【「価値創造×SDGs」Week開催レポート】
馬場良美さん(文学部4年)

2020年12月11日(金)~17日(木)にわたって、「価値創造×SDGs」Week(後援:国連広報センター)を開催しました。17日クロージングイベントでの馬場良美さん(文学部4年)のプレゼンテーションのレポートです

テーマ:私とジェンダー学――夢や希望を追い続けていくことのできる環境に

馬場さんは、本学の“Global leader college”でグローバルリーダー育成の課外講座を受講、エジプトの女性たちの雇用問題を解決するため、女性起業家育成プロジェクトにチームで取り組んだ。その一方でイスラム教の女性が日常的に使うハラル認証の化粧品が日本で不足している問題を知り、タイとマレーシアを自発的に訪問、インタビュー調査を行った。その活動が“トビタテ!留学JAPAN”に採択され、エジプトで調査をすることができた。
専攻は、社会学の中のジェンダー学。専門領域はイスラム教のジェンダー学で、3年時はエジプトのカイロアメリカン大学に交換留学を経験。同学内で“Save children network”という子供と女性の権利向上を目指した活動に参加した。

「私のジェンダー学の中での問題意識は、イスラム教の女性の生き方についてです。ジェンダー学を学ぶ中でイスラム教の女性は権利を侵害されているという意見に出会い、とても違和感を覚えたのです。そこで実際に彼女たちの声を聞きながら、このテーマについて考えてみようと。イスラム教の女性観が、今日の西洋文化からどのような影響を受け、女性たちの生き方が変化しているかということにも興味がありました」

ジェンダー学を深める中で、イスラム教の教えを忠実に守り、自分とは全く異なる生き方をしている女性たちの存在を知った。人生の選択が、宗教やその地に色濃く残る伝統によって決められている。それを彼女たちはどう捉えているのか。ジェンダー学を通して社会規範、伝統、宗教などさまざまな視点から女性たちの本当の自由な選択肢とは何かを考察しようと思った。

「エジプトはイスラム人口が90%以上です。カイロアメリカン大学に9か月間留学をしました。ここでジェンダーを学びながら考察したことは、イスラム教はとても女性を大切にする宗教であるということ。ところが、国連のレポートで99%以上の女性がセクシャルハラスメントを経験しているデータがあること。この問題はイスラム教由来ではなく、さまざまな宗教観、文化、伝統、習慣が混ざり合って生じたものだと理解しています。
また、女性たちは西洋の女性たちが社会で活躍している姿にあこがれを持っていること。大学内では多くの女性がヒジャブを外し、派手なメイクや服装をしていました。しかし、『本当はヒジャブをしていたい』とも言っていました。理由を問うと、『ヒジャブをすると西洋の人たちから差別的に見られるから。本当はヒジャブをしてありのままの自分を表現したい』と。この話を聞いて、自分のありたい姿を素直に表現し、貫く生き方の難しさとともに、彼女たちは保守的な考えと西洋の考え方の狭間にいるのだと思いました」

馬場さんは、実際にジェンダー問題に取り組んでいる団体で経験を積みたいと考え、国際NGOプラン・インターナショナルのアドボカシー(政策提言)部門でインターン生としても活動。日本におけるジェンダーに配慮された広告提示の提言や、若すぎる妊娠、性教育、女性の居場所の問題などに取り組んだ。ここでの経験を通して、実際にジェンダー問題を解決する難しさと同時に、そこに熱意を持って働く人たちに出会い、自分も将来、ジェンダー問題の解決に関わる仕事をしたいと思うようになった。現在は、国際NGO VIVIDというガーナのコミュニティ開発を行う団体に所属、活動している。

「私は大学時代、ジェンダー学、イスラム教の女性の生き方を学び、将来は国際協力の分野で中東地域の女性たちの権利を向上していく仕事に就きたいと考えています。具体的には、中東地域の女性の雇用問題や名誉殺人などの問題に取り組み、女性たちがイスラム教である自分を愛し続けながら、自身の夢や希望を追い続けていくことのできる環境を共に構築していきたいと考えています。今は就職活動に取り組んでいますが、まずは幅広い知識を養うことができ、中東地域のことに関わる仕事に就きたい。
私が大学4年間でジェンダー学を通して得たことが3点あります。1点目は、遠い世界にいる人たちに思いを馳せる力です。2点目は、違いを受け入れる心です。3点目は、違和感を大切にして行動を起こすことです。私は4年間で学んだことをすべて生かし、社会に出て、一人ひとりの生き方を大切にしていくことのできる社会人に成長し、必ず中東の女性たちと、ともに社会を良くしていくことのできる人生にしていきたいと思っています」

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