【「価値創造×SDGs」Week開催レポート】
<質疑応答>人道的競争の時代へ:「人間の尊厳」が輝く未来の創造

2020年12月11日(金)~17日(木)にわたって、「価値創造×SDGs」Week(後援:国連広報センター)を開催しました。15日のシンポジウム「人道的競争の時代へ」での、参加者との質疑応答のレポートです

講演者:国連開発計画(UNDP)駐日代表の近藤哲夫氏、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗氏、創価大学法学部教授の中山雅司氏

国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは、どこから財源を得ているのでしょうか。また、ファイナンスでのルールはありますか。

(土井代表)「政府や政府関係の団体からお金をもらわないことを最低限のルールとしています。なぜなら、アジェンダ(行動計画)に外部から介入されてはならないからです。我々のアカウンタビリティの対象は人権侵害の被害者です。他からのコントロールを受けるべきではありません。最も好ましいのは個人からの寄付で、これがヒューマン・ライツ・ウォッチの活動資金の半分以上を占めています。企業からの寄付は上限を設けて受け付けますが、人権問題にかかわるような企業の場合はお断りします。それは個人の場合も同様です。例えば環境系のNGOなどでは、企業からの寄付は受け付けないと聞いています。また、日本にはあまりありませんが、世界には個人が設立した財団が多く、海外のNGOではそうした財団からの寄付もあります」

国際機関の役割の中で、“人道支援”と“開発支援”のシームレスな関係づくり、相互調整はどのように行われていますか。

(近藤代表)「人道から開発へのシームレスな移行については、一体的に行われています。人道支援とは災害や紛争などから人命を守ることであり、これには時間的制約があります。例えば6か月、1年などと短期的、集中的に行う場合が多いです。その後、開発支援として、助かった人たちが安心して暮らせる、生計を立てられるためのバックアップ、社会づくりを目指します。
このような平和維持活動における開発・人道を一体化して行う“統合ミッション”というアプローチは、特に2000年に入って国連の中で発展してきました。具体的には、人道支援活動にも計画段階からUNDPや世界銀行が参加するなどして、つながりが絶えることのないように支援活動をしています」

国際機関や研究機関などで肉の消費が地球温暖化に負の影響を与えているという報告があります。SDGsの目標達成に向けてこの問題をどのようにお考えですか。

(近藤代表)「肉の消費については3つの問題があると思います。環境に与える負荷、肉食が健康に与える負荷、貧富による食の格差です。
供給がこのまま人口の増加に追いついていくとは思えません。肉に変わるタンパク源を考える必要があります。健康への負荷については、肉が好きな人はさまざまな生活習慣病になりがちです。保険医療にも大きな負担です。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(誰もが、どこでも、保健医療を受けられる社会)を確保していくためにも、肉に偏らない食生活をSDGsゴール3(すべての人に健康と福祉を)の一環として考える必要があるでしょう。また、貧富の格差は食生活にも大きく現れます。仮に貧困な地域に生まれても十分なたんぱくを確保できる、先ほどご紹介したユース・コーラボで優勝したタンパク源としてのコオロギ活用というのもその一つの例です」

“価値創造”を私たちが日々行動で表すにはどうすれば良いでしょうか。

(中山教授)「創立者は、サイモン・ウィーゼンタールセンターでの講演の中で、「「創価」とは、「価値の創造」の意義であります。その「価値」の中心は、何か。牧口の思想は明快でありました。それは「生命」であります。(中略)「生命」の尊厳を守る「平和」という「大善」に向かって、挑戦を続け、いかなる困難にあっても、価値の創造をやめない――そうした「人格」の育成にこそ、「創価教育」の眼目があります。」と述べられています。そのために、私は日々の行動について、“世界で何が起きているか、世界の現状を知るということが何よりも大事”と考えます。平和の最大の敵は“無関心”です。知らないと行動は起こせません。世界に目を向けて知識を得ていくことが必要です。次に、人々の苦しみに共感し、思いを寄せていく。そして行動に表していく。このことが大事だと考えます。
牧口先生の“郷土民・国民・世界民”という3つのアイデンティティのお話しをしましたが、先生は『世界市民において大事なことは足もとである。今いる自分の場所、地域にしっかり根ざしていくことが世界につながっていく』と強調されました。身近なことからの取り組みが重要な鍵です。自分が接する身近な人、その人に何ができるかを常に考え、尊重していくことが人権の基本です。身近なことから世界につながる、このことが世界を変えていくのではないでしょうか」

最後に、青年に向けたメッセージをお願いいたします。

(近藤代表) 「緒方貞子さんが日本の若者に、『内向きになるな』という言葉を残されました。また、こうも言われています。『一人でも多くの命を救うために、何ができるか考えなさい』と。どうか皆さんも、地球という観点から、一人でも多くの命が救われるために何ができるか考えてみてください」

(中山教授)「皆さん、世界平和のために貢献したいという熱い思いを持っていらっしゃいます。私もかつてアフリカに行き、そこで世界の現実を見て、何か貢献したいという思いを深めた記憶があります。けれども“泳げない人は、溺れている人を助けられない”という言葉の通り、いくら社会や世界を変えよう、人を助けようと思ったとしても、自分自身が泳げないと助けられないのです。そのために力をつけることが大切です。力をつけるためには今しっかりと学ぶということ。これを基本に、大きな夢と理想を絶対に諦めることなく、足もとをしっかり固めながら一歩一歩着実に歩んでいってください」

トップへ戻る
寄付事業の
ご案内
2030年への
Vision