創価大学ニュース「SUN」115号 2022 Autumn

学 問 探 訪 遠藤 幸彦 教授 【 教育学部 】 これからの社会でますます求められる、心のケア。 大切なのは、やさしさと厳しさを兼ね備えた「励まし」。 「心の病」は、今や特別な病気ではありま せん。厚生労働省の調査でも、1996年に は43.3万人だったうつ病をはじめとする 気分障害の総患者数は、2017年に127.6 万人と約20年間で3倍近くに増加している ことが分かっています※。 こうした現状を受け、サポートを行う公 認心理師という新しい国家資格が誕生し ました。創価大学教育学部でも2020年に 養成課程を設け、公認心理師の育成をス タートしています。そこで、今回は教育学 部で臨床心理学を教える遠藤幸彦教授に お話をうかがいました。 心理学とひと言でいっても、心とは何か を哲学的に考えるものから、精神疾患を サポートする術を学ぶものまで、多岐にわ たります。まずは、遠藤教授に臨床心理学 について定義を聞きました。 「臨床心理学では、実際に具合の悪い人 に対してどう対応していくかを学びます。 人間のさまざまな心理的な問題を調査・ 研究し、心の悩みやメンタルヘルス上の問 題を解決する理論や技法を考えます。 私は医学部に進学し、脳科学などの生物 学的な精神医学を学びました。そのうえで、 人の心理や対話的な治療を学びたいと考 え、精神分析的な立場から精神疾患の診 断面接や治療について研究を続けてきま した。実際に精神科医として多くの患者さ んを診察し、生物・心理・社会的な視点か ら学校に行けない子の心の病をどう解消 するかといったアドバイスをしてきました。 これまで私は医師として、患者さんを サポートしてきましたが、『公認心理師』と いう国家資格が誕生し、本学でも養成課 程を設けたことでサポートの可能性が大 きく拓けたと思います。具体的には、医療 機関、保健所、さらには学校、児童相談 所、少年院などで、支援を必要としている 人の心理状態を観察したり、相談に応じ たり、助言をする。また、支援を必要とす る人の関係者に対して相談対応や、心の 健康に関する知識の普及や教育に携わる ことなどの活動も、公認心理師の役割と なります。実際に私のゼミにも、そうした 公認心理師を目指して養成課程に進んで いる学生がいます」 多くの若者が心理学に興味を持つ背景 には、自らのまわりに「心の不調」で悩む 人が多いことがあげられます。そういった File 32 創大の 人たちをどのように「励まし」たらいいか、 悩んだ経験がある人もいるのではないで しょうか。ただ、意外にも遠藤教授は「最 近は、『励ましの言葉』があふれすぎてい る」と指摘します。 「自尊感情を高める、または心の傷を癒や そうとして、とにかく励まそうとやさしい 言葉をかけても、それだけでは人は変わり ません。今『、すべて受け入れるやさしさ』を 社会全体が奨励しているのは大切なこと ですが、ダメなことはダメとはっきりと示す ような姿勢も兼ね備えなければ、心の悩み をよい方向に向けることはできません。 思春期青年期の友達関係でも同じです。 褒め合うだけでなく、悪い行動をしたら『そ れはダメなのでは』と素直に言い合える関 係が、心の状態をよい方向に導くためには 大切です。褒めるだけでなく、ときには厳 しい言葉も『励まし』として欠かせません」 今の時代、SNSなどで情報過多となり、 心のバランスを崩す人はますます増えるこ とが予測されます。 「心理学を学ぶことは、多くの人を助ける 力となります。それを励みに多くの学生に 心理学を学んでいただきたいです」 [ テーマ ] 臨床心理学から考える 心を癒やす「励まし」とは Yukihiko Endo 13 ※出典:厚生労働省ホームページ「統計情報・白書 こころの病気の患者数の状況」https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-09.html

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