創価大学創立50周年記念
ロモノーソフ生誕310 周年記念特別WEB展示
ー ロシアのレオナルド・ダ・ヴィンチ ー

 

ロモノーソフの詩作

大いなるオーロラを前に夜想う神の偉大さ

 
昼はそのかんばせを隠し
闇黒の夜が野原を覆いつくした
山々に黒い闇がのぼり
光は傾き、われらのもとを去った
すると星々の満ちた深淵が現れた
星の数に限りはなく、深淵には底がない
 
波間に漂う砂粒のごとく
万年の氷塊に閉じ込められた小さな火花のごとく
旋風に舞う小さなちりのごとく
燃え盛る炎に包まれた羽毛のごとく
この深淵に沈み込んだ私は
途方に暮れ、様々な思念に身をやつすのだ
 
賢者は言う
そこには多くの異なる世界があるのだと
そこでは無数の太陽が燃えている
幾国民があり、世紀が巡る
神の普遍的な栄光の前に
そこでは自然の力は等しなみである
 
だが自然よ、汝のおきて何処いずこにあるのだ 
北方の地の空が焼けていく
太陽ならざるものが君臨しようとしているのか
氷海ならざるものが火を放っているのか
おお、冷たい炎がわれらを覆う!
おお、夜中の大地が昼となった!
 
おお、永遠なる法の書物をすばやい眼差しで貫き通す諸君
現象のわずかな兆候が
自然の法則を指し示しているという
諸君
すべての惑星がたどる道を知っているという諸君
教えてみたまえ、何が我らをかくも惑わせるのか
 
夜に明るい光線を揺らすのは何ものか
霊妙な炎を天空に打ちつけるのは何ものか
雷雨の黒雲を伴わない稲妻がどうして
大地から天頂へと突進するのか
凍った蒸気がどうして
真冬に火事を起こせようか
 
そこでは濃霧が水と争っている
それとも太陽の光が
濃密な空気で屈折されて輝くのか
それとも草木の生い茂る山々の頂きが燃えているのか
それともそよ風が海に吹きつけるのをやめて
なだらかな波が大空に向かってほとばしるのか
 
身の周りで起こる現象に対する
諸君の答えは疑問に満ちている
教えてみたまえ、世界はいかに広いのか
微塵のごとき星々のかなたに何があるのか
万物の広がりの果てを諸君は知らないのか
教えてみたまえ、神はいかに偉大なのか
 
1743年

 

学問は若者を育む…… (頌詩より抜粋)

 
学問は若者を育み
老いた者には喜びを与えてくれる
幸せな人生を彩り
いざとなれば身を守ってくれる
家庭に困難が降りかかれば慰みとなり
遠い異郷でも邪魔にはならぬ
学問は何処いずこにあっても役に立つ
諸国民の間でも広野にあっても
都市の喧噪にあっても一人ぼっちであっても
安穏の時でも労働の時でも甘美なのだ

 

羨望の輩に復讐すべく私は武装させられる……

羨望の輩に復讐すべく私は武装させられる
私にとっていかなる害もなかろうに
酷評家の悪態が私を傷つけることなどできないのに
どうしてそんな人間に対して怒れようか
だが私は怒るのだ!私は立ち上がり、斧の背を探す
すでに持ち上げて、さっと振り上げる!だがそこにいるのは?ハエか!
虫けらのためにいたずらに労力を使うことのなんと惜しいことか
哀れな者よ、飛び、歌うがよい、私には何の害もないのだから
 
1753年11月上旬

 

[訳:覚張シルビア]
 
出典
Михаил Ломоносов: Стихи[https://rustih.ru/mixail-lomonosov/](2021年12月2日閲覧)
 
Михайло Ломоносов: Жизнеописание. Избранные труды. Воспоминания современников. Суждения потомков. Стихи и проза о нем/ Под. ред. Г. Е. Павлова, А. С. Орлов. М.: Современник, 1989.