【「価値創造×SDGs」Week開催レポート】
土井香苗 ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表

2020年12月11日(金)~17日(木)にわたって、「価値創造×SDGs」Week(後援:国連広報センター)を開催しました。15日のシンポジウム「人道的競争の時代へ」での、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗氏による講演レポートです

人権問題に興味をもとう――調べる、知らせる、世界を変える

「ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ノンガバメント、完全な民間の団体です。政府や国連なからも助成金をもらわず、どこからも影響を受けない立場でいることを重視しています。ニューヨークに本部があり、全世界に500人のスタッフがいます。国際的な人権団体としては世界最大級です。人権状況を調査し、これまでに80の報告書を発表しています。『調べる、知らせる、世界を変える』が、私たちのやり方です。現在も、常時約100か国の人権状況をモニタリングしています。
焦点は、ビジネスと人権、子どもの権利、テロリズム対策、障がい者の権利などで、数え方によっては27の分野になります。1997年には、対人地雷禁止条約の成立に貢献したとして、他団体と共同でノーベル平和賞もいただきました」

土井代表は大学4年生のときに、当時アフリカでは一番で新しかった国エリトリアへ行き、一年間ボランティアに参加。ところが、エリトリアを去って間もなく、独裁体制の国家となってしまったことに衝撃を受けた。弾圧政治により、いまだに難民・国内避難民、人権など多くの課題を抱えている。その後、日本での弁護士活動を経て、ニューヨーク大学へ留学、それをきっかけにヒューマン・ライツ・ウォッチに参加、2008年からヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表となる。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京事務所で、国際的な人権問題として現在、力を入れて取り組んでいるのはキラーロボットです。完全自立型致死兵器と呼ばれたりしますけれども、AIが搭載されたロボット兵器で、人間の介入・操作、有意義なものが一切ない兵器です。まだ実戦投入はされていませんが、十数ヵ国での開発がかなり進んでいます。近い将来の実戦利用とそれによる人的被害が懸念されています。現在、対人地雷禁止条約と同じようにヒューマン・ライツ・ウォッチが中心となって、世界中のNGOに声をかけ、160ほどのNGOが集まってきています。実戦投入される前に“キラーロボット禁止”というムーブメントを起こしたいのです」

「このような活動には世論の応援が必要です。中でも若者の声が、より政府には届くようです。学生の皆さんにはぜひTwitterのフォローをお願いしたいのと、『何かボランティアをしてもいいよ』という方がいらっしゃいましたら、Twitterでご連絡いただければと思います。核兵器は使われてしまったけれど、キラーロボットはまだ止められる可能性があります。多くの方に関心を持っていただきたいと思います」

「国内案件では、LGBTに関する問題とスポーツにおける体罰問題です。LGBTでは、調査報告を基にLGBT平等法という法律をつくろうと活動しています。世界的な国際署名キャンペーンを10月から立ち上げました。我々の調査ではいじめや差別がまだまだあります。その最大の理由は、LGBTに関する法律がまだ一つもないことです。日本では、法律がないと、法律上、存在しない扱いになってしまうのです。非常に遅れていると言わざるを得ません。ぜひ皆さんにも署名のご協力をいただけたらありがたいです。

また、スポーツにおける体罰問題ですが、日本では詳細な調査は、我々がほぼ初めてという状態で、国もデータを持っていませんでした。来年はオリンピック、パラリンピックです。日本のスポーツと人権という分野にも注目が集まると思います。スポーツシーンでの虐待問題に対して、独立した第三者機関を立ち上げるためにロビー活動を始めていますので、ご興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ一緒に活動しましょう」

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