一歩踏み込み、人の心に寄り添うコミュニケーションで、
多くの人の幸福につながるビジネスを展開する。

欧州一の工業立国ドイツで、半導体・電子部品の世界的な供給不足という問題に立ち向かっている卒業生がいる。日本の半導体メーカーの現地法人で欧州企業と日本をつないでいる、松井一史さんだ。

欧州各国からニーズが届くが、現在はそのすべてに応えることはできない状況にある。そうしたなかで松井さんの行動原理となっているのが「他人の不幸のうえに自分の幸福を築くことはしない」という創価大学創立者の言葉だという。

「誰かを犠牲にして1社だけが利益を得るようなビジネスは、仮に一つの案件が成功したとしても長続きしません。半導体不足の今だからこそ、儲けを重視するのではなく、そのビジネスがどれだけ多くの人の幸福につながるかを見極めながら供給しています。例えばコロナ禍では、医療や感染防止にかかわる機器への部品をはじめ、絶対に供給を止めてはならないと、社員が一丸となって、最大限の生産と供給ルートの確保に奔走し、お客さまに製品を届けました。半導体業界のような長期のパートナーシップが望ましいとされる業界においては、やはりかかわる多くの人が最終的な利益を確保する考え方が重要。それが自然にできる基礎を大学で築くことができました」

国境を越えて人々の心に寄り添うために、松井さんは「その場に立つこと」を基本としている。

「大学時代の中国留学でも、現在駐在しているドイツでも、現地の人々の考えを知ることはとても大変です。しかし、挫けずに一歩踏み込んで、相手の家族と食卓を囲んだり、生まれ故郷に行ってみたりすると、相手のバックグラウンドが見えてくる。すると、『彼はこういう経験をしているからこういう言動になるんだ』と、相手の内在的論理が理解できます。オンラインで世界中の人と簡単につながれる時代になりましたが、『その場に立つこと』でしか見えないことがまだまだたくさんあるのです」

入学時、創立者がスピーチで、長江とライン川を、「世界史上、もっとも人類に価値をもたらしてきた(中略)東西二つの大河」として紹介したという。大学での留学時と最初の海外赴任は、中国の長江流域で多くの人に出会った。そして今、松井さんの目の前にはライン川が広がっている。

「眼下の景色に不思議な運命を感じます。今は欧州をもっと知りたいです。その後もできる限り多くの国や人のことを知りたい......。この願望は永遠に尽きることはありませんね」

※ SUN114号のインタビュー記事より転載

Profile
松井 一史さん
文学部 外国語学科 2010年3月卒
ROHM Semiconductor GmbH勤務

「世界に挑戦したい」という入学時の思いを叶えるために、在学中は中国への長期留学などで国際経験を積む。卒業後はグローバル企業であるローム株式会社に入社。2015年から4年間、上海に駐在。22年1月より「世界を多角的に見るためには、中国以外でもう一地域」というかねての希望が通り、欧州の販売中心拠点であるドイツ法人に赴任。

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