【「価値創造×SDGs」Week開催レポート】
レジス・サビオ 赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表

2020年12月11日(金)~17日(木)にわたって、「価値創造×SDGs」Week(後援:国連広報センター)を開催しました。14日のシンポジウム「人道的競争の時代へ―平和構築のために我々ができること」での、赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表のレジス・サビオ氏による講演レポートです。

SDGsと国際人道法――平和構築のために何ができるか

1863年に創設されたICRCは、150年にわたって世界中の主な紛争地域で人道的保護と支援を続けてきている。負傷した兵士を自発的に助けたアンリー・デュナンの行いが、今では、戦争で傷ついた世界の何百万という人々に手を差し伸べる組織にまで発展してきた。また、平時においても、ジュネーブ諸条約を充実させ、世界中に国際人道法を広める活動を行う。公平にして中立、かつ独立した機関である。本部はスイスのジュネーブにあり、約90か国以上で1万5000人の職員が活動している。

「私たちICRCの支援は、ほとんどが武力紛争やその他の暴力に伴う世界の中で最も厳しい地域の人々に対してのものです。しかし、残念なことに武力紛争は激化しているのが現実です。国連によると、世界で2億3500万人の人たちが人道支援を必要としています。そして2021年にはさらに40%増となる予測です。武力紛争を終結して、実際に平和を達成したいと願うのであれば、紛争の当事者たちには『国際人道法を守る』という義務があります。それができないのであれば、武力紛争は終わることはないでしょう。私たちは政治の議論はしませんが、すべての当事者に対し、国際人道法について理解、尊重、そして推進を求めています。いわば私たちICRCは国際人道法の守り手、守護者なのです」

ICRCは国際社会から法的な権限を与えられている。その権限は1949年のジュネーブ諸条約で認められている。これによってICRCは武力紛争中に、捕虜を訪問すること、救援活動を行うこと、家族の再会をはかることなどの人道的活動を行う永久的な権利を有する。また、ジュネーブ諸条約が適用されない国内紛争においてもICRCは同様の活動を行うことを認められている。

「エチオピアのティグレ州における政府と人民解放戦線の紛争は今も続いています。州都メケレの病院を私の同僚が訪ねたときには医療用の手袋すらなかったそうです。怪我や病気で運ばれても手術ができない。そこに新型コロナウイルス感染が拡大して、現在、アクセスができにくい状況にあると言います。しかし、それでも私たちは支援を届けなくてはいけません。『国連総長が世界的な停戦を呼びかけたのは良かったが、現実は全く同意することなく、ぜんぜん上手くいっていない』と同僚が話していました。確かに、私たちが人道支援を行う地域は、30年も40年も紛争が続いていることが多いです。要するに、政治介入や国際的な制度でこれらの問題を解決に導くのは非常に困難ということです。繰り返しになりますが、必要なのは国際人道法を推進し、尊重することです。それができない限り、平和は実現しないのです」

世界約200か国のうち、現在60か国で武力紛争が起きており、その当事者たちはどんどん分断化、細分化され、600以上の非国家の武装勢力があるという。ICRCは、そのうち460以上とコンタクトを取り、人道支援を行っているが、その活動は大変厳しい。当事者たちとの国際人道法の合意も、どんどん反故にされるからだ。しかし、たとえそうだとしても支援を待つ一般市民たちがこの瞬間も増え続けているという現実がある。

「私たちの活動の3分の1は中東において行われます。レバノンで活動中の仲間が言うには、被害者の皆さんは、水や毛布を待っているわけではない。では何が欲しい? 何が不足している? それは教育だと言います。さらに雇用が欲しいと言います。人道的支援団体も単独ではこのような支援に対応できません。ですから国際協力を強化することが大きな鍵になっているのです。私たちはとても混乱した世界、難しい世界に住んでいることがお分かりいただけますでしょうか」

「すべての国が、国際人道法を遵守すれば、今とは全く違う平和な世界が訪れると思います。平和構築のために何ができるか。私たちが絶対に必要とするのは、国際人道法を守り続けることです。まさにSDGsの目標です。私たちが人道支援の求めに応えることができなければ、あるいは人々にアクセスができなければ、そして私たちの活動が公平、中立、独立の原則に基づくことができなければ、いつまでも平和な世界は訪れないでしょう」

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