【「価値創造×SDGs」Week開催レポート】
ニコラス・エマニュエル 創価大学国際平和学研究科准教授

2020年12月11日(金)~17日(木)にわたって、「価値創造×SDGs」Week(後援:国連広報センター)を開催しました。14日のシンポジウム「人道的競争の時代へ―平和構築のために我々ができること」での、創価大学国際平和学研究科のニコラス・エマニュエル准教授による講演レポートです。

平和構築のインセンティブ――紛争再発の回避をどうすすめるか

「本日の私のテーマは平和構築です。内戦の再勃発、援助、インセンティブの話です。平和構築にはお金がかかります。現在、コロナ禍で世界各国が経済的に厳しくなってきています。残念ながらドナー国も平和構築のための投資を減少させています。しかし、逆にニーズの方は高まっているのです。このことを私たちは認識しなければなりません」

「最も大きな紛争は内戦です。国際社会の代理戦争などもありますが、やはり内戦が最も多くの死者をもたらします。例えばアフガニスタン、エチオピア、マリ、ナイジェリア、ソマリア、南スーダン、シリア、イエメンなどです。国連やICRCなども和平に向けて活動しています。ところが、和平プロセスが始まって皆が署名したとしても、ほとんどの場合、失敗に終わるのが現実です。冷戦以降、多くの内戦は交渉の末に終結しました。しかし、およそ5年のうちには再発してしまうのです」

当然だがドナー国、国際社会は援助金がどのように活用され、どのように効果を発揮するのかを注視している。和平条約を締結したにもかかわらず、再び戦闘が始まることも国際社会は懸念している。平和構築への道のりは厳しい。

「そもそも平和構築とは一体何なのか。平和構築とはプロセスの一環なのです。それは交渉のあと、戦争が止まったあとに行われます。このプロセスで、願わくは持続可能な平和、安定を築きたい。戦争が再び起きないようにしたい。しかも、それは経済的復興と開発の基礎を築くことでもあります。新しい制度をつくらなければなりません。
一方、社会に残る大きな傷を乗り越えることも重要です。紛争の根本原因に対応することです。当事者たちの不満は、非常に根深いものとして社会の中にあるからです」

「民族上の分断がある場合、それを和解するには国家的な対話が必要です。民主的な規範や実践に対応する理解がなければ、それを新たに形成しなければいけません。不平等の思いがあったなら、法律や人権によって対応しなくてはなりません。貧困で生計の手段がないのであれば、公共サービスを実施したり、雇用創出をしたり、あるいは平和の配当を提供しなくてはなりません。平和の配当とは、インセンティブに近いものです。より繁栄した未来が待っていることを示すことです」

「大規模な援助は、必ずリソースを増やすはずです。そこで、当事者たちに平和は利益をもたらすことを説得します。求めていたことが手に入るのだということを説得します。コミュニティをつくれば仲間たちを助けられることを説得します。
次に、戦後の復興です。インフラあるいは教育など、さまざまな観点から復興が重要になってきます。紛争関係の不満に対応することも大切です。何が原因だったのか、そこには深い社会的な問題があります。コミュニティを分断した理由があります。それに対応しなくてはなりません。このような援助において、当事者たちは平和のインセンティブを享受することができるのです」

平和のインセンティブには3つのゴールがあるという。第1は、社会的不満への対応に取り組み、紛争継続の機会費用を引き上げる。これが平和構築のコアだ。第2は、当事者とのコミュニケーションがとれ、交渉関係を築く。第3は、ドナー国を納得させる。援助がしっかりと活用されて、平和に対するインセンティブを紛争国が得られていることを納得させること、である。

「ドナー国や国際社会は、平和に対するインセンティブを当事者たちに理解してもらうことで交渉のテーブルにつかせ、恒久的な平和へと導く手伝いをする。紛争当事者たちには、将来、重要な役割を担うことになると説得します。新しい秩序の下でステークホルダーになる機会を得ることができると。あなたたちは紛争当事者から、新しく生まれ変わる政権やより繁栄した社会のステークホルダーになることができるのだと。
一方、ドナー国に対しては、援助がこのように平和を生み出していると納得させます。ドナー国と国際社会の役割は非常に重要なのです」

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