【「価値創造×SDGs」Week開催レポート】
近藤哲生 国連開発計画(UNDP)駐日代表

2020年12月11日(金)~17日(木)にわたって、「価値創造×SDGs」Week(後援:国連広報センター)を開催しました。15日のシンポジウム「人道的競争の時代へ」での、国連開発計画(UNDP)駐日代表の近藤哲夫氏による講演レポートです

SDGsと起業――世界で活躍する人材になろう

国連開発計画(UNDP)は、貧困の根絶や不平等の是正、持続可能な開発促進をミッションとする国連の主要な開発機関。特に、今回のSDGsの策定には大きな役割を果たし、世界におけるSDGs普及の推進力となっている。

「国連の設立目的は、開発と人権と平和です。この三つは大変緊密につながりあっています。開発がうまくいかないと、平和が保てない、平和が保てないと人権が侵害される、人権が侵害されると開発がうまくいかない。この悪の循環に陥ってしまうと、その国は、いわゆるフェイルド・ステート(失敗国家)になってしまう。そういう国が出ないように私たちUNDPは、いろいろな角度から開発の課題を特定・プロジェクト化して応援するという仕事をしています」

こうした取り組みの中で、UNDPが現在注力する一つに“アクセルレーター・ラボ”がある。78か国60のラボチームがそれぞれの拠点で、課題とその解決策を講じながら新たなビジネスモデルを開発し、さらに雇用を創出している。

「一例ですが、世界六つのラボが協力して、海藻の持続可能な利用法を開発しました。まず、プラスチックに代わる素材を海藻から作り、海水に溶けるバッグを商品化しました。しかもこの素材は他のラボの研究で、家畜の飼料、あるいは肥料にすることもできた。このように、ラボのネットワークによってさまざまな開発が進んでいるのです」

近藤代表はかつて、UNDPコソボ事務所駐在の際、民族紛争の解決のための自治体づくりや都市計画の応援、チャド事務所駐在の際にはジェンダーによる不平等で生じていた女児の早期婚問題を政府に進言、施策として取り入れてもらうなど、開発支援に力を注いできた。そして今、これからのSDGsの時代、世界が平和で繁栄を続けるためにはどうすれば良いのか。それを担う若い世代に、ぜひ自らの職業人生をかけて課題解決のために取り組んでもらいたいと話す。

「課題解決に取り組むとはビジネスを創造することでもあります。例えば、2017年に発足した“Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)”は、SDGsの課題解決のために若い方たちに起業してもらおうという狙いのピッチコンテストです。皆さんと同じ世代の人たちがアジアの各国から参加して、今、何が問題なのか、その解決のために具体的にどのようなビジネスが必要かを自由に提案する。最優秀賞には、『コオロギを活用した資源循環型食糧生産システム化の確立』を提案した日本の若者が選ばれました。コオロギが美味しく食べられるなんて、驚きですよね。でも本当においしい。その他、たくさんのアイデアが出ました。人道的競争の時代、SDGsに則った起業は大いに意義があります。皆さんも、ぜひ挑戦していただきたいと思います」

「未来から考えてみる。つまり2030年、このSDGsが達成された状態から逆に考えると、今、何が必要かがわかってきます。ニーズが見えてくる。そうすると、さまざまなステークホルダーが参加してくる。新しいマーケットができるのです。若い皆さんには、そこに目を付けて欲しい。人道的競争の時代、アイデア勝負なのです」

さらに近藤代表は、国連で働きたいという若者たちへもアドバイスをくれた。

「日本政府が、ジュニア・プロフェッサー・オフィサーというシステムを用意していて、ここから経験を積んで国連の正規職員になるという方法があります。リーダーシップ、イノベーション、マネジメント、コミュニケーション、目標達成、などさまざまな能力が求められますが、大事なのは、学んだことを言葉にすることができること、文章にすることができること。それができれば国連で難関といわれるインタビュー試験で高い得点を取ることができ、ポストを得られると思いますよ。ぜひ皆さんのご活躍に期待します」

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