【「価値創造×SDGs」Week開催レポート】高須幸雄 
NPO法人「人間の安全保障」フォーラム理事長、国連事務総長特別顧問(人間の安全保障担当)

2020年12月11日(金)~17日(木)にわたって、「価値創造×SDGs」Week(後援:国連広報センター)を開催しました。11日のオープニングイベントでの、NPO法人「人間の安全保障」フォーラム理事長、国連事務総長特別顧問(人間の安全保障担当)の高須幸雄氏による基調講演レポートです。

人間の安全保障――私たちが取り組むべき平和・人権活動

NPO法人「人間の安全保障」フォーラム理事長の高須氏は、国連の事務総長特別顧問として人間の安全保障という考え方を日本、世界で広める活動をされている。創価大学においても過去に法学部で特別講義をしていただいている。今回の基調講演では、私たちが取り組むべき平和・人権活動に関する具体的な指針を示された。

「国連の活動には、平和、開発、人権という三つの柱があります。それぞれ別々のものではなく、相互依存関係にある。英語では“Nexus”と言い、平和、開発、人権は、同時並行的に追及していかなければ、平和で繁栄する公平な社会は実現できません。統合したアプローチが求められます。一旦、武力紛争が起こると、交渉での紛争解決は簡単ではない。 “prevention”、つまり紛争予防が極めて重要となります。平和への政治的関与と共に、開発と人権での関与も統合して進め、三分野を横櫛として連結する。これに有効なのが、人間を中心に考える、“人間の安全保障”の概念なのです」

人間の安全保障についての国際的な共通理解は、国連総会の2012年のコンセンサス決議で合意している。それは国や集団レベルの集合体として人を捉えるのではなく、一人ひとりの尊厳、不安、課題に注目することであり、さらに最も取り残されそうな人に焦点を当て、そのニーズに対応しながら考えることが求められている。

「世界の政治状況をみると、グローバル化の負の側面である富や技術の偏在、格差、差別が顕在化するに伴い、政治も分断化され、その結果ポピュリズムや一国中心主義が台頭し、民主主義国家の数が減っています。新型コロナウイルス感染症はこの状況を、さらに悪化させている。子供や女性、ひとり親、非正規雇用、あるいは高齢者など、社会的に弱い立場の人への経済的な影響が極めて深刻です。MDGs、SDGsによって拡大してきた小学校への進学率は、1990年レベルまで逆戻りするのではないかと懸念されています。また、脆弱な人の人権が侵害されている。子供の人権、具体的には教育機会への影響、虐待、育児放棄、性的暴力などです。このような状況に対して国連が今年“Together:Human Rights and COVID-19 Response and Recovery”を発表し、子供たちの人権擁護を各国に訴えています」

さらに高須氏は、新型コロナウイルスでの国際的な対応が十分ではないことを紹介。ドナー国の多くが国内対策に主たる目が向きがちであること、大国は得てして二国間協力を好む傾向があることなどを理由に挙げた。過去にグローバルヘルスの分野でイニシアチブを取ってきたG7も現在は共同声明も出せないような機能不全の状況に陥っているという。国際的な研究機関である「The Varieties of Democracy Project(スウェーデン)」によると、コロナの影響で民主主義の状況がさらに悪化し、2020年に、2001年以来冷戦終結後初めて、世界の過半数がポピュリズムや強権国家で占められたという。

「創価大学の学生に、私たちができる平和・人権活動について5つお伝えしたい。
第一はSDGsの真の意味を理解すること。SDGsは単に持続可能性の意味、あるいは環境の問題に留まるものではなく、一人ひとりの尊厳を守ることが真の意義。そこにこそ革新的な意義があるのです。
第二に、日本にも取り残されている人が数多くいることを認識する。日本の子供の貧困は先進国の中でも極めて高い。おおよそ7家庭のうち1つは貧困家庭です。非正規雇用、不平等、差別の問題もあります。そこには資本と労働の分配の偏りもあります。
第三に、貧困や格差の縮小、差別を解消するためには、一人ひとりの尊厳の問題として取り組む必要があります。そのような人たちに思いを寄せてほしい。当事者の声を直接、具体的に聞くことによって、変えていくことができるのです。
第四に、すべての人が生まれてきて良かったと思える環境を目指すこと。たとえば、いじめ、不登校が増えています。違う意見の人を排除しない、仲間外れにしない。一人ひとりがそのような態度をとることによって、SDGsの目標に近づきます。たとえ意見が違っても尊重し合う共生社会づくりは自分の身の回りから始めることができます。
第五に、SDGsウィークの大きなテーマである平和と人権についてです。平和ついては、紛争や対立の原因は何か、どのようにして信頼醸成を図るか。つまり、意見は対立しても、お互いの立場を認め合い、武力をもって戦うことがない、信頼し合える社会を築けるかです。信頼醸成は人と人との間だけではなく、国と国の間でも適用されます。人権については、『世界人権宣言』をよく読んでほしい。そこから自分の力、自分のエネルギーを得てほしい。さらに『子どもの権利条約』も読んでほしい。子供に優しい、子供の権利を認めるということは、女性やすべての人に対して優しい社会になることですから。ぜひ精読して、自分ができることを考え、始めていただければと思います」

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