学問 探訪 片岡 優華 講師 【 看護学部 】 “自分らしい育児”に気づくための「尺度開発」の研究で、 育児本来の楽しさを多くの親が享受できる社会へ。 「日本の少子化問題は、社会機能を維持 できるかどうかの瀬戸際まで来ている」。岸 田文雄首相は、今年1月の通常国会の施政 方針演説で、そう述べ、少子化対策を最重 要政策に掲げました。その発言の起因と なったのが、2022年の日本の出生数が統 計開始後、初めて80万人を割り込むという データです。 内閣府が公表している『少子化社会対策 白書』では、子育ての重点課題について言 及。結婚・子育て世代が将来にわたる展望 を描ける環境づくりとして、「男女共に仕事 と子育てを両立できる環境の整備」「男性 の家事・育児参画の促進」「経済的支援、 心理的・肉体的負担の軽減等の子育てに 関する支援」などが挙げられています。本学 の看護学部講師の片岡優華先生は、まさ にこれらの子育ての課題解決に看護学の 観点からアプローチをしている研究者で す。今回の学問探訪では、片岡先生の研究 テーマを紐解きながら、少子化解決の糸口 を探ります。 片岡先生の研究テーマは、「育児期の親 のエンパワメント尺度開発」。看護福祉で のエンパワメントとは、“患者が治療などの 直面するプロセスに対し、主体性を持ち、 積極的に取り組む力を得ること”です。片岡 先生は、育児期の親にも同様の力を得る機 会をつくりたいと考えています。 片岡先生は自ら母親となった経験から、 周囲の助けによって育児に前向きに取り 組めることを実感していました。その反面、 育児には十人十色の考え方や状況があ り、周囲のサポートを受けられない夫婦が 多く存在するのも実情です。そこで片岡先 生は、育児期の親が「自分自身」「家族」「仲 間・地域」の視点で認識や行動を確認する ための24のチェック項目を『育児期の親の エンパワメント尺度』として規定する研究 を進めています。 「エンパワメントによって、自分は楽になっ ていいのだと気づいてほしいのです。今回 の調査では約3,000名を対象に質問紙調 査を実施。そのなかで“自分らしく育児が できること”の重要性を再確認しました。 子どもを持つことは、夫婦に大きな変化を もたらします。子育てが生活の中心になり、 ライフスタイルは一変。仕事や家事、ある いは自分の時間をとることができない状況 に喪失感を覚え、育児をつらく感じてしま うケースもあります。だからこそ『エンパワ メント尺度』が自身・社会の指標となり、 周囲の助けを求めやすい環境が生まれる ことで、親が育児から少し離れ、趣味など のリフレッシュできる時間の確保につなが ればと考えています。“自分らしく子育てが File 34 創大の できている”と思える親を増やしていくこと が、少子化を解決するためにもとても大切 なのです。子どもの成長に寄り添う時間と いうのは、本来はとても楽しい時間です。 私の研究を通じて、その楽しさを1人でも 多くの親に享受してもらうことができれば 幸せですね」 看護学と聞くと、患者への具体的なケア の技術や質を追求する「基礎看護学」をイ メージする方が多いかもしれません。しか し、看護学という学問の裾野は広く、健康 な状態で退院した赤ちゃんと母親、さらに はその父親がより自由に生きるための環境 整備もその使命になります。 「創価大学では2022年度より新教育課程 『生涯発達看護学』がスタートしました。女 性・家族の健康、妊娠・出産・子育て、子 どもの成長発達、保育・看護など、生涯発 達にかかわる対象者を広くとらえる学問で す。授業では、私自身の育児体験や研究に よって明らかになったことを踏まえ、育児の 現状や必要な支援などを、学生に考えても らう場面を設けています。看護の質を向上 させるためには、研究が欠かせません。私 の『エンパワメント尺度』のように臨床のな かで見つけた課題について研究する力を看 護学部で育んだ学生が1人でも多く、看護 の発展に貢献してくれることを願います」 [ テーマ ] 子育て課題を解決する 看護学 Yuka Kataoka 17
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