki Kawai 15 大脳の形成・機能・修復 学習する脳 発達する脳 病む脳 認知機能の解明に向けて 脳の形成と進化の理解に向けて 脳の異常の修復に向けて
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