創価大学ニュース「SUN」122号 2024 Summer

03 サイエンスの実証的な研究を組み合わせ ることで、新しい発見やイノベーション が生まれます。僕の挑戦は、技術と創造 性の融合を追求しながら、常に新しいこ とに取り組むこと。それが、僕の研究者 として貫いている姿勢でもあります。 篠宮:なるほど。落合さんの創作活動 や研究は、いくつもの挑戦が融合したも のなのですね。 落合:例えば生成AI(人工知能)は、 従来のWeb検索と同じように、人が何 かを調べるときの基本ツールになろうと していて、今、学生の皆さんの学び方に も大きな影響を与えています。その活用 について賛否いろいろな意見がありま すが、僕は新しいテクノロジーが登場し たら、とにかく遊び尽くすことを大切に しています。それも、論文が書けるぐら いまで徹底的に触れてみるのです。そう することで、その技術の本質や可能性が 見えてきます。デジタルヒューマン※1の 生成も、大阪・関西万博に向けて取り 組むテーマの一つなのですが、このプロ ジェクトはランゲージモデル※2や外観の デザイン、声、知能など、すべてを最先 端の技術で実現する必要があります。 企画がスタートした2020年に、万博が 行われる2025年の最先端テクノロジー を予測して当てるのは非常に難しい挑戦 ですよね。少しでも予測を外すと、最先 端技術の集合にならないのですから。 何を言いたいのかというと、どんな技術 にも遊び感覚で取り組み、初期の段階 から触っておくということが重要になる ということです。例えばランゲージモデ ルは今、500億円という国家予算規模 の研究が行われていますが、僕の研究 室に所属する学生たちは100万円程度 の予算があれば、最先端の研究に取り 組める時代からランゲージモデルに触れ ていました。今、時代に先駆けた行動が アドバンテージとなっています。 篠宮:新しい技術に触れるワクワク感 は、研究を続ける原動力ですよね。私も 情報工学の研究を進めるなかで、哲学 や心理学など、人文社会科学系の知見 にも関心を広げています。分野の垣根 を越えた挑戦が、学びの可能性を広げ てくれるのではないでしょうか。 落合:おっしゃる通りです。学際的な 視野を持つと、一見関係のなさそうな テーマが実は深く結びついていることに 気づかされます。昨日、今年開催する展 覧会のタイトルの参考にしようと思い、 日本の古い「数え歌」を調べていました。 数え歌って、誰もが子どものころに『ど ちらにしようかな、天の神様の言う通り』 とか、そんなフレーズを使って遊びの順番 を決めていましたよね。この数え歌を、 論文レベルの知識も引用しながら調べ てみると地域ごとに異なるバリエーショ ンがあることがわかりました。さらに深 掘りをしてみると、数え歌には神様が登 場するものが多いのですが、その神様 の名前や役割も地域によって異なるので す。例えば、天の神様や裏の神様、とき にはまったく新しい神様が登場すること もあります。最先端技術に触れている身 としては、テクノロジーの世界にもこの ような神様がいるのかが気になり、その 考察までしました。展覧会のタイトルを 考えるなかで、数え歌を通じて日本の文 化や信仰に触れることができ、さらにデ ジタル時代の新しい視点も得ることが できました。こうした発見のプロセスも また、僕の挑戦の一部なのです。 篠宮:本学でも、「副専攻」など学生が積 極的に他分野の授業を履修できる体制を 整えています。例えば、理工学部の学生 が哲学や歴史学の講義を受講したり、文 系の学生がデータサイエンスを学んだりし ています。異なる分野の学びに触れて多角 的な視野を持つことで、多様な課題に柔 軟に対応できる力が養われるはずです。 ※1 デジタルヒューマン:コンピュータグラフィックスや人工知能技術を用いて、人間に似せてつくられた仮想の存在です。 ※2 ランゲージモデル(言語モデル):自然言語のテキストデータを基にして、言語のパターンや構造を学習し、テキストの生成や理解を行うためのアルゴリズムやシステムのこと。 生成AIの一部として、ランゲージモデルは自然な言語生成や理解を可能にし、さまざまな応用分野で新しい価値を創出しています。

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