第3章 私からはじまる「人権」

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構造的暴力困難へ追いやられる人々

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暴力には、行為者( こういしゃ )を特定できない構造的暴力と呼( よ )ばれるものが存在します。
政治的な抑圧( よくあつ )、経済的な搾取( さくしゅ )、文化的な疎( そ )外( がい )など、社会構造のなかに組み込( こ )まれているために、だれが直( ちょく )接( せつ )、手を下しているのかがわからないような、不( ふ )平( びょう )等( どう )な力( ちから )関係などがそれにあたります。

たとえば、私たちが飲むコーヒーが、どのような人たちによって、どれくらいの賃金で生産されているかを考えてみましょう。日本と比( ひ )較( かく )すると、極( きわ )めて安い労働賃金によって生産されています。さらに「子どもの労働」によって生産されている場合もあります。結果的にこうした生産者は、経済的に搾取されているのです。

直接的な暴力の形を取らずとも、その人が持つ本来の可能性を、その人自身の手の届( とど )かないような力( ちから )で抑圧し、奪( うば )い、狭( せば )め、減( へ )らす社会のしくみがあるとするならば、そこには構造的暴力が存在するといえるでしょう。

数字で見る構造的暴力

世界では8億9,500万人、9人に1人が飢餓( きが )に苦しんでいます。
世界人口の21%、約5人に1人が1日1.25ドル未満で生活しています。

世界では子どもの92%が開発途( と )上( じょう )国での暮( く )らしており、100人のうち7人が5歳( さい )を迎( むか )えずに亡くなり、
50人は出生届けが出されず、68人が初期の幼児教育を受けることが出来ません。
また、17名は小学校で学ぶことが出来ず、30名は発( はつ )育( いく )障( しょう )がい を持ち、25名は貧困で生活を送っています。

2014年末時点で3,690万人がHIVに感染( かんせん )しており、120万人が命を落としました。
一方で、73%の妊娠( にんしん )中HIV患者( かんじゃ )が母子感染を防( ふせ )ぐための治( ち )療( りょう )を受けたと報告されています。

参考資料 
国際連合食糧農業機関(FAO)HP、国連児童基金(UNICEF)「The State of the World's Children 2015」、国連開発計画(UNDP)「Human Development Report 2014」
世界保健機関(WHO)HP、世界保健機関(WHO)「Global update on the health sector response to HIV, /assets/static/special/holocaust/introduction-of-exhibits/structural-violence/2014 Executive Summary」

HUMAN STORIES

©Jiří Doležel
※本文と写真は関係ありません。

教育制度上の差別

チェコのロマ(かつてジプシーと呼( よ )ばれていた人々)の子どもたちが、学校で日常的に差別・分( ぶん )離( り )されている実態( じったい )が明( あき )らかになっています。

同国の教育制度にはロマに対する根( ね )深( ぶか )い偏見( へんけん )があり、ロマの子どもたちの多くは、自分たちだけの教室や建物、学校に分離されたり、軽度の精( せい )神( しん )障( しょう )がいを持つ子どもたちと同じ教育を受けています。

一方で、さまざまな人種の子どもが通う学校に行った子どもたちは、いじめや嫌( いや )がらせを受けています。チェコの人口に占( し )めるロマの人々の割合は3%に満たないにも関わらず、特( とく )殊( しゅ )支( し )援( えん )学級の子どもたちの3分の1は、ロマの子どもたちです。

アンドレくんは、5年生のときに特殊支援学級に入ることになり、いま15才です。「なぜここにいるのか、納( なっ )得( とく )できない……特殊支援学級に入れて、僕( ぼく )らを馬鹿( ばか )にしてしまうんだ……授業のペースは遅( おそ )いから、ここからいい高校に行けるわけがない。」

HIV/エイズを恥( はじ )ととらえる気持ちと差別によって、
効果的な対応が阻( そ )害( がい )されています。

©Thomas Jensen/UNDP

HIV/エイズ

太平洋諸島諸国に住むJさんがHIVの感染( かんせん )を知ったのは、妊( にん )婦( ぷ )健( けん )診( しん )で診( しん )療( りょう )所を訪( おとず )れたときのことでした。Jさんはフィージーの村に帰り、自分の母親にそのことを話しました。するとHIV/エイズを恥( はじ )とみなす母親は娘( むすめ )を拒絶( きょぜつ )し、Jさんはそれまで暮( く )らしていたコミュニティーからも、自分の家からも、出ていかなければならなくなりました。遠く離( はな )れた親戚( しんせき )の家に身を寄( よ )せたものの、恥( は )ずかしさと絶望( ぜつぼう )に打ちひしがれて、周( しゅう )囲( い )の人の目に怯( おび )えるようになり、医( い )療( りょう )従( じゅう )事( じ )者( しゃ )を寄せつけなくなった時期もありました。

太平洋諸島諸国ではHIV/エイズを恥ととらえる気持ちと差別によって、効果的な対応が阻( そ )害( がい )されています。また、いまだにHIV/エイズに関連した数多くの刑罰( けいばつ )を科す法律があり、それが社会的不名( めい )誉( よ )の観念( かんねん )を強( きょう )固( こ )なものにし、HIV/エイズ医療サービスの利用を妨( さまた )げる要( よう )因( いん )となっています。

参考資料
アムネスティ・インターナショナル日本HP、国連開発企画(UNDP)年次報告書2011/2012

人権のための闘( たたか )いに、
国( こっ )境( きょう )があってはなりません。
“共通の人類”に対する、
“生命”に対する
感( かん )受( じゅ )性( せい )が大切なのです。

リゴベルタ・メンチュウ (1959-)

グアテマラのマヤ系先住民族の1つ、キチェ族の人権活動家・実業家。幼( よう )少( しょう )期( き )から先住民に対する搾取( さくしゅ )の事実を痛切( つうせつ )に感じていた。軍と準軍組織により、両親、兄( きょう )弟( だい )、共同体のメンバーが暗殺( あんさつ )されている。1992年、ノーベル平和賞を受賞。

『聖教新聞』
1993年10月3日付
©UN Photo/Evan Schneider