国境を越え、文化の違いを超え、教壇に立つ自分だからこそ、子どもたちに伝えられることがある。

ドイツで生まれ育ったゼべリングさんは自分のもう一つのルーツである日本の言葉をもっと自由に使いこなしたいという思いから、高校を卒業してから1年後、ドイツから日本に渡り、創価大学の別科日本語研修課程に留学をした。「最初は日本語を学ぶだけのつもりでしたが、学生はすごく人に優しく、後輩をとても大切にしていて、そんな創価大学の校風に感動して学部への入学を決意。どうせなら昔からの自分の夢を叶えようと、教育学部に進みました。しかし、日本の教育を受けていない私はスタートラインがまわりの学生と全然違いました。例えば『馬鈴薯の生産量の多い県は?』という問題にも、馬鈴薯ってそもそも何だ?ジャガイモなのか!と学ばなければいけないことが膨大にありました」

教員採用試験には2回落ちたが、挫けなかった。「労苦と使命の中にのみ人生の価値は生まれる」という創立者の言葉を胸に、今、目の前にある苦労はすべて意味があって未来につながっていくんだと、前進した。

そして今、ゼべリングさんが日本の小学校の教壇に立ち始めて、6年。全国的に外国語指導助手の数は増えているが、ゼべリングさんのように日本の教員採用試験に合格して正規教員として働く外国人教員は数少ない。国境を越え、苦難を乗り越えた自分だからこそ、子どもたちに伝えられることがあると胸を張る。

「違う国で生まれ育った私が、今、日本で教員として働いている。そのことを通じて、子どもたちに『どんな挑戦をしてもいいんだ』と、知ってほしい。子どもたちの可能性を最大限に広げるために、教員として全力を尽くしていきます」

※ SUN106号のインタビュー記事より転載

Profile
ゼべリング・リチャード・伸一さん
卒業年度/学部:(教育学部2015年卒業 41期)

1988年ドイツ・デュッセルドルフ生まれ。日本人の母親との会話で親しんでいた日本語を学ぼうと、2010年に留学。翌11年に教育学部に入学した。大学卒業後は教員採用試験を受けながら非正規職員として経験を積み、17年に正職員となり現職に就いた。

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