「世界を変えてやる」という思いを原動力に、5~15分という短時間でのPCR検査を実現。

新型コロナウイルス感染拡大防止策として、「PCR検査」の重要性が連日各メディアで取り上げられている。「PCR検査」とは検体内にあるウイルスの遺伝子を増幅して検出する方法で、ウイルスの有無の判定に必要な量まで増幅させるのに数時間がかかるため、日本国内でもPCR検査数が増えていかないことが問題となっている。

今、そうした問題を解決するとして医療現場で注目を集めるPCR検査機がある。迅速ウイルス検出機器「GeneSoC(ジーンソック)」だ。GeneSoCを使えば、何と5~15分という短時間でPCR検査が可能だという。現在、経済産業省主導で医療機関への導入も進められているこの画期的な装置の開発者が、創価大卒業生の永井秀典さんだ。

「これまでPCR検査に時間がかかっていたのは、研究用の検査機を医療現場で使っていたからです。GeneSoCは、医療現場に必要なスピードを重視して開発した機械です。そもそもGeneSoCがターゲットとしているのは、結核、エイズ、マラリアといった貧困国で多くの命を奪っている感染症でした。迅速にウイルスの感染が判明すれば救うことのできる命はたくさんあります。そこで、妊娠検査薬やインフルエンザの検査キットのように、手軽でスピーディにPCR検査ができる機械を目指しました。今後はさらにブラッシュアップさせ、電子体温計のように各家庭で持てて、多くの方の命を守るツールにしていきたいです」

画期的な装置で、医療の可能性拡大に挑む永井さんの原点は、創価大学にあったという。

「出会いですね。『世界変えてやろう』みたいな、とんでもないことを言っている人間が集まっている大学だったので、私も自分の幸せより、もっとまわりの幸せのために何かしたいという考え方に変わっていきました。また、指導教官の久保いづみ先生にたくさんのチャンスをいただきました。1年生の夏休みにアルバイトとして研究のお手伝いをしたときは、研究について何もわからない私にも高価な機材を触らせてくださった。ところが、それを壊してしまったのです。でも先生は、『実験はそんなもんだよ』と笑ってくれました。そうした経験に背中を押されたから、今、アグレッシブに次世代の医療機器開発ができているのだと思います」

※工学部は、現在は理工学部
工学研究科は、現在は理工学研究科

※ SUN106号のインタビュー記事より転載

Profile
永井 秀典さん
卒業年度/学部:工学研究科修士課程 1998年修了(工学部2期)※

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 研究グループ長

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