【「価値創造×SDGs」Week開催レポート】
ブライアン・アダムス グリフィス大学宗教・文化間対話センター長

2020年12月11日(金)~17日(木)にわたって、「価値創造×SDGs」Week(後援:国連広報センター)を開催しました。14日のシンポジウム「人道的競争の時代へ―平和構築のために我々ができること」での、グリフィス大学宗教・文化間対話センター長のブライアン・アダムス氏による講演レポートです。

障壁を克服し、レジリエンス(回復力)を構築する――COVID-19の世界において

「世界は今、新型コロナウイルスに席巻されています。効果的なワクチン、治療法が確立するまではそれが続くでしょう。世界に社会的、経済的な苦しみが広まっている中で、私たちはこれまで多くのことを学びました。しかし、行動は十分ではない。
これまでの経験で、パンデミックに関して国家間の対応には、少なくとも2つの効果があることがわかっています。コミュニティ、家族、個人の苦しみを最小化すること、そしてレジリエンス(回復力)を利用することで、コミュニティがさらに強固になるということです」

ところが、有効なはずの“対話”にも障害は多い。新型コロナウイルスが収束しても、いずれポストコロナ時代への不安が残る。その時、再び同じような混乱を招いてしまうのだろうか。解決すべき課題は主に5つあるという。

「1つ目の課題は、縦割りの多国化体制です。集団として世界的な脅威に対抗するには、協調と調整が多国籍組織間において必要です。備品やサービスなどの提供、データの収集と分析、パンデミックの追跡と予測など、世界レベルで影響を及ぼします。問題の定義、相互のコンセンサスも必要です。このコンセンサスの調整が時と場合によっては大きな障害となります」

「2つ目の課題は、縦割りの多国化体制のため、パンデミックに対応する連係が特定できず、活用できないことです。OECD、フランスやドイツ主導の多国間主義同盟(Alliance for Multilateralism)などいくつかの多国間組織が、対話と調整プラットフォームを新型コロナウイルス対応のために作成していますが、残念ながら国の枠を越えてはいません」

「3つ目の課題は、民主的な仕組みの弱体化です。それぞれの国がそれぞれのニーズに合わせて対応しようとしています。例えば、多くの国では公的な監視が増加しています。幅広い権限を警察や保健機関に付与しています。公共の集会に制限をかけています。意思決定プロセス、データ使用の透明性を制限しています。正確なパンデミックへの情報アクセスも制限しています。危険な前例となってしまうことを懸念し、私は今、赤い旗を振っています」

「4つ目の課題は、現在ある官僚的な仕組みが革新的でタイムリーな展開を妨げることです。新しい危機があった場合、私たちは新しい何かを使って対応しなければならない。イノベーションをすぐに動かせる意思決定が必要です。現在の仕組みは、それを阻害しています。政府の政策では、さまざまなグループから情報を得にくい。結果、コミュニティの対応は支援されず、革新的なソリューションの普及、拡大ができません」

「5つ目の課題は、社会の二極化、人種差別です。これが一番パンデミックに悪い影響を及ぼします。ここ数か月で社会的な分断がより増加しました。例えば明確で信頼できるコミュニケーションがコミュニティ間で行われない。恐怖のはけ口として人種差別的な攻撃が脆弱なグループに対して増加しています」

これらを解決しない限り、世界は歴史をただ繰り返すだけになってしまう。このような課題をクリアするには何をすべきなのか。

「“G20パンデミック調整タスクフォース”をつくり、その責任において効果的な国際協力基準の明確化とモデリングをすることです。G20加盟国内で支援して、独立した国際的な公衆衛生と社会保護の専門家らによる調査を奨励する。この機関はコミュニケーションと調整の欠如から生じる問題、新型コロナに起因する政治的、社会的影響から生じる課題克服を支援します。
もう一つは社会全体の政策フレームワークの開発、普及、実施を支援することです。これらのフレームワークは実行に関する問題、幅広い視点と方法論を取り入れ、効果的な政策を立案します。変化を体系化にするには複雑な立法上、及び官僚的な障害、地方レベルから多国間レベルまで、政治的圧力をナビゲートすることを伴います。これをシステム化することです。
そして、私たちが対話を通してセクターや部門、さまざまな異なる地域と協調しながら、いかに危機に対峙していけるかが重要でしょう」

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