モスクワ大学 ヴィクトル・A・サドーヴニチィ総長

モスクワ大学と創価大学の交流は40年以上にも及びます。どんな歴史にもその始まりには創立者の存在があります。モスクワ大学はミハイル・ロモノーソフが創立者です。ロモノーソフについては、私が日本訪問した時に創価大学で詳しくお話しさせていただきました。創価大学の創立者は、著名な平和と諸民族友好の闘士で果敢な反核運動家、全世界の人々に対して高い精神性に立脚した人間交流を推進する思想家であり、モスクワ大学の名誉教授・名誉博士であられる池田大作先生です。池田先生は、我が国と日本との友好関係樹立に偉大な貢献をされました。冷戦最中の時代にご自身の果敢な決断でソ連を公式訪問し、国家の最高指導者と会われた – その勇気と信念に基づいたイニシアチブはいくら評価してもしきれません。そうした行動が全て我が国と日本との新たな絆を結び、両国の知識人交流をもたらしていったのです。

 25年前、池田先生はモスクワ大学で「人間-大いなるコスモス」と言うテーマで講演をされました。創価大学創立者がいかにスケールの大きな素晴らしい発想の持ち主であるかを講演のタイトルそのものが物語っています。特に驚いたのは、ロシアの歴史や文学、哲学と言ったロシア文化の豊かさを余すところなく深く理解されていたことです。講演で池田先生は、ロモノーソフやトルストイ、ベルジャエフ、ソルジェニーツィンなどを引いて、ご自身の思想との共通性について言及されました。モスクワ大学講演で池田先生が語られた思想は、あれから四半世紀経った今もその重要性は色あせていません。池田先生が「『地球的連帯の世紀』へ向け、宗教、民族、国家などの壁を越えた『平和への対話』と『文化・教育の交流』が、ますます要請されております」と言われるように、私も21世紀が「全人類の調和と友情」の世紀であってほしいと願っています。

 池田先生との対談が2冊の素晴らしい本『世紀のはざまに。教育対談』(訳注:ロシア語タイトルの直訳。最初の対談は、日本語版は2冊に分冊されたが、ロシア語版は1冊として出版。)と『21世紀の人間をめぐる思索』として結実したことは私にとって極めて大切なことです。かなりの部数で出版されたこれらの対談集は、友好と相互理解の証であり、学問と教育に人生を捧げた人間が共通してもつ重要な視点を明らかにしています。

 創価大学はその活動と展望において次の世代の教育を最も重視しています。その根底には、創造的な人格を育むことによって真の幸福を築くという創価学会の創立者の思想があります。

 創価学会を創立された牧口常三郎初代会長と同志の戸田城聖第二代会長は、そうした理念を掲げる教育機関の設立を構想されていました。そして両氏の希望を実現されたのが池田大作第三代会長でした。池田先生は、1970年代に日本で幼稚園から大学までの創価一貫教育のシステムを築かれました。今日、創価大学が掲げておられる「世界市民、創造的人間の育成」という理念には、創立当初からの変わらぬ精神が息づいています。

 1971年東京に設立された創価大学は、今日では数十カ国の数百もの大学と学術教育交流を展開されています。創価大学は、モスクワ大学との交流を皮切りに、旧ソ連邦の多くの大学とも交流協定を結びました。

 モスクワ大学に交換留学した創価大学の卒業生の多くは、留学経験を生かし、日本と旧ソ連邦との交流発展に貢献しています。

 2019年9月23日、第8回露日学長会議及び第2回露日大学協会総会がモスクワ大学の中央図書館国際会議場で開かれました。この会議は私共の発案でロシアと日本の地で交互に行われていますが、今回の会議でも前回までと同様に創価大学の代表団が新たなアイデアや提案、具体的なイニシアチブを発揮して積極的に参加してくださったことは私にとっても大変嬉しい事です。

 2019年の会議では、日露の大学が成し遂げた素晴らしい業績や成果が発表されましたが、それとともに、大きな挑戦課題が出てきていることにも言及されました。それは第4次産業革命と、激しく変化する世界情勢の中で、学術・教育も新たな発展段階へと移行していかなければならないという困難な課題です。

 2020年、私たちはパンデミックの中でいかに生活し、働いていくかという新たな課題を突きつけられました。本年始め、私は創価大学代表団の皆さんとお会いし、創価大学の入学式に出席をとのご招待を受けて、私の訪日の可能性について話し合いました。しかし、世界をパンデミックが襲い、大学生活も全てオンラインへと移行し、リモートの講義やセミナー、会議が対面での交流にとってかわりました。今、世界の大学は、いかに教育の質を維持するか、これまでの交流関係をいかに保っていくか、そして学生、教員の健康を守り、この難しい時代にいかに協力関係を今後発展させていくかという重要な課題に直面しています。私たちは今、より緊密な協力を進め、新たな活動形態を見出していくという課題をつきつけられているのです。

 しかし私は、大学の実りある協力関係、友好交流の強い絆は、いかなる力によっても壊されることはないと確信しております。そしてモスクワ大学と創価大学は、世界の未来を想い、基礎研究や先端技術、高い理想と全人類のためにという想いをベースとした若い世代の良き教育に心を砕く人々を糾合しつつ、今後も互いに手を取り合って大学の国際交流の先駆として共々に模範を示していきたいと思います。

 創価大学のさらなる発展と繁栄、学生及び教員の皆様のご健勝と益々のご活躍をお祈りします。そして池田先生の豊かな英知とご経験に深く頭を垂れるとともに、両大学の交流の発展、繁栄のために今後も全力を尽くしてまいる決意であることを申し上げます。

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