創価大学ニュース「SUN」103号 2019 Autumn

学 問 探 訪 桑原 ビクター 伸一教授 【 教育学部 】 環境問題に対する“ポリシー”を持つことが、 持続的な活動につながります。  本年6月に開催された「G20大阪サミッ ト2019」では、各国で取り組むべき緊急 問題として「海洋プラスティックごみの削 減」が主題として議論されました。 「海洋プラスティックごみが問題になっ た契機は、2011年の東日本大震災。津波 で海に流された日本のものが、アラスカや アメリカの西海岸に漂着したことから、海 の汚染が注目されました。また、同じ頃に 太平洋の真ん中に日本の国土の4倍もの 巨大なごみの島が浮かんでいることが明 らかになり、世界に衝撃を与えました。そ して今、問題となっているのが、マイクロプ ラスティックです。粒子ほどの小さなプラ スティックが海洋生物の体内に取り込ま れ、生態系が大きく壊れるような影響を与 える可能性が指摘されています」  こう解説する教育学部の桑原ビクター 伸一教授は、海洋学の視点から、環境問 題の研究に取り組んでいます。世界的な 問題となっている海洋プラスティックごみ を解決するために、私たちにできることは あるのでしょうか。 「プラスティックは安く、軽く、使いやす いということで、社会の隅々に入り込んで います。そうした状況を見直していくこと が重要でしょう。例えば、個々人が環境問 題に対して、あるいはプラスティック製品 に対して、ポリシーを持つことが大切。よ く私が学生に話すのは、“コンビニ中心の 生活”がごみを増やしているという現実で す。消費に責任を持ち、『もの』に対する価 値観を見つめ直すことがごみ削減につな がるのです。環境に配慮した暮らし方とし て『省エネ』『水を節約する』『ごみ削減・分 別する』『MYバッグやMY箸を使う』とい う工夫があります。特にプラスティックを 減らすためには、『使い捨てプラスティッ ク』を暮らしから減らすことも効果的です。 洋服にも『マイクロファイバー』が含まれて いるので、そういったできるところで、暮ら しからプラスティックを削減しようという 意識が大切なんです」  今回のG20関連記事やニュースなどを 読んで、環境問題への意識が高まったと しても、それを維持し続けるのは難しいも File 21 創大の の。桑原教授は環境教育において大切な ことは何かを語ってくれました。 「環境活動を持続させるには、『自分の手 で実感する』ことが一番です。授業では地 球温暖化を取り上げ、『1880年から2018 年までの地球上の平均温度と二酸化炭素 の変化』というデータを提示し、学生に相 関のグラフを自分で書いてもらって二酸化 炭素の量と温暖化が一致しているかどう かを考えてもらいます。すると、ニュースで 見聞きすることを、自分の実感をもとに判 断できるようになり、これが積極的な行動 につながります。環境教育においては、こ のように自分の手で環境問題を実感する 機会を増やすことが大切だと思います」  そして、創価大学の育成する「世界市 民」という価値観も解決の鍵になると、桑 原教授は続けます。 「SDGsの指標を読み込んでいくと『世界 市民教育』という言葉が見つかります。そ れは、環境問題が国境を越えたボーダレ スな問題だからです。できるだけプラス ティックを使わないというポリシーを持つ といった日常生活のちょっとした行動変 化が、遠い国にいる多くの人たちの生活を 守るのだといった意識を、誰もが持つこ と。そうした慈愛の心が、環境問題解決へ の糸口になるのだと思っています」 11 [ テーマ ] 海洋プラスティック ごみ問題 Dr. Victor S. Kuwahara 海に浮遊するごみの破片

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