創価大学ニュース「SUN」109号 2021 Spring

03 ▲駅伝部のメンバーにもお話をくださった野口さん 苦しい状況だからこそ見つけられる、成長への気づきがある。 野口:選手の自主性を生かしながら、 必要なサポートをされてきたんですね。 榎木:監督就任時に感じたのは、創価 大学駅伝部の気持ちの強さでした。まず 選手たちに「どこを目指しているのか」 と聞いたら、全員が口を揃えて「箱根駅 伝で走りたい」と力強く回答しました。 その思いを力に変えるために、選手一 人ひとりに目標を与え、ただ走るのでは なく“考えて走る力”を育てていきました。 野口:意識が変わったことでランナーと してレベルアップした経験が、私にもあ ります。 私は高校卒業後に入った実業団の チームが入社3年目で解散してしまい、 4カ月間ほど無所属状態になったので す。そのときのことを仲間と「チームハ ローワーク」と呼んでいるのですが、そ れまで競技をするうえで受けていたサ ポートが一切なくなり、例えば食事面で は同期の選手と一緒に交代で料理をつ くり、栄養価も自分たちで考えながら やっていきました。 榎木:それは、大変な時期でしたね。 野口:でも、そうした日々のなかで走る ことへの意識が前向きに変わったので す。実業団に入った最初のころは、高校 の延長のような形で、どこか他人任せ な感じで練習に取り組んでいたのだと思 います。しかし「チームハローワーク」 時代に自分の好きな競技をしながらお 金をいただけ、しかもサポートをしても らえる状況を、改めて本当にありがたく 感じたのです。社会人としてしっかり結 果を出そうという気持ちが強くなったこ とで、自分で考えて走るようになりまし た。それから自己ベストをどんどん更新 できて、オリンピックにつながりました。 あの4カ月で、私は考える力を養えたの かなって思います。 榎木:そういった苦労した時期を過ご したからこそ、自分の原点を見つめ直す ことができるんですね。野口さんの体 験を、コロナ禍で目標達成が難しくなっ て行きづまっている学生たちに知っても らいたいですね。苦しい状況だからこそ 見つけられる、成長への気づきがある。 野口:今コロナ禍で苦しい状況だから こそ、その状況でできること、学べるこ とをするという強さを持ってほしいと思 います。 私は競技者を引退してから、岩谷産 業の陸上競技部をはじめ、さまざまな 場所でアドバイザーという形で長距離の 一線で戦うランナーたちのサポートをし ています。アスリートにとっても、この1 年は苦しいものでした。しかし強い選手 ほど、この期間をむしろ大切にしている という印象があります。今までの課題 を見つめ直し、ゆっくり克服していく時 間として活用していました。その根底に は、競技が再開されたときには以前よ りもいい結果を出すというポジティブな 思いがあります。 榎木:コロナ禍に立ち向かう選手の姿 は、「チームハローワーク」時代の野口 さんと同じですね。 野口:もちろん、誰もがそうした強さを 持っているわけではありません。私がサ ポートする選手にも、メンタルの弱さか ら本番のレースで力を発揮しきれない 選手もいます。私自身、100%満足する

RkJQdWJsaXNoZXIy Mjc4NTQzNg==