【「価値創造×SDGs」Week開催レポート】
根本かおる 国連広報センター(UNIC)所長

2020年12月11日(金)~17日(木)にわたって、「価値創造×SDGs」Week(後援:国連広報センター)を開催しました。11日のオープニングイベントでの、国連広報センター(UNIC)所長の根本かおる氏による講演レポートです。

人間の安全保障とSDGs――グローバル・コラボレーションの推進

「創価大学の国連アカデミック・インパクトへのご参加、並びにSDGsを始めとする国連で議論される地球規模の課題についての研究、教育への積極的な取り組みに感謝を申し上げます。グテーレス国連事務総長は常々、Young people are not the leaders of tomorrow, they are the leaders of today.(若い人たちは明日のリーダーではない。今日のリーダーなのだ)と強調しています。若者たちに早い段階から社会課題を柔軟な思考力で捉え、自分にできることを、アクションに移すことを促していくことは大学にとって非常に大切な使命だと思っています」

女性へのハラスメントに反対するMeToo運動、人種差別に反対するBlack Lives Matter運動、気候行動を求めるFriday For Future(未来のための金曜日運動)も若者たちのエネルギー、活力によってここまで大きな運動になった。「市民のこうした声を社会変革につなげる、そういった場づくりをすることが求められている」と語る根本所長。地球が抱える課題が絶えないなかで、私たちは今、何を為すべきかの問いかけでもある。

「世界中で猛威を振るい、勢いを増す新型コロナウイルス。コロナ感染症のパンデミックは人類の危機と言えるまでに経済、社会、人権、人道などあらゆる分野で危機をもたらしています。深刻化する気候変動、格差、不平等の増大、地政学的な緊張、深刻な資金不足なども続いており、国際社会はその脆さを露呈してしまったと言えます」

新型コロナウイルスの影響は、教育の分野にも及ぶ。世界中で学校閉鎖、休校措置が取られた。こうした中でドロップアウトしていくのは開発途上国の、とりわけ女子である。一度教育の機会をなくしてしまえば、二度と戻れなくなってしまうからだ。

「SDGsの大原則である“誰一人取り残さない”ことがいかに大切か、再確認しています。もしコロナの前にSDGsでもっと進展があり、格差が縮小し、医療・保険サービスが充実していたならば、ここまで大きな打撃にはならなかったのではないか。日本でもシングルマザーの2割が支出を切り詰めるために食事回数を減らしているという調査結果があります。コロナ対策として国連は、“No one is safe until everyone is safe.(すべての人が安全でなければ、誰も安全ではない)”を合言葉に、ウイルスという共通の敵と立ち向かうべくグローバルな協力と連帯を呼び掛けています。WHO世界保健機関、Gaviワクチンアライアンス、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)が主導してワクチンを共同購入する仕組み“COVAXファシリティ”を立ち上げ、日本政府もこれに早くから参加しています。国内ワクチン確保と同時に開発途上国も含めた、国際的に公平なワクチンの普及を確保するもので、正に国際的な連帯に基づいた枠組みといえます。ワクチンは豊かな先進国だけではなくて、広く世界中、“people’s vaccine”(人々のワクチン)として行きわたらせることができて、初めて真のコロナ対策となり得ます」

このような中で国連は、創設75周年を迎えた。国連は今年、世界中でグローバルな世論調査を行ってきた。新型コロナ危機での医療、水、衛生、教育などの不安、中でも長期的に見て一番の懸念となったのが気候変動危機。この課題に対応するには何より国際協力が欠かせないと、多くが回答したという。

「グテーレス国連事務総長は、世界がコロナ以前の姿に戻ることがあってはならないと訴えています。なぜならコロナ以前の経済、社会、そして自然との関わり方こそが新型コロナ危機を招いてしまったと言えるからです。包摂的に、平等で、グリーンで、持続可能な世界に転換する、より良い復興を通じて、この人類の悲劇を乗り越えていくことが不可欠です。ここで羅針盤になるのは、そうした方向性を包括的に示しているSDGsです。若い皆さんにこそ、それぞれの立場で何ができるのか考えていただき、より良い社会づくりに共に関わっていただきたいと願っています」

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