暴力には、行為者 を特定できない構造的暴力と呼 ばれるものが存在します。
政治的な抑圧 、経済的な搾取 、文化的な疎 外 など、社会構造のなかに組み込 まれているために、だれが直 接 、手を下しているのかがわからないような、不 平 等 な力 関係などがそれにあたります。
たとえば、私たちが飲むコーヒーが、どのような人たちによって、どれくらいの賃金で生産されているかを考えてみましょう。日本と比 較 すると、極 めて安い労働賃金によって生産されています。さらに「子どもの労働」によって生産されている場合もあります。結果的にこうした生産者は、経済的に搾取されているのです。
直接的な暴力の形を取らずとも、その人が持つ本来の可能性を、その人自身の手の届 かないような力 で抑圧し、奪 い、狭 め、減 らす社会のしくみがあるとするならば、そこには構造的暴力が存在するといえるでしょう。
数字で見る構造的暴力
世界では8億9,500万人、9人に1人が飢餓 に苦しんでいます。
世界人口の21%、約5人に1人が1日1.25ドル未満で生活しています。
世界では子どもの92%が開発途 上 国での暮 らしており、100人のうち7人が5歳 を迎 えずに亡くなり、 50人は出生届けが出されず、68人が初期の幼児教育を受けることが出来ません。
また、17名は小学校で学ぶことが出来ず、30名は発 育 障 がい を持ち、25名は貧困で生活を送っています。
2014年末時点で3,690万人がHIVに感染 しており、120万人が命を落としました。
一方で、73%の妊娠 中HIV患者 が母子感染を防 ぐための治 療 を受けたと報告されています。
参考資料
国際連合食糧農業機関(FAO)HP、国連児童基金(UNICEF)「The State of the World's Children 2015」、国連開発計画(UNDP)「Human Development Report 2014」
世界保健機関(WHO)HP、世界保健機関(WHO)「Global update on the health sector response to HIV, /assets/static/special/holocaust/introduction-of-exhibits/structural-violence/2014 Executive Summary」
人権のための闘 いに、
国 境 があってはなりません。
“共通の人類”に対する、
“生命”に対する
感 受 性 が大切なのです。
グアテマラのマヤ系先住民族の1つ、キチェ族の人権活動家・実業家。幼 少 期 から先住民に対する搾取 の事実を痛切 に感じていた。軍と準軍組織により、両親、兄 弟 、共同体のメンバーが暗殺 されている。1992年、ノーベル平和賞を受賞。

1993年10月3日付
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