創価大学ニュース「SUN」113号 2022 Spring

03 可能性を開花させるために、子どもたちが自身の成長を実感できる教育を。 いるのを見て驚いたのですが、背景に そうしたシステムがあったのですね。 木村:子どもは何のために学校に来る のか。それは、なりたい自分になるた めであり、10年後の社会をつくる1人 の大人になるためだと私は考えていま す。決して、先生に勉強を教えてもらう ためではないという答えを、当時の大 空の教職員全員で導き出しました。 さらに、児童たちが小学校を卒業し て10年たったとき、必要な力は何かを 考え、「多様性社会」「共生社会」「想 定外」という3つのキーワードから、学 校が子どもに何を教えられるか見つめ 直し、学力を「見える学力」と「見えな い学力」に分けました。数値や点数で 表す学力は「見える学力」であり、「見 えない学力」とは、子どもたちが10年 後の国際社会で生きて働く力です。 鈴木:15年以上前に、今の社会を言 い当てたようなキーワードを既に見つ けていたのですか? 木村:そこには、私が阪神淡路大震災 を体験し、世の中は何が起こるかわか らないという考えを持っていたことが 影響しています。「見えない学力」を育 むために、私たち教師は「正解のない 問いかけ」を続けることにしました。 国語、算数、理科、社会といった教科 は、その単なる手段であると。そうし た教育が根付いた大空で育った子ども たちは、いつでも、どこでも自分の 考えを瞬時に発言できるようになりま した。 鈴木:教育現場では「アクティブ・ラー ニング」が行われていますが、型には まったものが多い。先生のお手本をも とに、児童がグループ学習をして、そ の結果を発表し、先生が結論を示して 終わりというような。これが、主体的、 対話的な深い学びかというと、少し違 うのではないかと感じています。一方 で、大空のように、異なる考えを持っ た多様な子どもたちが共生し、自由に 意見を言い合う環境は社会そのものの 縮図です。そうした、自分をさらけ出し ながら切磋琢磨する環境こそ、国際社 会で働くための力を育むのでしょうね。 木村:すべての児童に自分らしくあって もらうために、大空には校則がありませ ん。その代わりに、児童が目標とする「四 つの力」と「たった一つの約束」があり ます。「四つの力」とは、「人を大切にす る力」「自分の考えを持つ力」「自分を表 現する力」「チャレンジする力」。この四 つの力をどれだけ獲得したかが、授業 の評価になります。しかし、この力は「見 えない」ので他者が評価できません。 ですから算数の時間であれば、割合 という学習を通して四つの力をどれだけ 獲得したかを児童自身が評価します。 そうした自己評価を1年生から6年生ま でが行っているのです。 鈴木:それは、すごい。自分の成長を日々 実感しているのですね。 木村:面白いことに、「四つの力」とい う「見えない学力」の獲得を学びの最 上位目標に置いていると、「見える学力」 もついてくるという結果が出ました。大 空では当初、全国学力調査の平均正答 率が大阪市の平均よりも低かったので すが、3年後には全国平均を上回り、9 年後には全国1位の県より8ポイント上 まで大空の平均正答率が向上しました。 鈴木:私は数学教育に携わっているの で、算数は自分で判断する力を身につけ るための教科であると、よく学生に話し ます。理想の算数の授業とは、児童の 学習レベルにかかわらず、自身で新しい ことを発見し、「私は、これができるよ うになった」という喜びを感じる時間な

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